「尿検査でわかること」はご存知ですか?尿検査でわかる病気・疾患も医師が解説!

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尿検査でわかることとは?Medical DOC監修医が尿検査で発見できる病気や検査結果の見方と主な所見、前日や当日の注意点等を詳しく解説します。

≫「糖尿病」を放置するリスクはご存じですか? 危険な合併症や治療法も医師が解説!

監修医師:
伊藤 陽子(医師)

浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

健康診断の尿検査とは?

健康診断で行う尿検査では、尿の中に含まれる蛋白量や糖、赤血球などを調べ、病気の兆候がないかを調べています。体に負担なくでき、腎臓や膀胱などの尿路系の病気、糖尿病、肝臓病などの可能性を知ることができる非常に有用な検査です。

尿検査とは何を調べる検査?(蛋白・潜血等)

一般的な尿検査では、試験紙を用いて尿蛋白、糖、潜血、ウロビリノーゲン、比重、PHを調べます。それぞれの結果でわかることを簡単に解説します。

比重:尿の濃さを調べています。尿が濃いと脱水傾向にあることが分かります。PH:尿の酸性、アルカリ性を調べています。食べ物によっても尿のPHが変わります。蛋白:正常は(-)です。尿蛋白量が多いと腎臓病の可能性があります。潜血:正常は(-)です。潜血は腎炎、膀胱炎・結石や癌など尿路系の病気で陽性となることがあります。糖:血糖値がおおよそ180mg/dL以上となると尿に糖が出ます。陽性の場合には糖尿病の可能性があります。腎臓病があると血糖値が高くなくとも尿糖が陽性となることもあります。ウロビリノーゲン:陽性の場合には、肝臓病の可能性があります。

尿検査はどこで受けることができる?

尿検査は簡単にでき、また体に負担がかからないため広く行われています。
学校健診、一般健康診断や人間ドックでも必ず行う項目です。また、内科や小児科、産婦人科、泌尿器科などでも必要があれば尿検査を行います。
産婦人科では、特に妊婦検診で尿検査を行います。妊娠中には尿蛋白が陽性となることがあります。時に妊娠高血圧症候群や妊娠に伴う腎臓病の合併がみられることもあり、尿検査が早期発見のための重要な検査となっています。

尿検査の前日・検尿当日の注意点とは?

尿検査の前日・当日の注意点

尿検査を受ける際に注意することがいくつかあります。

激しい運動をしない:運動により尿蛋白など陽性となることもあります。風邪など体調が悪い時を避ける:体調不良時にも尿蛋白が出やすくなります。充分な水分をとる:脱水となると異常値が出ることがあります。生理中は避ける:経血が混ざり潜血が陽性となります。可能であれば避けましょう。甘い飲み物を飲まない:血糖値が急激に上昇すると尿に糖が出てしまうことがあります。尿検査前に糖分を多く摂取することは控えましょう。

尿検査でわかる病気・疾患は?

ここではMedical DOC監修医がわかる病気・疾患について解説します。

腎臓病

腎臓病とは、

尿の異常、画像診断、血液検査、病理検査で腎臓の障害が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)があるGFR(糸球体濾過量)が60mL/分/1.73m2未満である

の1、2いずれかもしくは両方が3か月以上続いているものを慢性腎臓病といいます。
慢性腎臓病の原因は、糖尿病、高血圧、痛風などの生活習慣病や腎炎、薬剤性などがあります。なかでも最近は糖尿病をはじめとする生活習慣病が原因となることが多いです。腎臓病は自覚症状がほとんどなく、普段から健康診断で異常がないかをチェックをすることが非常に重要です。健康診断で蛋白尿や血尿などの尿検査の異常や血液検査でクレアチニン(Cr)、eGFRの異常がある場合には早めに内科(腎臓内科)を受診しましょう。腎臓病は進行すると、改善することが難しく、早めに治療をすることが重要です。

尿路結石

腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿路にできる石が尿路結石です。この石は腎臓で作られ、尿の流れに乗って移動します。この時に、石が引っかかってしまい生じる激しい痛みが結石の発作です。また、尿路をふさいでしまうことで尿の流れが滞り感染を起こしたり、腎臓の機能を悪くすることがあります。尿路結石の原因は、痛風や副甲状腺の病気や尿路の奇形、薬剤などが挙げられます。尿路結石がある場合、尿検査では血尿がみられることが多いです。痛みを伴う場合には、病院を受診しましょう。背部痛を伴うことが多く、激痛を引き起こします。尿路結石が考えられる場合には泌尿器科受診をお勧めします。

糖尿病

糖尿病とは、「インスリンの作用が十分でないために高い血糖値が持続する状態」です。糖尿病には、インスリンを作る膵臓の細胞が壊されインスリンの分泌が低下し発症する1型糖尿病と、インスリンの分泌低下と効き目が悪くなる状態に過食や肥満などが加わり発症する2型糖尿病があります。どちらの病気も高血糖となると、尿検査で糖が陽性となりやすくなります。また、糖尿病が進行すると腎障害を来たし、尿蛋白が陽性となることもあります。糖尿病は初期では自覚症状が少ないです。高血糖が持続すると喉の渇きや、尿が多くなることで気がつくこともあります。糖尿病が疑われた場合には、内科(糖尿病内科)を受診しましょう。糖尿病と診断された場合には、1型の場合にはインスリンを中心とした治療、2型の場合には食事・運動療法や必要であれば薬物治療を行います。

膀胱炎

膀胱炎は尿道から細菌が膀胱へ入ることによっておこる感染症です。頻尿、排尿時痛、残尿感などを来たし尿検査では白血球や細菌を認め、進行すると血尿を来たします。女性に多い病気です。多くは抗生剤治療により数日で完治しますが、高熱や背部痛を伴う場合には腎盂腎炎を来たしていることがあり、重症化する危険性があります。早急に泌尿器科もしくは内科の受診をしましょう。

尿検査で再検査・精密検査と言われた時は?

