首位は断トツ「世界鉄鋼メーカー」ランキング
「鉄は国家なり」といわれた時代は遠くなった。とはいえ、鉄鋼業が多くの産業の基礎であることに変わりはない(編集部撮影)
日本製鉄が12月18日に発表した2兆円の買収。同社にとって過去最大の案件で、狙いをつけた相手はアメリカの老舗であるUSスチールだった。
全米鉄鋼労働組合(USW)が日本製鉄による買収を非難する声明を出すなど、無事に買収を完了できるかはまだわからないが、この買収が成立すれば、日本製鉄は世界の鉄鋼業界でどんな立ち位置になるのか。
世界の「トップ3」に入る
日本製鉄の粗鋼生産量(2022年)は4437万トンと、グローバルで見ると世界4位だ。一方、USスチールは1449万トンなので単純合算すると、中国の鞍山鋼鉄集団を抜いて「世界トップ3」の一角に食いこむ。
ただし、1位の中国宝武鋼鉄集団は粗鋼生産量が1億トンを超えており、その存在感が際立っている。宝武を筆頭に中国勢がトップ10内にひしめいており、世界の鉄鋼市況はこの中国勢の一挙手一投足が左右する。
中国の生産量は日本の10倍以上
中国は今や世界の粗鋼生産量の5割を超えるシェアを持っている。1990年代半ばまで粗鋼生産で世界一を誇ったのは日本だった。徐々に台頭してきた中国は1996年に日本を追い抜き、2000年代には生産量を激増させた。
足元では、2022年の日本の粗鋼生産量は約9000万トンに対し、中国は10億トンを超えている。その生産量は日本の10倍以上だ。
インド、アメリカに目を向けるのは必然
粗鋼生産量でみると日本は中国、インドに次ぐ3位だが、自国での消費量(生産量+輸入量−輸出量)でみるとその風景は変わる。中国トップは揺るぎないが、インド、アメリカと続く。
インドは人口当たり鋼材使用量が日本の約5分の1、中国の約8分の1しかなく、今後の成長余力が大きい。アメリカの需要は先進国で最大となる年間約1億トンあるのに対し、同国内の粗鋼生産量は8000万トン台と需給がタイトだ。
一方、日本は約9000万トンの生産に対し、内需は約5500万トン。つまり輸出に依存している。日本の輸出の中心となるアジア市場は、中国からの輸出の多寡で市況が乱高下する。しかも、少子高齢化で内需は一段と縮んでいく。
日本製鉄は2019年には欧州アルセロール・ミタルとの合弁でインド5位の鉄鋼大手を7700億円で買収。そして今回、USスチール買収を発表した。日本国内の鉄鋼事業では利益成長が見込めないだけに、次の一手が海外になることは自然な流れだろう。
(山田 雄大 : 東洋経済 コラムニスト)