「胃がんの手遅れとなる自覚症状」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

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胃がんの手遅れとなる自覚症状とは?Medical DOC監修医が胃がんの手遅れとなる自覚症状・初期症状・原因・予防法・早期発見方法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

≫「胃がんの検査」はどんなことをするの?前日の食事についても解説!【医師監修】

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)

日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「胃がん」とは?

胃がんとは、胃の内側の粘膜から発生する悪性の腫瘍(しゅよう)のことです。胃がんは現在、臓器別の死因の3位で、罹患数は大腸がん、肺がんに次いで3番目に多いがんです。胃がんの進展には「直接浸潤」と「遠隔転移」の2種類があります。「直接浸潤」では粘膜に発生した胃がんは、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。胃がんが一番外側の漿膜まで達すると、隣接する大腸や膵臓、肝臓や横隔膜に直接浸潤をきたすことがあります。また、がん細胞がおなかの中にばらまかれることもあり、これが腹膜播種(ふくまくはしゅ)というものです。「遠隔転移」ではがん細胞が血液やリンパの流れに乗って離れた臓器に転移を起こすことを指します。遠隔転移には肝臓、肺、脳転移などがあります。

胃がんの手遅れとなる自覚症状

胃がんの進行度は、がんの深さ、胃の近くのリンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無によって、ステージ0~4に分類されます。胃がんの「手遅れ」とは手術でがんが根治できない、ステージ4の状態と言い換えられえます。ステージ4の胃がんはがんの深さが漿膜以上に進展し、他の臓器にも浸潤している状態、もしくは遠隔転移がある状態です。それでは胃がんの手遅れとなる自覚症状を説明します。

食べ物がつかえる

胃の出口付近にできた胃がんが進行すると、胃からの食物の排出ができずに食事がつかえてしまうことがあります。突然症状が出るのではなく、徐々に食物の通りが悪くなるのが特徴的です。この症状が出た場合すべてがステージ4の胃がんとは限りませんが、ある程度進行した胃がんの可能性が高いです。しかし、胃炎や逆流性食道炎などの良性疾患でも同じような症状が出る場合があるので、このような症状がある場合は消化器内科のある医療機関を受診しましょう。

お腹が張る

胃がんの腹膜播種が起こり、がん細胞がお腹の中にばらまかれるとお腹の中に水がたまります(腹水と呼びます)。腹水は治療しなければ、量が減ることはないため食事とは関係なく、常にお腹が張っているという症状がでることがあります。
腹水は肝臓の病気や女性では婦人科の病気でも腹水がでることがありますので、似たような症状がある時は近くの内科や婦人科を受診しましょう。

マヒ・呂律がまわらない

胃がんが脳に転移した場合に身体に力が入らない麻痺が起こったり、呂律が回らなかったりといった症状が出ることがあります。その他に、ものが二重に見えたり、めまいがしたりすることもあります。症状が出た時点では脳梗塞などの脳の病気と判別がつかないため、頭部の画像検査ができる大きな病院での診察が必要です。症状が現れたらすぐに救急車を呼びましょう。

鎖骨の周りリンパが腫れる

胃がんが左の鎖骨上のくぼみのリンパ節(左鎖骨上窩リンパ節)に転移することがあります。これはウィルヒョウ転移といい、胃がんの遠隔転移の一つです。ただし、左鎖骨上窩リンパ節が腫れているからといって、胃がんがあるとは限りません。風邪などでもリンパ節が腫れる場合や全身のリンパ節が腫れる血液の病気もあります。自分の手で鎖骨周りを触って、硬いものが触れる場合など、気になることがあれば近くの内科を受診しましょう。

重度の貧血

胃がんのために胃の表面から持続的な出血があると貧血が進みます。重度の貧血がある場合は進行がんである可能性が高くなります。日常生活でふらつきや息切れ、倦怠感などを自覚した場合や、健診などの血液検査で急に貧血が進んだ場合には、まず内科を受診しましょう。

胃がんの前兆となる初期症状

胃がんの初期症状はほとんど出ないことが多いです。早期胃がんではほとんどの方に症状がありません。胃がんの前兆の症状は、胃がんの原因になる胃炎の症状とも類似します。胃もたれや食欲不振、体重減少、黒色便など、気になる症状がある時は消化器内科を受診して、医師の診察や血液検査、胃カメラの検査を受けることをおすすめします。

