昨年の初対決では大谷(左)がヘンリーのスライダーを完璧に捉えた

 ロサンゼルス・ドジャースのアウェー3連戦3カード目は、4月29日(日本時間30日)から始まる同じナ・リーグ西地区のアリゾナ・ダイヤモンドバックスだ。ダイヤモンドバックスは、オフには大型補強で戦力充実も、ここまで主力にケガ人が続出しており本来の実力を見せていない。シーズンを通してチームが目指すべき姿、そして今回の対戦で先発が予定されている3投手のvs.大谷翔平との実績を振り返る。

【大型補強で戦力充実もケガ人続出......】

 ロサンゼルス・ドジャースの大型補強で目立たないが、ダイヤモンドバックスもオフに1億3650万ドル(約211億7500万円、1ドル=155円換算)の補強を敢行、本気で勝ちにいっている。

 昨季は84勝78敗の成績で、第6シードで辛うじてポストシーズンに進出。公式戦で16ゲーム差をつけられていたドジャースに対して地区シリーズでスイープ(3連勝)の大番狂わせを演じてみせると、その勢いに乗ってワールドシリーズまで勝ち上がった。

 スモールマーケット球団(小規模都市が本拠地のチーム)ゆえに、財布のひもが固かったケン・ケンドリックスオーナーが2024年は勝負すべしと判断。ポストシーズンで17試合を戦った増収分(約3000万ドル)があるし、前年の快進撃でシーズンチケットの売上も30%増加した。"地元ファンのこの盛り上がりなら大丈夫"と、チケットの値上げにも踏み切った。

 値上げしたからにはファンが見たいと思う魅力的なチームにしないといけない。FA市場で先発左腕エデュアルド・ロドリゲス(31歳)、左腕ジョーダン・モンゴメリー(31歳)、野手でもルルデス・グリエル(30歳)、ジョク・ピーダーソン(32歳)、ランデル・グリチェク(32歳)と契約。さらにトレードでユジニオ・スアレス(32歳)を加え、補強費用は前述の1億3650万ドルにのぼった。今季のサラリー総額は、これまでの球団記録を3600万ドル(55億8000万円)以上も上回っている。

 しかしながら、ここまでは思い描いたようにはいっていない。ケガ人の続出だ。

 キャンプ終盤、ロドリゲスが腱板筋の損傷、クローザーのポール・シーウォルド(33歳)も腹斜筋のケガで負傷者リスト入り。開幕後も遊撃手のヘラルド・ペルドモ(24歳)が右膝の半月板損傷、中堅手のアレク・トーマス(23歳)が左太もも裏の負傷で離脱した。

 昨季12勝を挙げた右腕メリル・ケリー(35歳)は開幕から2勝、防御率2.19と好調だったが、右肩の痛みを訴え離脱。さらに左腕ライン・ネルソン(27歳)も打球を右ヒジに受け負傷者リスト入りした。

 それだけではない。昨季の新人王で、チームの看板選手になっていた外野手のコービン・キャロル(23歳)が絶不調。4月24日のセントルイス・カージナルス戦で打順を定位置の2番から7番に下げられた。今季は打率.202、出塁率.313、長打率.253。左打者であるにもかかわらず、右投手が打てず、対右投手は打率.145だ。2023年のキャロルは25本塁打、54盗塁の大暴れで、チームのワールドシリーズ進出を支えたが、いわゆる2年目のジンクスなのかもしれない。

 ブルペンもシーウォルド不在ですでに今季ここまで6つのセーブ機会を失敗しており、リリーフ投手の防御率は4.34で30球団中20位。おかげで12勝15敗の借金生活でナ・リーグ西地区でも4位である。

 とはいえ、筆者はダイヤモンドバックスが本命ドジャースの対抗馬として、サンディエゴ・パドレス、サンフランシスコ・ジャイアンツよりもその力を備えていると思っている。ケガ人が戻れば強いはずだ。地区優勝は難しいだろうが、ポストシーズンに勝ち進めば、ドジャースにとって不気味な存在になる。昨季、テキサス・レンジャーズ世界一の立役者だったモンゴメリーを筆頭に大舞台に強い選手がそろっている。

【ダイヤモンドバックス投手陣と大谷翔平の対戦成績は?】


メジャーでの生き残りをかけた今季を迎えているヘンリー photo by AP/AFLO

 4月29日(日本時間30日)から、ドジャースは敵地アリゾナに乗り込んでの3連戦。第1戦のダイヤモンドバックスの先発はおそらく左腕トミー・ヘンリー(26歳)となる。昨年の大谷翔平との初対戦では、四球、一ゴロのあと、84マイル(134km)の真ん中スライダーを完ぺきにとらえられた。大谷にとって自己最長飛距離の150.2mだった。ヘンリーは「すさまじい音だった。でも打球の行方は見なかった。音だけは覚えている」と悔しそうに振り返っている。

 2019年のドラフト2巡の生え抜きで、2022年にメジャーデビュー。3年間で30試合に先発、9勝9敗、防御率.4.72。これからも先発を続けられるかどうかは不明で、彼にとって勝負のシーズンだ。

 第2戦の先発はモンゴメリー。大谷との初対決は2022年5月31日、モンゴメリーは当時ニューヨーク・ヤンキースのメンバーだった。大谷の第1打席、高めの直球をとらえた打球は、センターに高々と舞い上がる。MLBのほとんどの球場だと本塁打だが、ヤンキースタジアムはセンターが深い。しかも中堅手は201cmの長身アーロン・ジャッジ。フェンス際でジャンプ一番、手をいっぱいに伸ばして本塁打をもぎ取った。ジャッジは試合後「オオタニが月まで打ったのかと思った」とジョーク。幸運にもグラブの中に残ってくれた」と説明している。

 2打席目は2−2から低めへのシンカー。リプレーを見るとボール1個外れていたが、球審の判定はストライクで見逃し三振。3打席目は2−1から外角チェンジアップをライト右に二塁打とした。

 2度目の対決は2023年8月15日で、モンゴメリーはレンジャーズに在籍。第1打席は一塁へのゴロ。198cm・103kgのモンゴメリーがベースカバーで一塁に走るが、ちょっとスタートが遅れた分、193cm・95kgと同じく巨漢だが、スピードに勝る大谷が一瞬早くベースに到達し、内野安打を稼いだ。

 2打席目も一塁へのゴロ。今度はモンゴメリーが大谷より早くベースに着いた。ふたりの大男が2度も一塁に向けて全力疾走する姿は迫力満点。大谷の3打席目は外角低めのカーブに2球連続空振り、最後は低めへの真っすぐで見逃し三振だった。

 第3戦はエースのザック・ゲーレン(28歳)の見込み。大谷との初対決は昨年7月2日で大谷は完璧にしてやられた。第1打席は高めの直球で追い込まれ、最後はワンバウンドする内角のナックルカーブに手が出て空振り三振。2打席目は内角のカッターのあと、高めの直球で空振り、最後は外角いっぱいの直球で見逃し三振。3打席目はボール2と大谷がカウントで有利に立ったが、3球目真ん中の直球に左飛だった。

 ゲーレンは昨季、ポストシーズンを含め243.2イニングも投げた。そこで今季序盤は中5日での登板を増やし、球数も100球を超えたのは1度だけと力をセーブ。目標はあくまで世界一であり、9月、10月の戦いを見据えている。

 ダイヤモンドバックス投手陣は、大谷に対してどのように攻めるのか。第1戦は4月29日、日本時間30日の午前10時40分に試合開始予定だ。