セイフウェイ(Safeway)やダラー・ゼネラル(Dollar General)など、セルフレジ戦略を見直す小売業者が増えている。

米サンフランシスコ・ベイエリアにあるテレビ局KTVUは6月初め、セイフウェイのいくつかの店舗でセルフレジが廃止されたと報じた。広報担当者が同局に語ったところによれば、万引きが増えているため、セルフレジコーナーを撤去することになったという。この動きは、ターゲット(Target)がセルフレジで購入できる商品数を制限した3月の動きに続くものだ。クローガー(Kroger)も、ダラスの店舗でセルフレジのみのレイアウトを試したあと、1月下旬に有人レジを復活させたと報じられている。

ダラー・ゼネラルがセルフレジから撤退する計画を初めて明らかにしたのは、3月のことだった。5月末には、最高経営責任者(CEO)のトッド・バソス氏が決算説明会で、1万8000店舗以上の「大半」でセルフレジをなくすつもりだと述べている。同社はすでに、1万2000店舗でセルフレジを廃止した。

決算説明会の書き起こしによれば、バソス氏は次のように述べている。「当社の店舗にとっては大きな変化となるが、(今年の残りの期間から来年に向けて)顧客エンゲージメントをさらに高めながら損失を減らす準備をうまく進めるには、これが適切な行動計画だと考えている。(中略)今後は、限られた店舗でセルフレジのオプションを残す予定だが、そのほとんどは取扱高が大きく、損失の少ない店舗だ」。

「万能の解決策はない」



セイフウェイやダラー・ゼネラルによるこうした決断は、セルフレジに対する万能の解決策がないことを示している。決済や在庫の専門家によると、ほとんどの店舗にとって最善の方法は、同じ店舗で複数のオプションを提供することだという。多くの買い物客は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行した時期に非接触の決済手段に慣れてしまったため、セルフレジの導入を期待しているのが現状だ。米食品産業協会(The Food Industry Association)の調査によると、2021年にはセルフレジによる決済が全体の30%を占め、2018年からほぼ倍増した。にもかかわらず、小売業者はセルフレジへのアプローチを明らかに見直している。

スキャン技術を手がけるスキャンディット(Scandit)の小売業界向けソリューション担当ディレクターであるジェシカ・グリゾリア氏は米モダンリテールに対し、小売業者は店舗環境を常に見直し、適切な体験を提供できるようにしなければならないと話す。また、店舗のレイアウトが万引きを阻止する上で重要な要素になり得るとしながらも、セルフレジを完全に廃止すれば、セルフレジを期待していた顧客の反感を買うリスクがあると指摘した。年配の買い物客や商品を大量購入する客、それに子供連れの客は、自分で商品をスキャンするよりレジ係にスキャンしてもらうことを望むかもしれない。しかし、若い買い物客や急いでいる客は待たされることに敏感だと、同氏は言う。

「自分で決済できるオプションがあることを、最近ではほとんどの買い物客が望んでいる」と、グリゾリア氏は語った。

決済用アプリを導入する店舗も



独立したセルフレジコーナーをテストする店舗がある一方、決済用のモバイルアプリを公開し始めた店舗もある。たとえばウォルマート(Walmart)は、「ウォルマートプラス(Walmart+)」会員向けにモバイル決済オプションを提供している。Appleは、店頭で周辺機器を購入する顧客が、「Apple Pay(アップルペイ)」経由で「iPhone」から支払いができるようにした。インスタカート(Instacart)は、スマートカートの提供を拡大し続けるだけでなく、最近ではセーブマート(Save Mart)と提携して、手動でのスキャンを完全に不要にした。

グリゾリア氏によれば、小売業者はアプリベースの手法を採用することで、パーソナライズされたクーポンやセット販売サービス、カーブサイドピックアップ(店舗受け取り)などの付加価値を提供できるという。

セルフレジから撤退する場合、小売業者はその店舗でポジティブな顧客体験を維持できるようにしなければならない。ダラー・ゼネラルのバソス氏によれば、同社は顧客を歓迎し、ポジティブなレジ体験を提供することを優先しているという。「当社は大半の店舗でセルフレジからの撤退を続けているため、顧客にサービスを提供したり売上の成長を支えたりする上で、こうした取り組みに注力することがますます重要になると考えている」と同氏は語った。

また、顧客からのフィードバックはいまのところポジティブなものだと、バソス氏は話す。「消費者の全体的な反応は、『ありがとう。いつでも直接やり取りできる人がレジにいるのは良いことだ』というものだ」。

事業運営の重要な要素に



とはいえ、いったん公開した技術を完全になくすことはほとんど不可能だ。これは、その問題に対処しなければならないことを意味する。ブルームバーグ(Bloomberg)は5月30日、技術的な問題がウォルマートの約1600店舗でセルフレジの価格設定に影響を及ぼし、一部の顧客が実際の購入額より多い金額や少ない金額を請求されていたと報じた。ウォルマートの広報担当者はブルームバーグに対し、現時点で過剰請求された顧客の80%以上に払い戻しを行ったと述べている。ただし、米モダンリテールからのコメント要請には応じていない。

ウォルマートのウェブサイトによると、同社は今後も有人レジとセルフレジの両方を提供するほか、ウォルマートプラスの会員にモバイルスキャンオプションを提供するという。また、年内に米国の650店舗を改装し、今後1年間にサムズクラブ(Sam's Club)の新店舗を30店オープンする。さらに、今後5年間で、ネイバーフッドマーケット(スーパーマーケットとディスカウントストアを合わせた業態の店舗)にスーパーセンターと呼ばれる大型店舗を150店舗オープンする予定だが、そのほとんどが新規の出店だ。

サプライチェーンオートメーション事業を手がけるバーコーディング(Barcoding)でIoTディレクターを務めるJWフランツ氏は米モダンリテールに対し、セルフレジ人気が同社の事業運営の重要な要素のひとつになっていると述べている。バーコーディングは、サプライチェーンを追跡して商品の動きに関するデータを収集する取り組みで企業を支援しているが、このデータはセルフレジのPOSシステムで利用できるからだ。

「2年前に、このような話を当社がすることはまったくなかった。だが今では、当社にとって最優先事項になっている」と、JWフランツ氏は語った。

[原文:Retailers are continuing to pull back on self-checkout]

Melissa Daniels(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:戸田美子)
Image via Safeway