(写真:けむし/PIXTA)

「投資は、主婦の私には難しそう」「特別な勉強をしないと失敗しそう」と思って、投資を始める前に諦めてしまっている人もいるかもしれません。実は、普段の生活の中に「投資力」を鍛えられる場面はたくさんあります。

日常生活の中に投資力を身につけるヒントがあることを紹介した、角田和将さんの著書『お金が増やせるのはどっち?投資家思考の鍛え方』より一部抜粋・再構成してお届けします。

投資力が鍛えられるのはどっち?

A 新聞の株価を見る

B スーパーのチラシを見る

投資を始めるうえで、「新聞に載っている株価の一覧を見なければならない」と思い込んでいる人もいるかもしれませんが、そうではありません。確かに株価の一覧を見ることは勉強になりますが、理解するのは難しく、習慣にするのはなかなか厳しいものです。人は、よくわからないことには興味が湧きません。スーパーのチラシであれば身近で、構えることなく見ることができます。

決断すべきときにちゃんと決断できれば、大きな損失を抱えずに済みます。どんな場面で、どんなアクションを取ればいいのか、判断できる能力をしっかり身につけましょう。

そこでおすすめなのが、新聞の折り込みチラシです。特にスーパーのチラシにある食品に関するものをチェックすると、投資力が鍛えられます。新聞を取っていない人は、各スーパーの公式サイトに掲載のWEBチラシ、または「シュフー」「トクバイ」「クラシルチラシ」などのサイトでチェックできます。

スーパーの折り込みチラシにある食品こそ、注目すべき商品です。特に生鮮食品は、天候や収穫量によって値段が左右されやすく、市場の動きとの関係性もわかりやすく出るからです。

たとえばレタスを思い浮かべてください。冬期は値段も高く、一玉250〜300円ということもザラ。しばらくして安定して採れるようになると、一玉100〜150円くらいまで下がり、手に取りやすい価格になってきます(2024年時点)。

そのほかの野菜も同様で、年中収穫できる野菜は別ですが、季節野菜は価格の変動があります。天候に恵まれて豊作となったときは価格が下がりやすくなり、反対に、台風などの災害で被害を受けたときは価格が上がりやすくなります。

野菜や肉の値段から投資のシミュレーションができる

スーパーのチラシで食品(特に生鮮品)を見ていると、「今日はサンマが安い」「あれ、牛肉が高くなっている」など、意識的に価格をチェックするようになります。それが、結果的に投資力を鍛えることにつながるのです。

野菜の値段が上がる要因は天候以外も考えられます。たとえば戦争が始まってしまい、燃料となる原油価格が上がると、野菜の値段も上がることがあります。原油価格が上がると、野菜を収穫する機械の燃料代や輸送費が上がるからです。原油は先物の投資商品としても扱われており、実は間接的に投資商品の値動きを知ることと関係しているのです。

もっと言えば、野菜を原料に加工食品を作っている企業は材料費が上がるので、利益が減って業績悪化=株価が下落する、というところまで想像することができます。チラシに載っている商品から、投資のシミュレーションができるのです。

もちろん最初からここまで考える必要はありませんが、食品に絞って価格の動きを知っていくと、そこからいろいろな分野に派生させることができますし、食費の見直しにも役立ちます。まずは価格の動きに意識を向けて、チラシをチェックすることから始めてみてください。

ニュースを見てから動いても遅い

商品の価格変動が大きいと、ニュースでも取り上げられます。しかし、報道された時点で、その情報は古いと考えたほうがいいでしょう。多くの人がその情報を見て行動するからです。

たとえば2022年後半〜2023年にかけて、「小麦価格が高騰し……」といったニュースがあちこちで流れていました。しかし、小麦価格に連動している投資信託(1695:WT小麦)の価格推移を見ると、高騰しているのは2022年前半。2022年後半〜2023年にかけては、むしろ下落傾向となっているのです。つまり、2022年前半に価格上昇した事実が報道されるのは、必ずそれ以降になるのです。


実際は為替なども複雑に絡むので、日常生活で見える価格とはズレる面もありますが、いずれにしても、ニュースは価格変動が起こった後のタイミングで発信されるということを知っておいてください。投資家はニュースが出たときには既に投資済みで、ニュースを見て「高値でも買いたい」と思った人たちに売ってあげることで利益を出しているのです。

人と同じことをしても、良い結果は得られません。良い結果を得るためには、日々の価格チェックがすべての始まりです。「今日は価格が下がっているからこんなアクションを取ろう」と、自分ならではの行動基準を身につけることが重要です。

(角田 和将)