尿検査の再検査・精密検査とは?

健康診断の尿検査で異常が認められた場合には、再度尿をとり異常が持続しているかを確認します。蛋白尿や血尿が持続している場合には、腎炎など腎臓病が考えられます。この場合には、血液検査でクレアチニンや尿素窒素などの腎機能を表す数値の異常がないか、尿蛋白の量、尿の沈殿物を顕微鏡で詳しく検査する沈査で、腎炎で認められる円柱などの所見がないかを調べます。また、動くと血尿や蛋白尿が出やすい人では早朝尿で蛋白尿がないかを調べることもあります。
尿の混濁や白血球などを認める場合には、膀胱炎などの感染を考え尿培養の検査で原因となる細菌を調べます。男性で排尿時の痛みを伴う場合には前立腺炎や尿道炎が考えられます。淋菌やクラミジアなどの性病が原因であることもあり、疑われる場合にはPCR検査を行います。
その他の精密検査としては、エコーやCTなどの画像検査を用いて腎臓や尿路での異常がないか形態上問題ないかチェックを行うこともあります。

「尿検査でわかること」についてよくある質問

ここまで尿検査でわかることについて紹介しました。ここでは「尿検査でわかること」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断の尿検査で調べる項目と基準値を教えてください。

伊藤 陽子(医師)

尿蛋白、潜血、糖、ウロビリノーゲンの項目を調べます。以下が基準値です。

基準値異常値考えられる疾患

蛋白(-)(+)~高血圧・糖尿病・腎炎・腎臓病など

潜血(-)(+)~高血圧・腎炎・腎臓病・膀胱炎・尿路結石など

糖(-)(+)~糖尿病・腎臓病

ウロビリノーゲン(±)(+)~肝炎、胆管結石など

学校や企業健診の尿検査では、何がわかりますか?

伊藤 陽子(医師)

子供が学校で受ける尿検査は糖尿病や腎疾患の早期発見が中心であり、尿蛋白、潜血、糖を見ています。企業健診の尿検査は尿蛋白、潜血の他に糖、ウロビリノーゲンなどを検査しています。腎臓病、生活習慣病に伴う異常や肝疾患を発見できます。

健康診断で生理中に尿検査を受けると結果に影響が出ますか?

伊藤 陽子(医師)

生理中に尿検査を受けると、尿に経血が混ざってしまうため潜血が陽性となってしまいます。このため正確な評価ができません。可能であれば、生理中を避けて尿検査を受けましょう。

尿沈査検査ではどんな健康リスクがわかりますか?

伊藤 陽子(医師)

尿沈渣検査では、「赤血球」「白血球」「上皮細胞」「円柱」などの成分が増えていないかを調べます。「円柱」が多いと腎臓病が疑われ、「白血球」や細菌が増加すると感染症が考えられ、円柱が少なく、赤血球や上皮細胞が主である場合には尿路での炎症、出血などが疑われます。それぞれの考えられる原因からさらに精密検査を進めます。

尿検査では、尿タンパクがあるかどうかが診断できますか?

伊藤 陽子(医師)

尿検査で尿蛋白の濃度や尿蛋白量を調べることができます。

まとめ 定期的な尿検査で健康状態をチェック

尿検査は体の負担がほとんどなく簡単に検査をすることができます。その上、さまざまな体の異常を発見することができる非常に有用な検査です。尿検査に引っかかった場合には、たかが尿検査と放置せず、必ず再検査をしましょう。糖尿病や腎臓病、肝疾患など自分では気が付かない体の異常を知らせてくれているかもしれません。尿検査の項目にもよりますが、内科を受診して再検査を行うと良いでしょう。しかし、背部痛を伴ったり、男性で尿道の痛みがある場合には泌尿器科受診がお勧めです。

「尿検査」の異常で考えられる病気

「尿検査でわかること」から医師が考えられる病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

高血圧

腎泌尿器科系の病気

腎臓病

尿路結石症

腎泌尿器系悪性腫瘍

膀胱炎腎盂腎炎尿道炎前立腺炎

内分泌・代謝系の病気

糖尿病

消化器系の病気

肝臓病

胆管結石

尿検査で蛋白や潜血、糖、ウロビリノーゲンで異常が見られた場合には、さまざまな病気が考えられます。しかし、体調により一時的に異常が出ている可能性もあるため、まず再検査を早めに受けましょう。発熱や背部痛、排尿時の痛みがある場合には感染を伴っている可能性が高く早急に受診が必要です。

参考文献

[腎臓病学会]エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023

[日本内分泌学会]尿路結石症

[日本予防医学協会]尿検査