「内向型」ゆえに優れている能力をご紹介します(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「2人に1人いる」とも言われる「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「秘めたる潜在能力」が科学的に証明されています。本稿では、「超外向型社会・アメリカ」の精神科医である大山栄作氏の著書『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』より一部抜粋・編集のうえ、実は内向型であるビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、マーク・ザッカーバーグなどが持っている、内向型ゆえに優れている能力をご紹介します。

内向型が、人類の「予測不能な事態」に対処してきた

人類には予測不能な事態がたびたび訪れます。世界史の教科書を振り返っても、よく人類は存続していたなと思う出来事がいくつも記載されています。氷河期や疫病の流行、戦争、大規模災害……。最近では新型コロナウイルスが人類を脅かしていました。

こうした事態を乗り越えてきた要因が内向型の持つ「冷静さ」によるものだと私は考えています。

外向型の人間だけでは争いが絶えません。外向型は自己主張が強く、相手を納得させようとするだけでなく、突発的に反応しがちです。予測不能な事態に突発的に反応していては、事態が悪化したり、争いが泥沼化したりしかねません。

この内向型の「冷静沈着さ」によってつねに予測不能な事態に対処してきたのが人類の歴史といえるでしょう。

こうした外向型と内向型の違いは印象論にすぎないのではと感じている人もいるかもしれませんが、内向型が「冷静さ」に長けていることは、実験で証明されています。これは、内向型と外向型の脳の働きの違いが、どのような行動の違いをもたらすかを明らかにした実験です。

コーネル大学の研究者グループは内向型と外向型の被験者をランダムに2つにグループ分けしました。片方のグループには興奮剤を、もう片方のグループには偽薬を投与しました。

その後、参加者全員はランダムな風景ショットや森林のシーンなどの一連のビデオを視聴しました。3日後に、同じ検査が再度実行されました。

興奮剤を服用した外向的な人々は、興奮剤を使用していない状況でもビデオを見て興奮していました。一方、内向的な人々は、興奮剤を服用したかどうかに関係なく、ビデオの視聴時の状態に変化はありませんでした。内向的な人と外向的な人とでは、興奮の感情の処理方法が決定的に違ったのです。脳の構造の違いにより、内向的な人は興奮を求めず、「冷静さ」を示したのです。

「自分の内面」に注意を向ける

では、この「冷静さ」はどんな脳の構造の違いから来ているのでしょうか。科学的にも内向型と外向型では脳の働きが違うことが明らかになっています。

例えば、デブラ・ジョンソンは、陽電子放射断層撮影法(PET)を用いて内向型と外向型の脳の働きを実験しました。ジョンソン博士は、アンケートの結果から内向型と外向型にグループ分けされた人々に、横になってリラックスしてもらいました。


被験者たちは少量の放射能を血液中に注入され、脳のどこが最も活性化しているかを特定するためにスキャンにかけられました。画像上には、赤や青などさまざまな明るい色により、脳のどこにどれだけの血液が流れているかが示されました。

その画像からは大きく2つのことがわかりました。まず、内向型の人の脳に流れる血流量が外向型の人よりも多いことが判明しました。血流量が多いということはそれだけ活発に働いていることを示します。

また、内向型の血液が外向型に比べて、「思考」に携わる部分に流れていることもわかりました。記憶したり、問題を解決したり、計画を立てたりといった内的経験に関わる部位に流れていたのです。

一方、外向型は視覚や聴覚、触覚など感覚情報を処理する脳の各部へと流れていました。

実際、被験者にインタビューすると、外向型の人は研究室で起こっていることに注意を払っていましたが、内向型の人は自分の「内面の考えや感情」に注意を払っていました。

この実験からも、人間が自分の外側に関心を向けるか、内側に向けるかが外向型と内向型で分かれていることがわかります。実験中も内的世界に関心を寄せる内向型は、自分が知らないような事態に遭遇しても、これまでの経験に思いを巡らせて問題を解決しようとするため、冷静でいられる可能性が高いといえます。

内向型が予測不能な状況下でも落ち着いて対処できるというのは、決してイメージだけの話ではないことがわかったはずです。

現代は不確実性が高い時代といわれています。それはここ数年で皆さんも感じているはずです。そして、ますます不確実性は増すはずです。内向型の持つ冷静さが求められる時代になったといってもいいでしょう。

(大山 栄作 : 精神科医)