掲載:THE FIRST TIMES

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「THE FIRST TAKE」に香港のシンガーソングライター、PHIL LAMが出演した。彼は、カナダで生まれ育ち、中華圏のポップスとジャズに影響を受け、自身の音楽活動を始めたという背景の持ち主。2010年に香港でデビューし、2014年に発表した「Mountains and Valleys 高山低谷」が大ヒットし、人気アーティストの仲間入りを果たした。心に染み入るメロディとボーカルで、現在も多くのファンに支持されているアーティストである。そんな彼が、「THE FIRST TAKE」で、代表曲の「Mountains and Valleys 高山低谷」を歌唱。さらに、黃妍 CATH WONG(キャス・ウォン) 、葉巧琳 MISCHA IP(ミーシャ・イップ)というふたりの女性アーティストとともに、「THE FIRST TAKE」のための新曲「Art and Science 藝術 與 科學」を全世界に初披露した。インタビュー前半では3人に「THE FIRST TAKE」の話題を聞き、後半はPHIL LAMのパーソナリティやアーティストとしてのスタンスについて語ってもらった。

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左から、黃妍 CATH WONG(キャス・ウォン) 、林奕匡 PHIL LAM(フィル・ラム)、葉巧琳 MISCHA IP(ミーシャ・イップ)

■本番のパフォーマンス自体はエンジョイしてできてとても特別なイベントになりました

──まずは、「THE FIRST TAKE」でパフォーマンスされた感想をお聞きしたいです。

PHIL LAM(以下、PHIL):最初は緊張してたんですが、興奮のほうが大きかったですね。本番はエンジョイできて、特別なイベントになりました。自分が好きなアーティストも出演しているチャンネルに出演できたことがとても幸せです。

CATH WONG(以下、CATH):1曲目PHILさんひとりで歌うのを見ていたんですが、とても感動したんです。2曲目を3人で歌ったんですけど、出番の前は私もすごく緊張しました。何をすればいいかわからない状態になってましたね(笑)。でも、3人での歌唱ということもあって、本番はとても楽しくできたんです。友だちと一緒に挑戦するって気持ちで歌えました。すごく興奮しましたし、終わったら緊張の糸が切れてみたいになって、ホテルに戻ったらちょっと寝ちゃいました(笑)。

MISCHA IP(以下、MISCHA):パフォーマンスの前夜はひとりでホテルで過ごそうと思ったんです。でも、緊張しすぎて、ひとりでいられない気分になって、スタッフさんと外にご飯を食べに行きました。現場も最初は緊張感があったんですけど、本番はリラックスして歌えました。私も3人で歌うのが楽しくて、いつもの自分に戻ってパフォーマンスできました。でも、これをひとりでやったのかと思うと、(日本語で)「PHILさんすごい!」って思いました(笑)。今回、素敵な経験ができて、次は自分ひとりで「THE FIRST TAKE」に挑戦できたらいいなとも思いました。

──では、今回歌唱した2曲について聞かせてください。まずPHILさんが歌った「Mountains and Valleys 高山低谷」はどんな曲ですか。

PHIL:2014年に僕が作った曲なんです。人生でいちばん落ち込んでる時期に書いた曲なんですけど、この曲がヒットしたおかげで自信がついたし、歌手としてのキャリアが一気に変わりました。自分にとって大事な曲ですね。リリースから10周年でもありますし、自分の代表曲を改めて「THE FIRST TAKE」で歌いたいと思いました。

■「THE FIRST TAKE」に出演が決まってから作った新曲

──そして3人で歌われた「Art and Science 藝術 與 科學」は、「THE FIRST TAKE」のために作った新曲だそうですね。

PHIL:ハイ、「THE FIRST TAKE」に出演が決まってから作った新曲なんです。以前から3人で曲を作りたくて、せっかくの機会なので一緒に作ろうって話になったんです。曲の内容は、恋愛の価値観についての話なんです。男性と女性で恋愛の価値観って違うじゃないですか。男性は理性で考えて、女性が感性で考えるって感じだと思うんです。僕は数学が得意なんですけど、それも関係してるのかはわからないですが、女性の感覚が理解できないことがすごく多いんです(笑)。それに対して、CATHさんとMISCHAさんが女性の代表的に思いを歌う曲になっています。

──PHILさんとCATHさんとMISCHAさんは、もともとどういうつながりがあるんですか?

MISCHA:ふたりともそれぞれ歌手として活動していて、PHILさんとは同じ事務所で先輩後輩の関係なんです。しかも、私のデビュー曲をPHILさんが作ってくれたんです。その曲がきっかけでいろんな人に知ってもらえたので、PHILさんにはすごく感謝してます。

CATH:3人は仲も良くて、雰囲気も近いところがあるんです。今回新曲を男性ひとりと女性2人って形で歌ったんですが、そうした編成の曲って香港ではあまり無いんです。だからこそ面白そうだし、3人でやってみようって感じでしたね。

黃妍 CATH WONG(キャス・ウォン)

葉巧琳 MISCHA IP(ミーシャ・イップ)

──新曲を「THE FIRST TAKE」で初披露するというのもかなり珍しいと思いますが、プレッシャーも大きかったんじゃないですか?

