RSK

写真拡大

太陽が非常に活発な状態にあり、5月8日から10日にかけて「フレア・CME(太陽質量放出)」といった現象が起きています。

【写真を見る】太陽フレアの影響で11日未明から「通信障害」や「低緯度オーロラ」の可能性も

これらに伴い、太陽から放出されたプラズマが地球に向かった場合、低緯度オーロラ(北極・南極から離れていても観測されるオーロラ)が発生する可能性がある他、大規模な通信障害など、社会的影響が発生する恐れがあります。明日(11日)未明くらいから影響が発生するかもしれません。

「太陽フレア」とは??

山陽学園大学地域マネジメント学部の米田瑞生さんに聞きました。

(山陽学園大学地域マネジメント学部 米田瑞生さん)
「非常に複雑な現象ですので、議論が定まっている範囲でお話しします。

フレアがなくても、太陽からは太陽風と呼ばれるプラズマが、宇宙空間に流出していて、地球もそれを浴びています。その太陽風を取り込むことで、安定的にオーロラが発生したりしています。

太陽フレアや太陽質量放出という現象は、太陽表面の爆発現象です。その爆発で発生した大量のプラズマが地球を直撃すると、普段の太陽風に増して強い電流が、地球の磁気圏・電離圏に発生します」

太陽フレア→「オーロラ」出現

(山陽学園大学地域マネジメント学部 米田瑞生さん)
「これが『オーロラ・ブレークアップ』と呼ばれる鮮やかで極端に明るいオーロラを発生させたり、普段はオーロラが見られないような低緯度領域でオーロラが見えたりすることもあります。(歴史的には、日本の本州やハワイなどでもオーロラが見られたことがあったようです)

この電流が、強力な磁場を地上にも発生させ、送電網などの電気回路に大きな負荷を発生させたりして、不具合を発生させることがあります。(1989年のケベック州の大停電が有名)

また、太陽の表面の爆発に伴い、大量の放射線が地球に振り注ぐと大きな影響があります。例えば、人工衛星がダメージを受けることもあります。

また、地球の大気上空には、電離層と呼ばれる普段から一部の電波を反射しやすい領域(上空100km~1,000km)がありますが、太陽爆発によるX線や紫外線により、電離層に異常な電離が発生し、普段は反射する電波を吸収してしまったりして、通信に影響します」

GPSの精度が下がる

(山陽学園大学地域マネジメント学部 米田瑞生さん)
「GPSの精度が下がるなどの影響もあります。

人類が電気を使い始め、電気への依存を深めるほど、太陽活動の生活に対する影響は大きくなります。磁場で方向感覚を得ている動物も影響を受け、伝書鳩が迷ったりすることもあるようです。

実際のところ、太陽が爆発をしてプラズマを発生させるメカニズムも、そのプラズマと地球磁気圏・電離圏が相互作用して、磁気嵐と呼ばれる現象が起きる詳細についても、未だに学会で議論の対象になっています」

山陽学園大学地域マネジメント学部の米田瑞生さんは「多分ないですが…」と前置きしたうえで「岡山でも低緯度オーロラ発生に備え、明朝にかけて北の夜空を撮影します」と話しています。

米田瑞生さんプロフィール

2002年4月 - 2006年3月 東北大学理学部宇宙地球物理学科 
2013年6月 - 2017年6月 ハワイ大学天文学研究所客員研究員
2015年4月 - 2017年9月 東北大学大学院理学研究科客員研究者 (博士(理学)) 
2023年4月 - 現在 山陽学園大学地域マネジメント学科 

主に太陽系内外の惑星・衛星の大気・磁気圏について、研究。特に木星の衛星イオの火山活動がどのように変動しているか、その詳細を調査。イオの火山の研究には、東北大学にいたころに、マウイ島にあるハワイ大学の施設内に設置した望遠鏡を使っている。若い頃には高山病と闘いながら、チリ・アタカマ砂漠にある、東京大学アタカマ天文台での観測研究に従事。また、現職の山陽学園大学では情報関連の教育に従事する一方、特別な場所・施設でなくても、観測できる現象を調査すべく、「晴れの国」のメリットを活かして、低コストで流星を観測する方法を模索中。