競技場へのアクセスを知らせる案内板【写真:青山知雄】

写真拡大 (全2枚)

パリ五輪の開会式を間近に控えたパリの現状をレポート

 大岩ジャパンはパリ五輪のグループ初戦で南米予選1位通過のパラグアイに5-0という衝撃のスコアで勝利し、目標に掲げる金メダル獲得に向けて好スタートを切った。

 7月26日にパリ五輪の開会式を控えるフランス国内では大盛り上がり……かと思いきや、それほどフィーバー感がないという現状もお伝えしておきたい。

 開幕前だからなのか、それともパリジェンヌは五輪に興味がないのか。

 開会式に先駆けてスタートした男子サッカー。その初戦取材に向けて灼熱の日本を旅立ってから約14時間、北極圏周りでたどり着いたパリの街は、意外に落ち着いている印象ばかりだった。シャルル・ド・ゴール空港の到着ターミナルには五輪関連のロゴやバナー、広告などはあるものの、ブースやイベントは特になし。競技場へのアクセスを知らせる案内板に五輪を間近に控える雰囲気は感じたものの、ワールドカップのような熱量を感じることはなかった。まだ観戦に来たファンもほとんどおらず、開幕前の時点では全くと言っていいほど賑わっていないのが現状だ。

 ひとまず水を手に入れようと思って入った空港内のショップで、いきなり円安の洗礼を受けた。500mlのペットボトルに2.8ユーロ(1ユーロ165円換算で462円)という想定外の金額が明示され、さすがに購入を断念。街中のスーパーではミネラルウォーターが50セント〜1ユーロくらいで販売されているので、全力でそちらでの購入をお勧めしたい。

 空港から市内へ向かうために電車のホームへ。ここで少し嬉しかったのは、パリ市内の地下鉄やバスなどで使える交通系ICカードのデザインだ。アプリで購入して乗車することもできるのだが、2ユーロのデポジットを払ってゲットしたカードにパリ五輪のロゴが。乗車券の販売機で何度もチャージして使えるので、記念アイテムとしても入手するのがいいかもしれない。

パリの観光名所凱旋門の上部にはパラリンピックのロゴが

 ようやく降り立ったパリ市内。まずは定番ルートの凱旋門からシャンゼリゼ大通りを歩いてみることにした。凱旋門の上部にはパラリンピックのロゴが掲げられ、ようやく大会ムードを感じられる光景に出会うことができた。

 シャンゼリゼ大通りにはズラリと大会バナーが並んでいるが、極端に言えばそれだけ。有名ブランドショップが少しだけ五輪ロゴやディスプレイで彩られているものの、五輪を印象付けるような光景は皆無だった。

 なお、凱旋門と同様にエッフェル塔には五輪ロゴが掲げられているのだが、セーヌ川で行われる開会式に向けて川沿いエリアは超厳戒態勢。規制に次ぐ規制で、残念ながらロゴが綺麗に見えるフォトスポットに近づくことはできなかった。

 シャンゼリゼ大通りを抜けた先、グラン・パレとプティ・パレの手前にパリ五輪のオフィシャルメガストアがオープン。店内ではアパレルを中心に多数の五輪グッズが扱われている。

 ワールドカップでは出場国ごとのアイテムが人気を集める傾向にあるが、五輪は参加国が多すぎることもあってか、国別のアイテムは基本的に開催国のフランスのみ。

 競技別のTシャツやポストカード、ピンバッジ、さらには大会マスコットやエッフェル塔の置き物などがラインナップされていた。

パリ市内で大々的に五輪ムードを味わえる希少なエリア

 五輪ムードを求めて市内を歩き回ると、ようやく出会えたのがパリ市庁舎前の広場にある「LA TERRASSE DES JEUX」。

 ここには「PARIS 2024」という巨大なロゴ、音楽やイベントが開催されるステージや大型ビジョン、さらにはサッカーやバスケットボール、陸上や柔道などを体験できるコーナーが併設され、飲食ブースやスタンドも用意されている。パリ市内で大々的に五輪ムードを味わえる希少なエリアだ。

 パリ市内でサッカー競技の会場になっているのは、パリ・サンジェルマン(PSG)が本拠地とするパルク・デ・プランス。他競技に先駆けてサッカーが一足早く開幕するため、市内西部にあるスタジアムは準備万端の様子だった。

 駅からのアクセスも良好で、大観衆の扱いには慣れていることが窺えた。ちなみにスタジアムに隣接しているPSGオフィシャルメガストアは大会期間中も連日営業している。

 ただし、試合日はセキュリティーコントロールエリアに入ってしまうため、チケットを持っている人だけが利用できることになるそうだ。

日本の初戦開催地ボルドーも大きな盛り上がりを感じられず…

 開幕前で本大会ムードの薄いパリを離れ、男子サッカー日本代表の初戦が行われるボルドーへ。よりによって開催会場を本拠地とする名門ボルドーが経営問題での3部降格が決定してしまうという、何とも言えないタイミングでの試合開催となったが、こちらも市内中心部の建物内に街案内やアナログのサッカーゲームが置いてある小さなイベントスペースを見かけただけ。スタジアムではボルドーのユニフォームやフラッグを持ったサポーターを少しだけ見かけたが、パラグアイのユニフォームを着た人を数人のみ。パリ同様に大きな盛り上がりを感じることはできなかった。

 試合前には日本サポーターが新しいジャイアントユニフォームを準備。五輪モデルに合わせてカスタマイズできる仕様になっていたが、ゲートで警備員とすったもんだの末、残念ながら持ち込みがNGになってしまった。

 これまでも五輪のサッカー競技は基本的にメインの開催都市から離れた地方で開催されることが多く、なかなか本大会ムードを感じられないケースが目立った。

 今回のボルドーも同様の傾向にあったが、それでもパリの“通常営業”には少し驚きを隠せなかったのが正直なところだ。26日の開会式から本格的に大会がスタートするが、果たしてここからどんな盛り上がりを見せていくのだろうか。(青山知雄 / Tomoo Aoyama)