中国国家航天局(CNSA)は2024年6月4日、CNSAの月探査機「嫦娥6号(Chang’e 6)」が世界初となる月の裏側でのサンプル採取を完了し、離陸した上昇機が月周回軌道へ戻ることに成功したと発表しました。CNSAは嫦娥6号のセルフィーを含む複数の画像もあわせて公開しています。【最終更新:2024年6月4日13時台】


嫦娥6号はCNSAによる月探査ミッションの無人探査機です。地球からは直接見ることができない月の裏側に着陸して周辺の観測を行うと同時に、スコップとドリルを使用して約2kgのサンプルを採取し地球へ持ち帰るサンプルリターンを目的としています。成功すれば月の裏側からのサンプルリターンは世界初となります。


【▲ 打ち上げ準備中の月探査機「嫦娥6号」。着陸機の側面に取り付けられた小型探査車らしき装置が写っている(Credit: CASC/CAST)】

2024年5月3日(日本時間・以下同様)に海南省の文昌衛星発射センターから「長征5号」ロケットで打ち上げられた嫦娥6号は、5日後の5月8日に月周回軌道に到達。嫦娥6号を構成する周回機・着陸機・上昇機・帰還機のうち、上昇機を載せた着陸機は5月30日に周回機から分離し、6月2日7時23分に南極エイトケン盆地にあるアポロ・クレーター(Apollo、アポロ盆地とも。直径約524km)南部の目標エリアへ着陸することに成功したと発表されています。


CNSAによると、嫦娥6号は2日間かけてサンプル採取を完了。2024年6月4日8時38分に着陸機から上昇機が離陸し、垂直上昇・姿勢調整・軌道投入という3段階のステップを経て月周回軌道へ戻ることに成功しました。サンプルは上昇機に搭載されている保管容器に収納されており、上昇機が周回機とドッキングした後に帰還機へ移し替えられることになります。


着陸機に搭載されているカメラや観測装置も正常に作動し、計画通りの科学観測が行われたとされています。国際ペイロードとして搭載されているスウェーデンと欧州宇宙機関(ESA)の月面負イオン検出器「NILS」およびフランスのラドン検出器「DORN」も正常に稼働していて、着陸機の上部に搭載されたイタリアのレーザーリトロリフレクター(再帰反射器)「INRRI」も月の裏側での距離測定を可能にしたとされています。


【▲ 中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」のセルフィー(Credit: CNSA)】

CNSAは上昇機の月周回軌道投入成功を発表すると同時に嫦娥6号が撮影した画像を幾つか公開しています。こちらは2024年6月3日に嫦娥6号の「移動カメラ」を使って撮影したとされるセルフィーです。移動カメラの詳細は発表されていませんが、嫦娥6号の右側から手前に向かって続く走行痕のようなものが写っていることと、打ち上げ準備中の探査機を撮影した画像(※記事冒頭に掲載)には側面に取り付けられた小型探査車(ローバー)のような装置が写っていることから、この装置が移動カメラである可能性もあります。


【▲ 中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」の着陸地点北方の様子(Credit: CNSA)】

次は嫦娥6号の着陸機に搭載されているパノラマカメラで撮影された画像です。CNSAによるとカメラは北に面していて、着陸地点の北に位置するチャーフィー・クレーター(Chaffee、直径51.75km)が遠くに写っているとされています。


また、着陸機の降下中と着陸後に撮影されたという以下の3枚の画像もあわせて公開されています。


【▲ 中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」の降下中に撮影された月面(Credit: CNSA)】
【▲ 中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」の降下中に撮影された月面(Credit: CNSA)】
【▲ 中国国家航天局(CNSA)が公開した月探査機「嫦娥6号」の着陸後に撮影された月面。探査機の下は比較的平坦で、明るい色の石が散在していることがわかる(Credit: CNSA)】

なお、CNSAの発表では地球への帰還日については言及されていませんが、宇宙飛行ミッションに関するアメリカ航空宇宙局(NASA)のオンラインカタログ(NSSDCA Master Catalog)では2024年6月25日頃にサンプルが地球へ持ち帰られる予定とされています。


嫦娥6号については最新情報が発表され次第お伝えします。


 


Source


CNSA - 嫦娥六号完成采样 上升器从月背起飞进入预定环月轨道CNSA - 嫦娥六号拍摄月背系列影像图CNSA - 嫦娥六号着陆器和上升器合影来了!NASA - Chang’e 6 (NSSDCA Master Catalog)

文・編集/sorae編集部