全長4mで6速MT搭載! マツダ「3ドアスポーツカー」あった! 「斬新ドア」×ガラス張り天井採用! めちゃ楽しそうな「KABURA」とは
「RX-8」よりも「お手軽」に… 期待された斬新モデルとは
免許を取り立ての若者が求める、手軽でファッショナブルなスポーツクーペはあまりラインナップされていません。
そうしたなか、マツダはかつて、運転を楽しみたい若者エントリーユーザーに向け、手軽なスポーツコンセプトモデルを発表していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
2ドアロータリースポーツカー「RX-7」や4ドアスポーツ「RX-8」、2ドアオープンカー「ロードスター」など、マツダはこれまで世界的にも人気を博したスポーツモデルを多く販売してきました。
【画像】超カッコイイ! これがマツダの「小さな3ドアスポーツカー」です! 画像で見る(40枚)
こうしたマツダのスピリットを取り込みつつも、免許を取得して間もない20代のユーザーをターゲットに捉えた、新たな価値観のスポーツコンセプトカーが「KABURA(カブラ)」です。
KABURAは2006年1月に北米デトロイトで開催された「北米国際オートショー(NAIAS)」で世界初公開されました。
車名のKABURAとは、戦いの開始を告げる音を放つ矢という意味の鏑矢(かぶらや)に由来し、「戦いの最初の矢=鏑」は先進的で挑戦的なマツダスピリットを象徴しているといいます。
当時、現代の若者や社会のニーズに応えるマツダらしい「Zoom-Zoom」なコンパクトスポーツクーペの新しい提案だと説明しており、センスがよく創意に富み、はつらつとしたものを求めるジェネレーションYをメインターゲットとしています。
ボディサイズは全長4050mm×全幅1780mm×全高1280mm、ホイールベースは2550mmと、運転初心者でも扱いやすいコンパクトなサイズです。
デザインは米国マツダのデザインセンターが担当し、フランツ・フォン・ホルツハウゼン氏がディレクターを務めました。
エクステリアは「運転への情熱」を表現したといい、力強く張り出した前後のホイールアーチや連続し途切れないように描かれたキャラクターラインを持ちます。
フロントフェイスは当時のマツダ車共通の大きなグリルを備え、ロアダクトと一体デザインのL字型ヘッドライトが精悍な印象を与えます。
ボンネットは中央部分がシースルーとなっており、搭載エンジンを眺めることが可能です。
ボディサイドはクラシックなクーペスタイルですが、フロントウインドウからルーフにかけては1枚のガラスで構成され、良好な視界と開放感を確保しています。
リアは2枚構造のガラスハッチとなっており、ルーフ後端ガラスは上部に開くことで、ルーフスポイラー、室内空気の排気、後部頭上スペース拡大といった3つの役割を果たすとともに、内蔵のソーラーパネルでバッテリー充電も可能です。
そしてもう1枚のガラスハッチは通常はリアウィンドウとなりますが、あえて横開きにするというユニークな構造です。
インテリアはドライバーを中心としたもので、ライトグレーを基調にブラックのパネルやダブルステッチを施したメーターフードを備えるなど、ファッショナブルなクルマを求める若いユーザーでも満足のいく仕上がりです。
さらに、ナイキ社のスポーツシューズの生産過程で発生した再生皮革を用いるなど、サステイナブルと機能性も追求されています。
座席レイアウトも独特で、当時のマツダによると若いユーザーは3名でクルマに乗ることが多いとしており、このニーズを満たすべく通常のクーペにありがちな2+2の4人乗りではなく、3人乗車を基本に1人乗りシートを追加するという発想を取り入れています。
そのため、助手席はグローブボックスを取り除き、フロントに約15cmオフセット。こうして稼いだ助手席後ろスペースにリアシートを配し、千鳥配置のようなレイアウトとなっています。
リアシートの乗降性にも配慮し、助手席側にはRX-8の「フリースタイルドア」のような小型のドアを備えましたが、ボディに吸い込まれるかのようにドアがリアフェンダー側に格納される斬新な機構を採用。
エクステリアからは後部ドアの存在感をまったく感じず、デザイン性の向上にも寄与しています。
シャシはロードスター(NC)の構成を基本とするフロントエンジン・リアドライブ(FR)レイアウトを採用。パワートレインは堅実的なもので、直列4気筒の2リッターDOHC「MZR」エンジンを搭載。これに6速MTを組み合わせています。
サスペンション形式はフロントがダブルウイッシュボーン、リアがマルチリンクを採用。タイヤサイズはフロント245/35R19、リア245/35R20と異径であり、リア駆動の楽しさを最大化し、スポーティな走行も可能となっています。
そんなKABURAは公開時、ダイナミックでセンスのよいスタイリングや、十分現実的なパワーユニット、そして若者でも「手に入れられるクーペ」と説明されていたことから、20代にも親しみやすい手頃なニューモデルとして大いに期待されていました。
しかし、登場から20年近く経過した現在でも、残念ながら市販モデルの登場には至りませんでした。