胃もたれ・胃部不快感

胃がんがあることで胃もたれや胃部不快感がでることがあります。その他にも吐き気や痛みを伴うこともあります。これらの症状は、胃がんだけでなく胃炎や逆流性食道炎などでもみられる症状です。症状が気になった場合にはお近くの消化器科を受診しましょう。

食欲不振・体重減少

胃がんがあると食欲が減って体重が落ちることがあります。また、がんによってエネルギーが過剰に消費され、食事は摂れていても体重が減る場合もあります。とくに、半年~1年で体重の5%以上の体重減少がある場合には要注意です。このような症状がある場合には一度内科を受診することをおすすめします。

黒い便が出る

胃がんがあると粘膜から出血しやすくなります。胃から出た血液が胃酸にさらされると色が黒くなり、便の色が黒くなります。胃がんの他にも胃潰瘍(かいよう)でも同じような症状が出ます。そのような症状が出た場合には早急に消化器科を受診しましょう。

胃がんの原因

ここでは胃がんのリスクを上昇させる原因を説明します。まずは胃がんの原因になるものを理解して、対策ができるようにしましょう。

ピロリ菌の感染

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃の酸を中和しながら胃に住み着く細菌です。感染陽性者の胃がんリスクは、陰性者の5.1倍と言われています。ピロリ菌によって胃の粘膜に炎症が起こり、萎縮性(いしゅくせい)胃炎を起こします。この萎縮性胃炎が進むと胃がんの発生要因になります。

塩分の多い食事

世界保健機関(WHO)や日本人を対象とした多くの研究で塩分の多い食事が胃がんリスクであることが示唆されています。塩分の多い食事で胃炎が起こると、発がん物質の影響が出やすくなり、またヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌の感染も起こりやすくなることが知られています。特に、日本人に馴染みのある味噌汁や漬物、魚卵、魚、塩辛などの食品には多くの塩分が含まれており、食べる頻度には注意が必要です。

喫煙

喫煙によって胃がんのリスクが1.6倍上昇すると言われています。喫煙は肺がんを始め、喉頭がんや食道がん、膵臓がんなど、さまざまながんの危険因子です。また受動喫煙によって喫煙者本人だけでなく、まわりの人のリスクも上がってしまいます。

過度の飲酒

日本人男性において、1日一合以上の飲酒(エタノール摂取量として1日23 g以上の飲酒)が胃がん罹患リスクを有意に高めることがわかっています。エタノール摂取量23gは、缶ビール500 mL 1本または日本酒1合に相当します。それ以上の飲酒は胃がんの原因になる可能性があります。

すぐに病院へ行くべき「胃がんの手遅れとなる自覚症状」

ここまでは胃がんの手遅れとなる自覚症状などを紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

黒色の便が出る場合は、消化器科へ

黒色便は胃や十二指腸などの消化管からの出血を示唆します。胃がんや胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの可能性があります。腹部のCT検査や胃カメラや大腸カメラができる大きな病院を受診しましょう。

受診・予防の目安となる「胃がん」のセルフチェック法

・ふらつきや立ちくらみなどの貧血症状がある場合

・黒色便の症状がある場合

胃がんの予防法・早期発見方法

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌の除菌によって胃がん罹患リスクはほぼ半減することが示されています。[1まずは胃カメラを行って、ピロリ菌の感染が疑われる胃炎があれば、呼気試験や血液検査などで感染の有無を調べ、感染していた場合は内服治療でピロリ菌の除菌を検討します。40歳以上の方は、胃がん検診や胃カメラの検査を受けてみてはいかがでしょうか。

塩分を控える

前述のように、日本の伝統的な食べ物である漬物や味噌汁などに代表される塩分濃度の高い食事によって、胃がんのリスクが上昇してしまいます。胃がん予防のために塩分を控えることが重要です。普段から減塩を意識して、薄味の味付けにするよう工夫しましょう。塩分の多い食材を食べる頻度は週1~2回程度に抑えるのがおすすめです。塩分の排出を促す野菜やフルーツの摂取もおすすめです。また塩分を制限することで高血圧や脳卒中、心筋梗塞の発症率も下げられます。