PHIL:プレッシャーはとてもありました。いつもなら、完成した曲があってそれをどうやってライブで歌うのかを考えるって流れがあるんですけど、今回は逆になんですよね。いつもと違う流れが、すごく新鮮に感じます。

MISCHA:プレッシャーはかなりありましたね。いつも曲を初めてパフォーマンスするときは緊張するんですけど、今回は特に「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスなのでとってもとっても緊張しました。PHILさんが言ったように今回はまだレコーディングをしてない新曲なので、練習時間をすごく長く取ったんです。

CATH:香港の音楽ディレクターさんと何度も練習して、どう表現するのがいちばんいいのか、発声も細かいところまで調整しました。日本に来てからも、収録前日にスタジオを押さえてリハーサルをしたんです。準備をたっぷりして挑むって感じでした。

──「THE FIRST TAKE」の話題はここで終わりとなります。CATHさん、MISCHAさんありがとうございました。

CATH、MISCHA:ありがとうございました!!

■僕はもともとカナダで生まれ育ったんですが、小さい頃から両親が広東語のラジオを聴かせてくれてたんです

──では、ここからはPHILさんについて深く聞いていきたいです。PHILさんが音楽に興味を持ったきっかけから聞かせてください。

PHIL:僕はもともとカナダで生まれ育ったんですが、小さい頃から両親が広東語のラジオを聴かせてくれてたんです。その影響で中華圏の音楽に興味を持って好きになったんです。中学の頃からはジャズを勉強し始めて、同時にサックスをやり始めたんです。子どもの頃は、周りから見ると僕は外国で生活してるアジア人で、学校にはアジア人が僕ひとりだけだったんです。それもあって、ちょっといじめもあったんです。だけど、音楽のおかげで自信をつけることができたんです。人前で自分もパフォーマンスして褒めてもらえることがうれしかったですね。なので、音楽にとても感謝してるんです。

──音楽に助けられた感覚があると。いわゆる欧米のヒットチャートの影響もありますか。

PHIL:いえ、僕はあまり聴いてなかったですね。ポップソングに関しては、中国語の楽曲を聴くのが好きでした。でも、中学高校と進んでいくと、ほとんどジャズしか聴いてなかったですね。

■チャーリー・パーカーにはすごく影響を受けています

──ジャズで影響を受けたアーティストは?

PHIL:初めて買ったジャズのアルバムが、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』でした。そこから、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、チャーリー・パーカーとかを聴いていったんです。特にチャーリー・パーカーにはすごく影響を受けています。学生の頃は、彼の譜面をまとめた本を見てずっと練習してました。僕は、2020年に『Finding Charlie』“チャーリーを探せ”ってアルバムを出してるんですが、それくらい彼をリスペクトしてます。

──完全にジャズ畑の人だったんですね。そんなPHILさんが、自分で曲を作ろうと思ったきっかけは?

PHIL:ジャズでは譜面に書いていないフリーのインプロビゼーションがあるんですけど、これをポップソングに入れた自分なりの音楽を作ってみたいって興味からオリジナル曲を作り始めたんです。カナダでは、アマチュアですけど新人アーティストが集まる音楽祭に出たりしていたんです。

■自分の中では、2年(香港で)やってダメだったらカナダに戻って普通の生活をしよう

──では、PHILさんが本格的に香港でアーティストを始めたのはどんな経緯があったんですか。

PHIL:僕は中華圏の音楽がとても好きだったので、香港でアーティストとして自分を試したいって思ったんです。それで、21か22歳のときに生まれ育ったカナダから香港に戻ったんです。まずレコーディングできる環境を探して、そこから1年半くらいかけてソニーと契約してデビューしたんです。それが2010年でした。自分の中では、2年やってダメだったらカナダに戻って普通の生活をしようと思ったんですが、気がついたら10年以上経っていました(笑)。

──デビューした初期の頃はどんな思いがありましたか。香港では帰国子女ということにもなりますよね。

PHIL:そうなんです。カナダと香港での生活というのはまったく違う感覚だなと思いましたね。とにかく学ぶことがたくさんあるなと感じてました。しかも、音楽業界というのは本には書かれてないようなことがたくさんあるんです。自分が体験して掴んでいかないといけないな、早く成長しないといけないなと思ってました。それに、今まで視聴者側だったテレビやラジオに自分が出るっていうのも不思議な感じでしたね。

──先ほどお話にもありましたが、2014年に発表した「Mountains and Valleys 高山低谷」がヒットしたことでPHILさんは人気アーティストの仲間入りを果たしたそうですが、その頃のエピソードを聞かせてください。

