ひとりで子育てをするシングルマザーは、社会で最も弱い立場に置かれている人のグループのひとつですが、スウェーデンではそのような女性が過去20年で半減したといわれています。世界でもトップクラスに高い離婚率と育児の平等な分担という、一見すると両立しないようにも見える変化を遂げたスウェーデン社会について、ストックホルム大学の社会学研究者であるヘレン・エリクソン氏が論じました。

Parental union dissolution and the gender revolution | Social Forces | Oxford Academic

https://academic.oup.com/sf/advance-article/doi/10.1093/sf/soae079/7686408

How divorce is boosting gender equality in Sweden - new study

https://theconversation.com/how-divorce-is-boosting-gender-equality-in-sweden-new-study-233474



エリクソン氏によると、世界の多くの国々と同様、スウェーデンの家庭は妻が家事を取り仕切り、夫は特定の仕事だけを任される「管理者とヘルパー」という形態に陥りがちだとのこと。同様に、育児の負担も平等にはなりません。

同居中の夫婦間に不平等がある点では他国と変わらないスウェーデンですが、子どもを持つ夫婦が離婚すると親権が50:50に分割される共同親権が採用されています。そのため、別居している親を持つ子どものほぼ半分が、2つの家庭で同じ長さの時間を過ごしているそうです。



離婚後の子育てをめぐる環境が男女の育児分担にどんな変化をもたらしたのか調べるため、エリクソン氏と同僚のマーティン・コルク氏は、高所得国における男女間で最も根強い不平等のひとつである育児休暇の取得率を分析しました。

離婚した両親の休暇取得率には、子どもの看護のために親が取得した「病児休暇」の記録が用いられました。スウェーデンでは、朝に子どもの体調が悪いと気づいたら、簡単な連絡で丸1日休んで看病できる有給休暇制度が国の法律で定められており、雇用主には従業員に病児休暇を与えることが義務付けられているとのこと。

そのため、スウェーデン社会保険庁が集計している病児休暇のデータを使えば、男親と女親がどれだけ有給休暇を要する育児労働をしているかの指標にすることができます。

休暇取得率のデータと世帯データを用いて、両親が子どものために取得する休暇の日数を離婚前と離婚後で比較した結果、スウェーデンでは離婚によって父親の育児休暇日数が増加したことが確かめられました。

このことから、エリクソン氏らは「伝統的に母親が全ての家事の責任を負ってきたスウェーデンでは、過去数十年にわたり離婚ジェンダー改革を停滞させてきたが、今日ではむしろ加速させている」と結論づけました。



エリクソン氏は、自分たちの研究が「離婚はいいものだ」と主張しているわけではないと述べています。それよりエリクソン氏らが強調したいのは、離婚が「家庭は非常にジェンダー化された環境である」ということを浮き彫りにした点だとのこと。

「この研究の教訓は、男性にも独力で子どもの面倒を見ることが可能であり、実際に彼らはそうしているということです。また、スウェーデンの男性にできるのですから、ほかの男性にできないはずはありません。スウェーデン人男性とほかの男性との間に生物学的な違いはないので、それができないということは、文化的な固定観念が原因なのでしょう」とエリクソン氏は述べました。