禁煙する

前述のように喫煙は胃がんのリスクです。がんを予防するためには、たばこを吸わないことが理想的です。現在喫煙中の方も、禁煙することによってがんになるリスクを下げられ、周りの人の健康への影響も少なくできます。自分で禁煙が難しいときは禁煙外来を受診しましょう。

節酒する

飲酒は缶ビール500 mL 1本または日本酒1合までが適量です。それより多い飲酒は胃がんのリスクを高める可能性があるので、胃がんの予防のためにも普段からの節酒や休肝日を作ることを心がけましょう。

「胃がんの手遅れとなる自覚症状」についてよくある質問

ここまで胃がんの手遅れとなる自覚症状などを紹介しました。ここでは「胃がんの手遅れとなる自覚症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

女性が胃がんを発症している場合、どのような初期症状が現れますか?

齋藤 雄佑 医師

胃がんにおいて、女性だけにでる特有の症状はありません。初期症状は胃もたれや胃部不快感、胃痛、貧血などです。ただし、女性の場合は月経によって、もともと貧血の方が多いため、発見が遅れることがあります。また、注意したいのが「スキルス胃がん」といって胃がんの中でも進行が早く、予後が悪いものがあります。男女比は胃がん全体では高齢の男性が多いのに対し、スキルス胃がんは若年の女性に多いです。スキルス胃がんの原因は現段階では特定されておらず、初期症状は通常の胃がんと変わりませんが、健診のバリウムで発見されるケースもあるため、健診は毎年受けることをおすすめします。

胃がんの末期症状について教えてください。

齋藤 雄佑 医師

胃がんの末期症状とは前述のように、食べ物がつかえる、お腹が張る、マヒや呂律が回らない、重度の貧血症状などがあります。ただし、胃痛や胃の不快感などの軽い症状しかない場合でも詳しく検査をしてみると末期の胃がんであったという場合もあります。特に前述のスキルス胃がんなどでは早期の発見が難しい場合が多いです。気になることがあれば、近くの内科を受診しましょう。

編集部まとめ

ここまで胃がんの手遅れになる症状について説明しました。ただし、症状だけに着目してしまうと良性の疾患なのに過度の心配をしてしまうことにもなりかねません。まずは胃がんのリスクが高くなる生活習慣を避けて、症状に注意しながら健診などで身体の異常にいち早く気づくことが重要です。また症状がある方や40歳以上の方は胃カメラや胃がん健診を受けて、ピロリ菌の感染があれば除菌しましょう。またピロリ菌の除菌が終わってもすぐに萎縮性胃炎が良くなるわけではないので、胃がんが発生しないか注意深く経過観察が必要です。定期的な健診と検査が受けられるようにかかりつけの消化器科をつくるのもおすすめです。

「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する病気

「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

胃炎

胃・十二指腸潰瘍

逆流性食道炎大腸がん大腸ポリープ

循環器科の病気

心筋梗塞

脳神経内科の病気

脳卒中

血液科の病気

貧血

胃がんの手遅れになる症状について説明しましたが、そのような症状があっても、胃胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎などの良性の疾患の場合もあります。また、血便や便に血が混ざる場合にも胃がんだけでなく、他の消化管からの出血や痔の出血の可能性もあります。まずは気になる症状があれば内科を受診しましょう。特に胃カメラや大腸カメラができる消化器内科の受診がおすすめです。

「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する症状

「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

みぞおちが痛い

胃の不快感

吐き気がする

食欲がない

ふらふらする

体重が減る

便に血が混ざる

上記の症状だけでは病気を断定できません。症状がある場合には、まず内科を受診しましょう。血液検査で貧血があるかどうかなど調べることができます。また血液検査ではわからない消化管の疾患には消化器内科を受診して、胃カメラ、大腸カメラを受けましょう。40歳以上の方は胃がん検診や大腸がん検診なども積極的に受けてみてはいかがでしょうか。

参考文献

がん情報サービス

食塩・塩蔵食品摂取と胃がんとの関連について(国立がん研究センター)