助っ人HRわずか1本の惨劇 台頭できなかった若手…“頼りきり”で課題明確の鷹打線
リーグ3位…悔しい結果に終わったソフトバンクの野手陣を振り返る
3年ぶりのリーグ優勝奪還を目指すも、リーグ3位と悔しい結果に終わったソフトバンク。本記事では今年も投手編、野手編に分け、2023シーズンを振り返っていく。今季はチーム打率が.248(リーグ2位)、本塁打数104(2位タイ)、得点数536(1位)。昨季の打率.255(1位)、本塁打数108(2位)、得点数555(1位)と比べると数字自体は下がったものの、リーグ内で見ればハイレベルな打線だったといえる。
今季の打線を振り返る上で外せないのが、近藤健介外野手の活躍ぶりだ。昨季オフにFA移籍し、3月にはWBCで世界一に貢献。オフらしいオフのなかった近藤だが、開幕戦から打線に名を連ねる。
5月までは本来の打撃を発揮できなかったが、6月からは3か月連続で月間OPSが1を超え、8月には自身2度目となる月間MVPを受賞。これまでは11本が最多だった本塁打数を大きく伸ばし、26本で自身初となる本塁打王のタイトルを手に入れる。それでいて打率も落とさず.303でリーグ2位、出塁率は.431とリーグ唯一の4割超え。109個もの四球を獲得し、球団の最多記録を更新した。
ともに今季の打線を支えたのが柳田悠岐外野手だ。キャプテン2年目の今季は、チームで唯一の全試合スタメン出場を達成し、2度目の最多安打、4年連続8度目のベストナインを獲得した。6月28日の楽天戦で、NPB史上69人目となる通算250本塁打を達成すると、8月18日の西武戦では、NPB史上135人目となる1500安打に到達。その存在感は、プロ13年目の今季も少しも褪せることがなかった。
中村晃外野手は2年ぶりとなる規定打席に到達し、140安打をマーク。140安打以上を記録したシーズンは2018年以来となる。今季はシーズン前半から安定して安打を重ね、1番での起用も続いた。守備でも一塁手として128試合に出場し、失策をわずか2つに抑え、4年連続4回目のゴールデン・グラブ賞を獲得。抜群の捕球で野手の送球をカバーするシーンも多く見られた。
助っ人の本塁打がわずか1本…最も大きな誤算
なかなか打撃の調子が上がらなかった周東佑京内野手だったが、9月に覚醒した。8日の楽天戦では自身初の満塁弾を放つなど、月間打率.360、11盗塁を記録し、初の月間MVPに輝いた。36盗塁で3年ぶりに盗塁王のタイトルも獲得。選手会長となる来季は、シーズンを通した活躍を目指す。
ほかにも柳町達外野手が、自己最多の116試合に出場し出塁率.375をマーク。三森大貴内野手も102試合で得点圏打率は3割を超えた。しかしその反面、柳町は長打率が昨季の.346から.322に低下し、三森も出塁率が3割を切るなど課題も見え、飛躍の年にすることはできなかった。
今季最も大きな誤算は、外国人野手の不調であろう。助っ人の本塁打はウイリアンス・アストゥディーヨ内野手の1本のみ。シーズン途中に再契約を結んだアルフレド・デスパイネ外野手も、かつての打棒再来とはならなかった。
若手の大砲候補も今季は苦戦した。藤本博史前監督が期待を寄せ、開幕戦から起用された正木智也外野手だったが、18打席無安打と不振で登録抹消。今季はわずか1安打に終わる。昨季に2桁本塁打を記録した野村勇内野手も怪我で出遅れると、復帰後も状態を上げることができず、3本塁打にとどまった。
主力野手の流出もなく、来季も手強い打線となりそうだが、今季規定打席に到達した4選手はいずれも30代で、中堅に頼りきりの状況。若手の台頭が課題になっている。さらに、今季の外国人野手は4選手とも退団が決まっており、来季ともに戦う外国人野手が打線にはまるかどうかは不明瞭だ。今季2軍監督として優勝を果たした小久保裕紀新監督の就任1年目。どのような変化を見せるのか注目だ。(「パ・リーグ インサイト」武澤潤)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)