中国の自動車市場ではLiDARを搭載する新型車が増えている。写真は禾賽科技製のLiDARを採用した吉利控股傘下のロータスの高級EV(禾賽科技のウェブサイトより)

レーザー光を用いた3次元センサー「LiDAR(ライダー)」の開発を手がける中国の禾賽科技(ホーサイ・テクノロジー)は3月12日、2023年の通期決算を発表した。

同社の2023年のLiDAR出荷台数は22万2000台と、前年の2.76倍に急増。それを追い風に、通期の売上高は18億7700万元(約383億5894万円)と前年比56.1%増加した。一方、純損益は4億7600万元(約97億2768万円)の赤字で、損失額が前年比58.2%拡大した。

注目されるのは、2023年の営業キャッシュフローが通期で黒字化を達成したと、禾賽科技が明らかにしたことだ。ただし、具体的な数字は後日改めて開示するとしている。同社は2023年7〜9月期の四半期決算で、同年1月から9月までの営業キャッシュフローがすでにプラスに転じていた。

EVの差別化需要で搭載増加

禾賽科技の主力製品であるLiDARは、自動車の自動運転システムおよび先進運転支援システム(ADAS)向けの高性能センサーとして需要が拡大している。2014年創業の同社は、2023年2月にアメリカのナスダックでIPO(新規株式公開)を果たし、中国のLiDARメーカーとして初の上場企業となった。

(訳注:自動運転システムと先進運転支援システムの違いは、運転操作の主体にある。前者は運転の主体をシステムが担うが、後者の主体は人間のドライバーにあり、システムがそれを支援する)

中国の自動車市場ではEV(電気自動車)の販売競争が激化しており、競合車種との差別化のためにLiDARを搭載する新型車が増えている。市場調査会社の高工智能汽車研究院のデータによれば、2023年に中国で販売された新車に搭載されたLiDARは57万1000台と、前年の4.4倍に増加した。

市場調査会社の蓋世汽車研究院のデータによれば、禾賽科技は中国のLiDAR市場で2023年に37.3%の市場シェア(新車への搭載台数ベース)を獲得し、業界トップを走る。禾賽科技によれば、同社製のLiDARは自動車メーカー16社の60車種以上に採用されているという。


中国のEV最大手のBYDもLiDARの積極採用に転じた。写真は同社傘下の高級ブランド「仰望」から2024年に発売予定の超高級EV(仰望のウェブサイトより)

また、財新記者の取材によれば、中国のEV最大手の比亜迪(BYD)が2023年に禾賽科技製のLiDARの採用を決めた。BYDは(コストアップにつながる)LiDARの搭載に以前は消極的だったが、後に方針を転換。2024年1月に開催したイベントで、年内に発売予定の10車種以上に搭載すると発表した。

BYDの新型車のうち何車種が禾賽科技製のLiDARを採用するかについて、両社は開示していない。だが中国市場におけるBYDの存在感を考えれば、禾賽科技にまとまった規模の受注をもたらすのは確実だろう。

LiDAR業界に早くも淘汰の波

それでも、禾賽科技の将来を楽観するのは早計だ。決算報告書によれば、2023年の粗利率は35.2%と前年(39.2%)より低下した。その主因は、利幅が相対的に小さいADAS向けLiDARの販売比率が増えたことだ。


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さらに、2023年に始まった中国自動車市場の価格競争の激化で、部品サプライヤーに対して値下げを求める完成車メーカーの圧力が高まっている。LiDARも例外ではなく、禾賽科技は(大口契約を獲得するために)販売マージンの縮小を余儀なくされた。

「LiDAR業界は残酷な淘汰の波にさらされている。生き残るための経営力を欠く企業は、2年以内に消滅する可能性が高い」。禾賽科技の李一帆CEO(最高経営責任者)は決算説明会で、そう危機感をあらわにした。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は3月12日

(財新 Biz&Tech)