「おせち料理」は栄養豊富?

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 新年の食卓を鮮やかに彩る「おせち料理」。使われる食材に「無病息災」「子孫繁栄」といったさまざまな願いが込められている、縁起のいい料理であることも知られているおせちですが、実は「おめでたい」「見た目が美しい」だけでなく、栄養も豊富だということを知っていますか。意外と知られていないかもしれない、おせち料理の栄養価について、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

紅白かまぼこは「塩分の多さ」に要注意

Q.おせち料理には、どんな栄養が含まれているのですか。

岸さん「おせちの定番料理に使われている食材には、栄養が豊富に含まれているものも少なくありません。主な食材と栄養素は、次の通りです」

【黒豆】

黒豆は大豆の一種なので「イソフラボン」が含まれます。イソフラボンは、女性ホルモンの一つ「エストロゲン」に似た働きをするため、更年期障害や骨粗しょう症予防、悪玉コレステロールを下げる効果などが期待できます。また、大豆にはない「アントシアニン」も含まれ、抗酸化作用を発揮します。

【数の子】

ニシンの卵である数の子には、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす効果のある高不飽和脂肪酸「DHA」「EPA」が含まれています。魚卵ではありますが、コレステロールの含有量が比較的少ないのが特徴です。

【田作り】

田作りにはカタクチイワシの稚魚を使用します。カルシウムが多く含まれる上、その吸収を高めるビタミンDも豊富に含まれています。

【たたきゴボウ】

ゴボウには食物繊維が多く含まれています。食物繊維は、食後血糖値の上昇を緩やかにし、腸内環境を整えて便秘を予防するだけでなく、コレステロールの排出も助けてくれます。

【紅白かまぼこ】

かまぼこは、原料である白身魚の栄養価を引き継いでいるため、高タンパク質であることに加え、低脂質で消化もよいことが特徴です。一方で、塩分も比較的多く含まれるため、その点は注意が必要でしょう。

【だて巻き】

だて巻きは卵料理の一つで、白身魚やエビのすり身に、溶き卵とだしを加えて作られます。かまぼこと同じように、白身魚や卵由来のタンパク質の他、ビタミンDやEなどのビタミン類も少量含まれています。

【昆布巻き】

昆布には、水溶性食物繊維の「アルギン酸」が含まれています。血糖値の上昇を防ぎ、悪玉コレステロールや血圧を下げる作用があります。

【栗きんとん】

栗きんとんには、裏ごししたサツマイモと栗の甘露煮が使用されており、ビタミンCやカリウム、食物繊維が含まれます。サツマイモに含まれる特有の栄養素「ヤラピン」には整腸作用があり、食物繊維との相乗効果で便秘を予防する効果が期待できます。

【紅白なます】

紅白なますには、ニンジンとダイコンが使われます。ニンジンには、粘膜を正常に保つ働きをする「βカロチン」が、ダイコンにはでんぷんの消化を助ける「ジアスターゼ」やビタミンCが含まれています。

【焼き物:エビ】

エビは高タンパク質かつ低脂肪・低糖質でカロリーが低く、疲労回復や肝機能を高める効果のあるアミノ酸の一種「タウリン」、非常に強い抗酸化作用を持つ「アスタキサンチン」などが含まれています。

【焼き物:ブリ】

ブリの栄養価は青魚の中でもトップクラスで、カルシウムとともに、その吸収を助けるビタミンDも含まれます。青魚の特徴的な栄養素である「DHA」「EPA」の他、疲労回復や肝機能を高める効果のある「タウリン」、ビタミンEやB群なども多く含まれています。

【焼き物:タイ】

タイは、白身魚の中では脂質が少し多めですが、タンパク質は鶏むね肉に近いとされるほど多く含まれます。DHAやEPA、ビタミンAやD、B群も比較的多く含まれます。

【煮しめ】

煮しめに使われるシイタケ、ニンジン、タケノコ、サトイモ、こんにゃくなどの食材には食物繊維が多く含まれています。腸内環境を整えるだけでなく、血糖値の急激な上昇を抑制する効果も期待できます。

おせちの「太りにくい」食べ方は?

Q.おせちの定番料理を食べる際の、栄養面における注意点はありますか。

岸さん「おせち料理は、保存性を高めるために、砂糖やみりんをたっぷり使用して作る上、塩分も多くなっています。使う素材そのものは栄養価が高く、太る原因ではないのですが、濃いめの味付けによって高カロリーかつ塩分が多くなっているのです。

中でもカロリーが高く、注意が必要なのは栗きんとん、黒豆、だて巻きです。栗きんとんは、砂糖とみりんを使用したサツマイモのペーストに、栗の甘露煮を混ぜ合わせたものです。おせちの黒豆は味付けが濃くなっているものが多く、黒豆とほぼ同量の砂糖が使われています。また、だて巻きは魚のすり身、はんぺんなどと卵からできており、カステラに近い量の卵と砂糖が使われています。これらに共通しているのは、『材料+砂糖の使用』によって糖質が多いため、カロリーが高くなっているということです。

なるべく太りにくくするための食べ方としては、『食物繊維の多いもの→タンパク質源→糖質の多いもの』の順で食べることです。最初にたたきゴボウや紅白なます、煮しめなどの野菜類から食べ、次に焼き物や数の子、かまぼこなどを食べてから、スイーツやデザートのような感覚で栗きんとん、だて巻きを食べるのがよいでしょう。

かまぼこや数の子、田作りは塩分が多く、むくみの原因にもなりますし、酢の物はおせちの中では比較的カロリーや糖質、塩分が控えめとはいっても、濃いめに味付けされていることが一般的です。お重から直接取るのではなく、あらかじめ小皿に1人前ずつ取り分ける形にすると、食べ過ぎを防ぐことができるかもしれません。正月太りに悩んでしまう人は、参考にしてみてください。

とはいっても、おせちは日本のお正月の風物詩です。年に一度の特別なイベントでもあり、おせちが好きな人もいらっしゃると思うので、カロリーや食べ方にこだわり過ぎず、食を楽しむことも時には大切です」