夫が乳幼児期までの子育てにしっかり関わることで、次第に妻からの愛情は回復します。逆に、育児に関わらないと愛情は低迷し続けます(写真:kouta/PIXTA)

今や大手企業では男性の育休(産後パパ育休)も当たり前になってきました。

しかし、父親になる時期はどうしても仕事の責任やキャリアUPが気になるタイミングと重なりがち。

そんなパパたちが知っておきたい、令和のパパの子育てのホンネや仕事と両立するための知恵、子どもと二人っきりの時の遊びかたなどを新著『パパの子育て応援BOOK』では紹介しています。

本稿では同書から一部を抜粋しお届けします。

産後に大きく変わる妻の愛情

渥美由喜さんの調査(東レ経営研究所 2002年)によると、出産後、女性の愛情は子どもに向かい、夫に対する愛情は薄れてしまうそうです。しかし、夫が乳幼児期までの子育てにしっかり関わることで、次第に妻からの愛情は回復します。逆に、育児に関わらないと愛情は低迷し続けます。「将来、夫と離婚しようと考えることがあるか」という設問に対し「ある」と答えた人の割合を見ると、愛情低迷グループの潜在的熟年離婚リスク(72%)は、愛情回復グループ(0.4%)の実に180倍にもなります。パパの育児・家事は将来の離婚防止のリスクヘッジでもあるのです。


産後のパパの関わり方について以下のポイントを参考にしてみてください。

❶肉体的・感情的な変化:出産後、ママは体調の変化やホルモンバランスの影響を受けることがあります。これにより、感情が不安定になることがあります。優しさと理解を示し、感情の波を支えるサポートをすることが大切です。

❷育児・家事の負担:新生児のケアや家事の負担が増えることが多いです。この負担を共有し、協力することで、ママのストレスを軽減し、愛情を深めることができます。

❸時間と配慮:産後のママには時間が必要。さらにママのメンタルへの配慮を心がけましょう。赤ちゃんの世話に加えて、ママ自身のケアやリラックスの時間も大切です。これに理解を示し、サポートしましょう。

❹コミュニケーション:夫婦関係を強化するために、オープンで健全なコミュニケーションが不可欠です。ママの気持ちやニーズを尊重し、共感し、共有することが、愛情を深める一助となります。

夫婦円満の秘訣は「よく会話する」こと!

明治安田生命が11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで、夫婦をテーマにしたアンケート調査を行った結果(2023年)では、夫婦円満のために必要なことを聞くと、「よく会話する」がトップになっています。「夫婦仲が円満」と回答した人の会話時間は、平日でも2時間以上(145分)ある一方、「夫婦仲が円満でない」人は41分と、100分以上の大きな差がありました。

会話にも、雑談、議論、対話といろいろあります。これらの違いはどんなことでしょうか。雑談は「今日の天気は晴れみたいだよ」や、「テレビで〇〇のニュースをしてたけど見た?」といった思いつくまま話す他愛のない話です。ご飯を食べるときや家で顔を合わせたときに雑談することも大切ですね。

次に夫婦で何かを決めるための話し合いが、対話ではなく議論になっていないでしょうか。議論とは、「お互いに自分の意見を述べて戦わせること」という意味で、自分の意見を主張し合い相手を納得させようとすることを言います。対話とは、お互いの考えの違いをわかり合おうとするものです。

対話をする目的は、パートナーと意見や考えを話し合って共有したり、お互いを理解することで発見をすることです。そのためには自由な雰囲気の中で、感情的にならず、冷静に真剣に話し合うことが大切です。結論をまとめようとせずに、多様な視点から新しい考えや意見を出す。そのようなやり取りをすると、自らの経験を語り合いながら、夫婦が納得のいく形で合意形成ができるようになるでしょう。

パートナーの話に耳を傾け(傾聴)、相手の考えの背景に対しても興味関心をもって、質問することで理解が深まります。自分の主張を一方的に通そうとするのではなく、逆に、相手の主張に妥協する訳でもなく、お互いの考えを掛け合わせると、新たな発想やアイディアに行き着くこともあります。

パートナーの感情に共感する心掛けとは

夫婦関係を円滑にするためには、お互いの感情に寄り添うことが重要です。そのためには相手の感情を理解し、受け入れることです。例えば、パートナーが喜んでいるときには「良かったね」、悲しんでいるときには「辛いね」といった共感の言葉をかけることが大切です。

また、イライラしていたり、怒っているときには、「どうしたの?」と、その理由を質問することで、相手の感情を理解しようとする姿勢を示すことができます。また、相手が話をしているときに、「なるほど」、「そうなんだ」と言いながら頷いたり、目を見て話を聞くことで、相手の感情に共感していることを示すことができます。
 
相手の感情に共感することで、お互いが安心して本音を話し合うことができる環境を作ることができます。感情に共感するためには、相手の話をじっくりと聞くことや、相手の立場に立って考えることが大切です。また、相手の話を聞いた感想や自分の感情も素直に表現することで、相手も自分の感情を打ち明けやすくなることがあります。

パートナーの話を聞いて、相手の感情を理解して共感の気持ちを伝えることができたら、そのあとに「一緒に頑張ろう」と励ましの言葉をかけたり、「どうしたら解決できるか一緒に考えよう」と解決方法の提案や具体的なアドバイスをするといいですし、「一緒に」という姿勢が大切です。

「相手の感情を理解して共感」というときに同感や感情移入ができないときもあると思います。「ママに共感してほしいと言われてもなかなかうまくできません」というパパもいます。「相手の感情を理解して共感」は共感的理解と言い換えることができます。共感的理解には同感や感情移入は不要です。「自分は同じ考えではないけれど、あなたはそのように感じているのですね」と理解することです。同感も感情移入もできないけれど、「あなたがそのように感じていることは理解できます」と共感の気持ちを相手に伝えることができます。


例えば、「産後に赤ちゃんの夜泣きの対応で寝不足がつらい」という話を聞いたときに、自分がその経験をしていないと同感や感情移入は難しいですが、「共感的理解」をして、相手のつらいという感情を理解した上で、「それはつらいね」と共感する気持ちを伝えられます。

そのあとに「今日から自分も一緒に夜泣きの対応をするね」といった解決方法を提案するといいと思います。そこでパパも産後の赤ちゃんの夜泣きを経験することで、同感や感情移入をすることができ、さらに共感を深めることに繋がるでしょう。

授乳以外はパパでもできる

産後の赤ちゃんのお世話で、パパは「母乳を直接授乳すること以外」はママと同じことができます。「夜泣きの大変さ」、「沐浴を一人でする大変さ」や「授乳しているときの愛おしさ」、「赤ちゃんのかわいさ」、「赤ちゃんを抱っこしたときのぬくもり」、「赤ちゃんの日々の成長を感じる喜び」などをパパとママが一緒に経験することで、パートナーの話や感情に共感することができ、産後の夫婦円満につながっていきます。

(ファザーリング・ジャパン : NPO法人)