2024年6月11日に開催されたAppleの年次開発者会議「WWDC24」の基調講演では、Mac向けOSである「macOS」の次期メジャーバージョンとなる「macOS Sequoia」が発表されています。AppleはmacOS Sequoiaにおいて、仮想マシンでmacOSを立ち上げている場合でも、iCloudやApple Account(旧Apple ID)へのサインインが可能になることを明かしました。

Using iCloud with macOS virtual machines | Apple Developer Documentation

https://developer.apple.com/documentation/virtualization/using_icloud_with_macos_virtual_machines



Apple quietly improves Mac virtualization in macOS 15 Sequoia | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2024/06/apple-quietly-improves-mac-virtualization-in-macos-15-sequoia/

これまで、仮想化ソフトウェアを通して動作するmacOSではiCloudやApple Accountにサインインすることはできませんでした。そのため、macOSでiCloud機能をテストしたい開発者や、何らかのアプリケーションがiCloudと同期しているユーザー、仮想macOS内からiCloudのデータにアクセスしたいユーザーにとって非常に不便とされていました。

しかし、Appleはこの制限がmacOS Sequoiaで撤廃されることを発表。ホストOS、ゲストOS共にmacOS Sequoia以降である限り、通常のMacでmacOSを立ち上げた場合と同様に、iCloudやその他のApple Account関連サービスにサインインして使用することができるそうです。

Appleは今回の変更に関して「macOS Sequoiaで仮想マシンを作成すると、ホストのSecure Enclaveのセキュリティ情報から派生した仮想マシン用のIDが作成されます。個々の物理デバイスがSecure Enclaveから個別のIDを持つのと同様に、仮想マシンも個別のIDを持つことになります」と述べています。



海外メディアのArs Technicaは「作成した仮想マシンを別のホストに移動すると、新たに個別のIDが作成され、以前のホストでサインインしていたiCloudアカウントはおそらく強制的にログアウトされるでしょう。これは、あるMacをバックアップして、それを別のMacで復元した場合と同じことです」と推測しました。

この件についてAppleは「同じホスト上で同じ仮想マシンを複数起動しようとする試みを検出することができます」「仮想マシンごとにそれぞれ個別のIDを持つという整合性が維持されるため、同じホストでも複数仮想マシンを起動した場合、その度にiCloudやApple Accountにサインインする必要があります」と認めています。



しかし、仮想マシンでmacOS Sequoiaを実行しながら、古いバージョンのmacOSを実行したい開発者や、アプリで複数のバージョンのmacOSを立ち上げつつ開発を行うユーザーは今回の変更による恩恵を受けることができません。また、古いバージョンのmacOSからmacOS Sequoiaにアップグレードされた仮想マシンには今回の変更が適用されず、macOS Sequoiaのインストールイメージから作成された仮想マシンでのみiCloudやApple Accountへのサインインが可能であることが指摘されています。