『相棒』杉下右京はなぜ愛される? 伝説の第1回で描かれていた唯一無二の魅力
2000年のシリーズ誕生以来、濃密で骨太なミステリーの数々を世に送り出してきたドラマ『相棒』。
2023年10月から、再会2年目の“伝説のコンビ”杉下右京(水谷豊)×亀山薫(寺脇康文)が新たな挑戦に乗り出す『season22』が始動した。
そんな『相棒』シリーズは、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」「テレ朝動画」にて、過去全シーズンとスペシャルドラマに加え、劇場版、スピンオフも配信中だ。
テレ朝POSTでは新シーズンのスタートを記念し、『相棒』の個性豊かな登場人物たちにスポットを当て、オススメのエピソードとともに彼らの魅力を紹介していく。
初回となる今回は、同作を国民的ドラマに押し上げた主人公・杉下右京のキャラクターを掘り下げる。
◆2時間ドラマで初登場した国民的名探偵
警視庁特命係に所属する杉下右京は、もともとキャリアとして警察庁に入庁したエリート刑事。
チェスと紅茶を愛する紳士な人物で、優れた推理力と正義感を併せもつ。特命係という閑職に追いやられた後も、好奇心から度々事件に首を突っ込み、事件解決に挑んでいる。
そんな右京が初登場したのは、単発の2時間ドラマとして放送されたシリーズ第1回『相棒 pre season 相棒〜警視庁ふたりだけの特命係』(2000年6月3日放送)だった。
©テレビ朝日・東映
物語は、捜査一課の刑事・亀山薫が指名手配犯に人質にされるシーンから幕を開ける。
大勢の警察官が包囲するも、拳銃をもった犯人に手出しができず、こう着状態に。そのピンチを救ったのが右京だった。
電話越しにはじめて薫にあいさつした右京は、「今あなたをテレビで見ています。犯人に変わっていただけますか?」と冷静に指示。機転を利かせて犯人の注意を引きつけ、見事事件を解決へと導く。
ところが、特命係に配属された薫が助けてもらった挨拶をすると、「テレビに映った君の姿は無様でしたよ」とバッサリ。
このときは “冷静沈着の切れモノだがいけ好かないエリート”という印象だった。
©テレビ朝日・東映
また、今作では絶対的な“正義”を求める右京の一面もすでに描かれている。
真犯人が意外な人物だと気づいた右京は、普通の刑事なら手を緩めそうな相手にも臆せず自分が信じる正義を貫く。
「罪を犯したらどんな人間でも法によって裁かれなければならない」――。そんな右京の確固たる信念がうかがえる。犯人に激昂して声を荒げるシーンもこのときからあった。
◆人生に絶望する犯人に優しい言葉も
一方、厳しさだけでなく、優しさをもって犯人を諭す一面もある。
『相棒 season12』 第18話「待ちぼうけ」(2014年3月12日放送)では、そんな場面が描かれている。
山奥の田舎駅で電車を待つ右京は、同じように一人電車を待つ男・友部(太川陽介)に出会う。
友部は大昔に靴職人の修業をしていたが、母親が元従業員に金をだまされ多額の借金を背負い、その返済のため最近までトラック運転手をしていたという。
©テレビ朝日・東映
身の上話をするうちに次第に打ち解けていく2人。しかし、友部は前日に人を殺し、自殺するためにこの場所に来ていた。そして実は右京にも友部の凶行を止める目的が…。
悲しい事情で犯罪を犯し、人生に絶望する犯人に、右京はこんな言葉を掛ける。
「大事なのはどんなに絶望的な状況に思われても投げ出さないこと。無様でも惨めでも、あきらめずにもがき続けること」
人生について深く考えさせられるセリフに、胸が熱くなる。右京の人間味や優しさが光るシーンだった。
◇
『相棒』という国民的作品の中で長年愛されてきた杉下右京というキャラクター。
たぐいまれなる推理力と洞察力をもち、一癖も二癖もある変人ながら、人間的な魅力にあふれている。新シーズン『season22』でどんな活躍を見せてくれるのか、期待したい。