なでしこ敗戦のピッチで…輝いた20歳「賢く周り見える」 OG称賛、五輪初勝利へ「活躍不可欠」【見解】
【専門家の目|岩清水梓】スペイン戦で鮮烈FK弾、MF藤野あおばへ寄せた期待
なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間7月25日にパリ五輪の初戦でスペイン代表と対戦し1-2で敗れた。
20歳MF藤野あおばの直接フリーキックで先制点を奪ったものの逆転負け。2008年北京五輪と12年ロンドン五輪に出場し、11年の女子ワールドカップ(W杯)優勝メンバーでもある元代表DF岩清水梓は、第2戦以降のチームについても「あおばの活躍が必要不可欠」と、先制ゴールを決めた藤野への期待を話した。(取材・構成=轡田哲朗)
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鋭く曲がりながらもスピードのあるシュートがスペインゴールを襲った。前半13分、中央やや右サイドの位置でフリーキックを獲得すると藤野が右足でニアサイドを狙い、先制点を奪った。日テレ・東京ヴェルディベレーザのチームメイトでもある岩清水は「セットプレーの練習でもフリーキックを蹴って決めていた」と話す。
そのうえで「本大会でいきなり蹴るよりも、その前に良い感覚で決められたことがプラス材料だったのではないかと思う」と、壮行試合となった7月13日の国際親善試合ガーナ戦で自身が「人生で初めて(公式戦で)決めた」と話した直接フリーキックのゴールがあったことが大舞台での一撃を導く力になったと見立てを話した。
ほかにも藤野は前半3分、右サイドから斜めに入ったボールをFW田中美南が最終ライン背後にフリックしたボールに反応して左足シュートを放つ決定機を迎えるチャンスがあったが、相手GKにファインセーブされた。岩清水はこの場面を「決めて欲しかった」と話すものの「あおばにフォーカスするなら、立ち上がりは前からプレスを掛けて高い位置で引っかけてのチャンスも作っていた。ただ、その後はボールに触る機会が減ってしまった」と、チーム全体がスペインに押し込まれる中で良さが出なかった点を指摘した。
自身がチームの練習で対峙した経験からも「緩急をつけることができ、相手の足を止めて自分のペースに持ち込んで動かせる。シュートの振りが速く、上手さ、速さ、判断の良さがあり賢く周りも見える。相手にしていて非常にやりづらく、練習で点を取られることもたくさんあった」と能力の高さを話す。
それだけに、敗戦スタートとなった大会の第2戦以降へ向け「あおばの活躍は必要不可欠だと思う。プレッシングや奪い取る力もある。彼女がシュートに関われば日本のチャンスも多くなる。高い位置でプレーできることを期待したい」と、パリ五輪なでしこジャパンのキーパーソンになると予想した。
日本はこの後、現地時間28日にブラジル、同31日にナイジェリアと対戦する。五輪の女子サッカー競技は12チームが出場し、4チームずつに分かれた3組のそれぞれ2位以上と3位のうち上位2チームが準々決勝へと進出する。
[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)