金正恩の名物「お菓子セット」に異変…首をかしげる北朝鮮国民
北朝鮮で毎年4月15日は、故金日成主席の生誕記念日「太陽節」だ。「民族最大の名節」と呼ばれるが、今年は様子が違う。
今まで使われてきた太陽節の名称が国営メディアから概ね姿を消し、「4月の名節」などと呼ばれるようになったのだ。祖父と父を切り捨てて「金正恩の北朝鮮」を作り上げようとする動きではないかと見られているが、それとは関係なく大切なものがある。お菓子の配給だ。
太陽節や光明星節(故金正日総書記の生誕記念日)には、全国の子どもたちにお菓子セットが配布される。かつてならお祝いの雰囲気を盛り上げるために、太陽節の数日前に配布されていたが、今年からは当日に配布することになったのだ。これは非常に異例だという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、太陽節当日にお菓子セットが配布されたことは今までなかったという。今年は1月8日の金正恩総書記の誕生日、2月16日の光明星節、そして今回4月15日の3回配布されたが、1回目は昨年大晦日に配布された。その理由を情報筋はこう語った。
「新年が始まる正月から元帥様(金正恩氏)の生誕記念日である1月8日まで気持ちよく迎えるようにという中央の指示があったからだ」
光明星節記念お菓子セットも、2日前の14日に配布された。ところが、今回初めて当日に配布された。これに地域住民は非常に驚いている。
「(朝鮮労働)党が金氏一家のご配慮として送るお菓子セットの配布を祝日当日に実施したのは、共和国(北朝鮮)でお菓子セットの贈り物政治が始まって以降で初めてのことだ」(情報筋)
両江道(リャンガンド)の別の情報筋も、お菓子セットの配布が太陽節の当日に行われたと伝えていることから、この措置は全国的なもののようだ。
「お菓子セットの配布が遅れた理由は説明されていないが、中央の指示によるものだと思う」(情報筋)
お菓子セットなど、最高指導者の名で下賜される贈り物の配布は、神格化事業の一環として、朝鮮労働党中央委員会組織指導部の贈り物準備委員会が行っている。そこの指示に基づき、各道の朝鮮労働党委員会贈り物準備委員会は、贈り物の生産と供給を徹底して行うことになっている。
北朝鮮では、すべての行事に政治的な意味が付与されるので、お菓子セットの配布の日、味や質なども議論の対象となる。粗末に扱って最高指導者の権威を傷つければ政治的問題になる重大事だ。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)
贈り物は、最高指導者の人徳を示すものであり、国民個々人に「金正恩氏はありがたき存在」という意識を植え付けるためのものだ。よって、配布の遅延は許されず、全国的に生産から受け渡しに至るまで、当時に行うことになっている。
その仕組みや意味は北朝鮮国民も熟知しており、だからこそ事前に配布するものだと考えてきた。ところが、最近になって状況が急変した。
「今月から党は『太陽節』という言葉の使用をできなくした。そう思ったら今度はお菓子セットの贈り物も当日に配布した。これに住民は首を傾げている」(情報筋)