年明けに「仕事に行きたくない」 どう気持ちを切り替える? 病気の可能性は? コツを公認心理師に聞いてみた
間もなく正月三が日が終わりますが、1月4日もしくは5日から仕事が始まる人は多いと思います。一方、連休終了前に「仕事に行きたくない」と憂鬱(ゆううつ)になるケースは珍しくありません。
そもそも、連休終了前に憂鬱になりやすいのはなぜなのでしょうか。どうしても仕事に行きたくないという気持ちが強い場合、何らかの病気の可能性はあるのでしょうか。気持ちをうまく切り替えるコツなどについて、大阪カウンセリングセンターBellflower代表で、臨床心理士・公認心理師の町田奈穂さんに聞きました。
生活リズムの乱れが原因
Q.そもそも、長期休みが終わる前に「仕事に行きたくない」と憂鬱になるのはなぜなのでしょうか。
町田さん「長期休みが終わる前に憂鬱(ゆううつ)になるのは、休みの日と仕事の日とでリズムが異なるからです。例えば、休み中は午前1時に就寝し、午前10時に起きるといった遅寝遅起きをしていた人は多いのではないでしょうか。
しかし、いざ仕事が始まると午前6時もしくは午前7時ごろに起きなければならなくなり、そのために早めに寝ないといけないということで、リズムが大きく前倒しになるでしょう。その結果、体のリズムが狂ってしまい、『仕事に行きたくない』『だるい』といった気分につながるのです。
人間は良しあしにかかわらず、『いつもと同じ』『これまで通り』が大好きな生き物です。本能的に、変化に対して強い抵抗を感じてしまうため、長期休み明けの憂鬱対策として、平日と変わらない生活リズムを意識することが大切です」
Q.「仕事に行きたくない」といった気持ちを抱えたまま、外出しても問題ないのでしょうか。
町田さん「憂鬱な状態であっても、仕事に向かうというのは素晴らしいことです。私たちは気持ちを単体でコントロールすることがあまり得意ではありません。しかし、行動を起こすことでそれが刺激となり、気持ちが変化してくることはよくあります。
実際に、『認知行動療法』という心理療法もこの認知や行動のメカニズムを利用して気持ちにアプローチしていきます。例えば学生時代、やる気が出ない中、問題集を2問ほど解いてみたら、何となく集中し始めていつの間にか宿題が終わっていたという経験はないでしょうか。それが行動によって気持ちが変化する現象です。
そのため、気分が憂鬱でもとにかく仕事に向かうことで、自然と仕事のスイッチが入り、仕事モードへと気づかないうちに切り替わっているでしょう」
Q.「仕事に行きたくない」という憂鬱感が強い場合、病気の可能性はあるのでしょうか。受診の目安も含めて、教えてください。
町田さん「先述のように、行動することで、憂鬱感はいつの間にか消え、仕事モードに切り替わります。しかし、『涙があふれてくる』『食欲がない』『体が動かない』といった症状があれば注意が必要です。これらは長期休み明けのリズムが変わることによる影響というよりも、うつ病や適応障害など精神疾患の可能性があります。
これらの症状が2週間以上続いている場合や、生活リズムが整っているのに憂鬱感が強いという場合は、早めに精神科や心療内科を受診するのがお勧めです」
Q.「仕事に行きたくない」という憂鬱感が強い場合、やってはいけない行為はありますか。
町田さん「憂鬱になると、日中の活動量が低下したり、夜の睡眠に影響が現れたりします。特に、明日を迎えるのが嫌で眠れないというお悩みをよく伺います。
日本は寝酒大国といわれるほど、不眠を理由に寝る前にお酒を飲む人が多いです。アルコールは一時的に眠気を強めてくれますが、数時間後に覚醒作用が働き、かえって目が覚めます。つまり、睡眠の質を大きく下げる原因となるのです。
睡眠時間が短いと、人は不安や怒りなどのネガティブ感情の感受性が高くなります。自分が思っている以上に憂鬱感が生じやすく、より一層仕事に行きにくくなるでしょう。
また、カフェインも睡眠の質に大きな影響を与えます。日常的にエナジードリンクやコーヒーを飲む人は少なくないとは思いますが、夕方以降のカフェインの摂取を控えるのをお勧めします」
Q.長期休暇の終了前に「仕事に行きたくない」と感じた場合、気持ちをうまく切り替えるコツはありますか。
町田さん「長期休暇終了前に『仕事に行きたくない』と憂鬱感が生じる場合、気持ちに注目するよりも、行動してみるのはいかがでしょうか。例えば、近くの公園や河川敷などを散歩してみるとよいでしょう。ウオーキングといった軽い運動には、憂鬱な気分を切り替える効果があるほか、運動の途中で草や葉などの自然に触れ合うことで、メンタル不調を改善する効果があります。
また、憂鬱な気分になるとついSNSやYouTubeをダラダラと見てしまい、いつの間にか午前0時を過ぎていることがあると思います。こうなると憂鬱の悪循環が始まります。憂鬱なときほど、温かいお風呂にゆっくりつかって、ストレッチをすることで、自然と眠気も出るようになります。
このほか、平日の朝と休日の朝に共通の習慣を持っておくのも、気持ちをうまく切り替えるコツとしてお勧めです。例えば、朝起きてさゆを飲んでからストレッチをするといった習慣を持つのはいかがでしょうか。平日と休日で共通の習慣をこなすことで、朝、出発する際のだるさが解消されます。
長期休み明けの憂鬱な中、仕事に向かおうとするのは素晴らしいことです。通常のリズムを取り戻して今年も1年、頑張っていきましょう」