2024年にリリースされる予定のApple製ARヘッドセット「Vision Pro」を、精神疾患の診断や治療に用いることがAppleの社内で検討されていると、アメリカのビジネス誌・The Informationが報じました。

Apple Has Discussed Using Vision Pro for Mental Health Diagnosis, Treatment - The Information

https://www.theinformation.com/articles/apple-has-discussed-using-vision-pro-for-mental-health-diagnosis-treatment



Apple Thinks the Vision Pro Could Help Treat Your Depression - The Messenger

https://themessenger.com/tech/apple-vision-pro-diagnose-treat-anxiety-depression-ptsd-mental-health-mood

Report: Apple Continues to Explore Health Capabilities of Vision Pro - MacRumors

https://www.macrumors.com/2023/10/25/apple-explores-vision-pro-health-capabilities/

The Informationによると、AppleはVision Proを使用してユーザーの表情の変化を検出し、精神疾患の診断や治療に役立てることを社内で検討しているとのこと。これには、瞳孔散大や目の動き、そのほか要素の検知を用いた不安障害やうつ病、PTSDなどのメンタルヘルスの診断が含まれています。



例えば、メンタルヘルスに問題が起きている兆候のひとつとして「感情の平板化」があります。このような微妙な表情の変化を検知すると、Vision Proは着用者の精神状態を改善できるような画像を表示したり音声を再生したりします。

これまでも、精神疾患の治療にVRやARなどの技術を用いる研究が行われてきました。

精神の病がVR技術で治療できるようになる未来がやってくる - GIGAZINE



Appleはまた、Vision Proの赤外線視線追跡カメラを使用して目の血管の腫れを検出し、心不全の初期兆候を発見することについても検討している可能性があります。

一方、Appleの内部からは、ヘルスケア機能の追加に慎重な意見が出ています。健康上の問題を診断または治療すると主張するには、臨床試験や保健当局の承認を経る必要があるため、一部のApple社員らはこれ以上健康関連のうたい文句を増やすことに対する法的責任の増加を危惧しているとのこと。加えて、Vision Proが薬物療法など他の治療に匹敵する効果をもたらすかどうかに懐疑的な向きもあり、こうした声に押されて機能が制限される可能性もあります。

また、Appleは以前ヘッドセットを使用して体重の変化を検出したり、ユーザーの動作の変化を分析したりして、パーキンソン病などの健康上の問題をスクリーニングする機能を検討していましたが、Appleは信頼性の低さを理由に全身トラッキング機能をVision Proから削除したため、体全体の健康を診断する機能の実現は遠のくことになりました。



The Informationに情報を寄せた関係者は、Appleがヘルスケア・アプリケーションに「膨大な時間を割いた」と話しています。この健康機能の議論や検討には、AppleのARおよびVR部門の責任者であるマイク・ロックウェル氏を含め、Apple社内の重要人物が参加したとのこと。さらに、Appleは健康機能を検討するための専門家も雇い入れたとされています。

The Informationは、メンタルヘルス機能が2024年にリリースされる第1世代のVision Proに搭載されるのか、それともその後に展開される後継モデルに搭載されるのかを特定できませんでした。また、情報筋はこのような機能がまったくリリースされない可能性もあると述べている一方、仮に見送られたとしても、ヘッドセットを用いた健康アプリケーションの構想は続けられるとしています。