PHIL:もともと僕はアーティストになるぞと自信を持って香港に来たんですけど、デビューして2枚CDをリリースしたんですが、何も反響がなくてすごく落ち込んでいたんです。そのときに「Mountains and Valleys 高山低谷」を作ったんです。この曲がヒットしてくれたおかげで、僕の人生は大きく変わりました。根本の僕の人間的な部分は変わってないんですけど、でもポジティブになれた感じはありましたね。

──低い谷から高い山を目指すぞ、必ず這い上がってみせるぞという思いが書かれた曲ですよね。

PHIL:まさにそうです。僕は幸運なことに、この曲で山のほうへ行けたんです。でも、今そこから10年経ってみて、まだまだ自分には足りてないところがあるなと感じています。これからもっと低い谷があるかもしれないけど、自分はもっと高い山を目指していきたいって思いがあります。

■曲作りでは、インスピレーションをいちばん大事にしてます

──前向きな思いに溢れているわけですね。そんなPHILさんが、曲作りでモットーにしてることは?

PHIL:インスピレーションをいちばん大事にしてます。あと2つあるんですが、ひとつめは、たくさん音楽を聴くことを大事にしてます。刺激を受けるインプットは大切ですからね。もうひとつは、たくさん曲を作るということです。やっぱりいい音楽を作るには練習がとても大事だと思うんです。どんなにアイデアがあっても、いい曲にするには、音楽を作るテクニックやスキルが必要だと思うんです。そのためには、とにかくたくさん曲を作ってクオリティをどんどん磨いていかなきゃダメだなと思ってます。

──PHILさんの、真摯に音楽に向き合う真面目な姿勢が伝わってきますね。

PHIL:ありがとうございます(笑)。

──では、PHILさんはこれからどんな活動をしていきたいですか。

PHIL:今年はアルバムをリリースする予定です。香港に戻ったらすぐレコーディングに入ります。音楽では新しい挑戦をしたいんです。いろんなジャンルの音楽をやってみたいと思っています。

■「台前幕後 Backstage @the city (feat. 力臻)」には90年代のゲーム音が入ってたりするんです

──アコースティックサウンドのイメージが強いPHILさんですが、昨年8月の最新曲「台前幕後 Backstage @the city (feat. 力臻)」はシンセウェイヴチューンで驚きました。とてもかっこいい楽曲でした。

PHIL:ありがとうございます。実はこの曲には90年代のゲーム音が入ってたりするんです。僕の中では、日本のカルチャーの要素も入った曲って感覚があります。

■僕は確実に日本の音楽の影響を受けているんです

──なるほど。最後に、日本のリスナーへのメッセージをお願いします。

PHIL:今回、「THE FIRST TAKE」でパフォーマンスができたこと、そして日本でパフォーマンスができたことがとてもうれしかったです。僕の中で、日本はとてもきれいな国という印象があるんです。いろんなカルチャーが混ざっていて、地域ごとに違う文化があって、そうしたこともとても素敵だなと思っています。今、僕はいろんな言語の音楽を聴いてみたいという思いがあって、日本語の曲にもすごく興味があるんです。僕自身、日本の音楽に詳しいわけではないんですが、小さい頃にカナダで聴いていた香港の歌手の音楽は、日本の曲のカバーが結構多かったんです。なので、僕は確実に日本の音楽の影響を受けているんです。今回、日本に来れてとてもうれしいですし、これからいろんな香港のアーティストが「THE FIRST TAKE」に出られたらいいなと思います。逆に日本のみなさんに、香港の歌手の音楽を聴いてもらえたらうれしいです。

INTERVIEW & TEXT BY 土屋恵介

プロフィール

林奕匡 PHIL LAM
フィル・ラム/香港の人気シンガーソングライター。シンガーソングライターでありながらも、サックス奏者、ピアニスト、ギタリストとしても活動。2010年にデビューし、香港音楽界の最優秀新人賞を総なめにした。2014年にシングル「Mountains and Valleys 高山低谷」をリリースして数々の音楽賞を受賞、空前のヒットとなった。それ以来、感動的な曲の多くが音楽ランキング1位を獲得。これまでに10枚のオリジナル・アルバムをリリースし、15,000枚以上を売り上げ、DSPでは11億回のストリーミング達成を記録した。

黃妍 CATH WONG
キャス・ウォン/台北の路上ライブでスカウトされ、ソニー・ミュージックのレーベルO.U.R. WORKS のシンガーソングライターであるCath。2018年に様々な音楽アワードで最優秀新人賞を受賞。これまでに、3枚のアルバムをリリース。最新のアルバム『4891』は有名な小説「1Q84」にインスパイアされ、音楽制作を始め、ビジュアルデザイン、クリエイティブディレクションまでCath自身が携わっており、彼女を代表するアルバムの一つに。

葉巧琳 MISCHA IP
ミーシャ・イップ/香港のテレビのバラエティ番組「キングメーカーIII」への出演から、司会、アニメの吹き替え、舞台パフォーマンスまで、幅広く活躍。2023年にはアルバム『The Odyssey of Freya』をリリース、シングル「Are We Entertained」も香港の地上波テレビ局TVBのポップチャートで1位を獲得。

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