Image: friend

映画『her』の世界により近づいてるかも。

いつも一緒にいて、あなたの話を聞いてくれていて、しかも会話をしてくれる。そんな友達のようなペンダント型のAI「Friend」が発表されました。生みの親は過去にもびっくりするような、そして時に物議を醸すプロジェクトを立ち上げてきたテクノロジー界の天才児といわれるアヴィ・シフマン氏。

どんな製品？

シフマン氏は7月30日にFriendの発売を発表。どんな機能や能力があるのかを紹介する動画をXに投稿しています。Friendは直接音声で会話をするわけではありません。代わりにあなたの発言やすることに対して、ユーモアや思いやりのある返答をスマホにテキストで送信してくれます。

Friendは99ドル（約1万5000円）で現在予約注文中。The Vergeの報道によると、最初のバッチのペンダントは来年1月まで出荷されない可能性があるとのこと。

シフマン氏は最初「着用可能なお母さん」としてこのペンダントを構想していたようですが、お母さんがいつも一緒というのは、ちょっとフレンドリーさを欠くとして変更されたようです。「Friend」の方がブランディングとしては良い選択だったと言えますね。ちなみに以前の名前は「Tab」だったようです。

情報自体はまだ全然ない

公開された動画はかなりイメージの湧くものでしたが、製品のウェブサイトにはユーザーが知りたい情報がほとんど掲載されていない状況。サイトのブログは1つの投稿のみで、公開されたシフマン氏のペンダントに対するビジョンを説明しているだけです。

シフマン氏のブログ投稿には以下のように記されています。

Friendは私が感じてきた孤独の表現です。過去1年間、この作品の実現を助けてくれた素晴らしいアーティストやエンジニアの皆さんに感謝したいと思います。あなた方のおかげで、日常の物に見出すアートをより深く理解できるようになりました。Friendがあなたの生活にどのようにマッチするのか、楽しみです。興味を持ってくださってありがとうございます。

自由な思考を持つペンダント

FAQページには製品に関する情報が少しだけ載っていて、ペンダントがBluetoothを介してユーザーのスマートフォンとペアリングし、音声録音によってユーザーの日常活動に関する情報を収集することが明記されています。

サイトには「Bluetoothに接続されたFriendは常に周りの音を聴いていて、独自の思考を形成していきます」と記載されています。このデータ収集を通じて、Friendはユーザーの活動について「思考」を発展させ、自動テキストメッセージを通じてその思考を共有するという仕組み。

デバイスに記録されたデータはおそらくローカルで保存されるっぽいんですが、サイトには具体的な説明はありません。サイトのプライバシーポリシーは、データ収集に関することは「私たちが収集する個人情報は、ユーザーと私たちとのやり取りの文脈、サービス、ユーザーの選択、そしてユーザーが使用する製品や機能に依存します」と、とっても曖昧な感じで書かれています。さらに下の方には、ポリシーは「機密情報」を収集しないと書かれていますが、何が「機密」に該当するかは説明していません。

Friendは、AIハードウェア市場では最新の注目製品となります。AIハードウェア市場は、より広範なAI業界の一部門で、これまでのところかなり苦戦している状況。

例えば画面なしのコンピューター｢Humane AI Pin｣が発売されていて、スマートフォンに代わる「AIピン」として話す着用可能デバイスってことでしたが、酷評を受け経営陣はすでに会社の売却を検討しているとのこと。

「Rabbit R1」も当初かなり話題になりましたが、その後宣伝通りに機能しない未完成な実験と呼ばれるようになってしまいました。

前例の企業が大きな約束をしていながらも約束を果たせなかったため、Friendが期待値を低く抑えようとするのは、ある意味理解できますね。それでも実際のサービスがほとんど提供されていないため、Friendのこの先のビジネスプランを想像するのは難しく、本当に大丈夫？という気持ちになってしまいます。

このペンダントは、孤独な人にとっては実際の人間とのつながりの代替として機能するものなので、このデバイスを着用していると、すなわち他人から「孤独なんだ、話せる友達いないんだ」と自動的にレッテルを貼られてしまう可能性もあります。

プライバシーが保たれる自宅で楽しめるチャットボット友達やAI恋愛とは異なり、公共の場で「孤独です」というサインを首にかけて歩くことになりますからね。特に内向的な人たちがターゲットとなるこの商品は、そういったユーザーからするとあまり魅力を感じないかもしれません。

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