アメリカ政府は中国によるAIの軍事転用を安全保障上の懸念と位置づけており、NVIDIAやIntelなどの国内企業に対して中国への高性能チップの輸出を規制しているほか、中東に対してもAIチップの輸出規制を拡大しています。そんな中、アラブ首長国連邦の人工知能およびデジタル経済担当大臣を務めるオマール・アル・オラマ氏が、「中国がAIチップの制裁回避に中東を利用するのではないか」というアメリカの懸念は妥当だとインタビューで語りました。

UAE Minister Says US Concerns Over Chip Supplies to China Valid - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-06-11/uae-minister-says-us-concerns-over-chip-supplies-to-china-valid



UAE calls US fears of China using region as AI proxy valid • The Register

https://www.theregister.com/2024/06/12/uae_us_china_ai/

アメリカは以前から中国に対するAIチップの輸出規制を行っていますが、2024年5月にはNVIDIAやAMDなどの半導体メーカーに対し、中東向けに大量のAIアクセラレーターを出荷するライセンス発行を遅らせていることが報じられました。関係者によると、アメリカ当局は中東におけるAI開発の安全保障レビューを行っているとのこと。

経済紙のBloombergはこの動きについて、「アメリカの最先端技術から切り離された中国企業が、中東のデータセンターを通じて高性能チップにアクセスできるようになるのではないか」という懸念によるものだと指摘しています。



アラブ首長国連邦にあるAI大手のG42は、NVIDIAなどから大量のAIチップを購入すると共に、カリフォルニア州を拠点とするCerebras Systemsとスーパーコンピューターの構築で協力するなど、過去数年にわたり中東のAIリーダーとして存在感を放っています。

ところが、アメリカの諜報機関はG42と中国企業との関係を危険視しており、中国企業がG42を経由して最先端のAIチップにアクセスするのではないかと疑っているとのこと。

こうした状況に対し、Bloomebergのテレビインタビューに応じたオラマ氏は、「チップが中東を通って中国にたどり着くことへの懸念は、敵対国を持つ国にとって妥当な懸念だと思います」と述べ、アメリカ当局には中東の企業を警戒する十分な理由があると理解を示しました。



近年のG42は、中国との関係を弱めてアメリカに軸足を動かそうとしており、2024年2月にはペン・シャオCEOが「これまでに行った中国への投資はすべて売り払われています。そのため、中国に物理的に駐在している必要はありません」とインタビューで語っています。

2024年4月には、MicrosoftがG42に対して15億ドル(約2300億円)を投資すると発表しているほか、G42はOpenAIが中東で唯一パートナーシップを結んでいる企業でもあります。オラマ氏はMicrosoftとG42の契約について、アメリカとアラブ首長国連邦の数年間にわたる協力関係と実績によるものだと主張しました。