オイルの「きほん」を知っておこう!【ライドメンテナンス021】(ピックアップ)
新車ほど減る場合も!
エンジンオイルを気にするライダーは少ない。
でもほとんどのエンジンについている、オイルのレベルを確認する点検窓は知っているはず。
まだ買ったばかりだし、エンジン回転も低めの乗り方で負担は少ないはず、など丁寧に扱っていることも含め、劣化する距離も走っていない、もしくは時間も経っていないという理由も含め、見てもいないライダーが大半だろう。
しかしタイヤの空気圧と同じで、ツーリングへ行く前に必ず見てほしいのがこのエンジンオイルのレベルを確認する点検窓だ。
エンジンはガソリンと空気を霧化した混合気をシリンダーへ吸い込んで圧縮、そして爆発をうける往復するピストン、その往復運動を回転に変換するクランクシャフト、その吸気と排気のバルブを開け閉めするカムやカムシャフト駆動、そして異なる減速比に配分したミッションなど、金属どうしが接したり擦れ合ったりする部分だらけ。
しかも燃焼で高温になるため、その負荷は半端ないほど強烈だ。
それを円滑に擦れても摩耗しないよう被膜で保護するのがエンジンオイル。冷却も大事な役割のひとつでもある。
このため、エンジン内部に溜めてあるオイルが減ったりなくなったりすると、修理もできないほどのダメージを被ることになる。
そして走行していなくても、渋滞などでエンジンが回っているだけで、冷却しにくい状態であるのも手伝って、エンジン内部でピストンの隙間を抜ける排気ガス(ブローバイ)の超高温で酸化や気化にさらされ、劣化したり減ったりもしているのだ。
さらに新車だと、まだ各部の表面がお互い擦れ合って馴染んでいないため、隙間が大きいままだとオイルが燃焼室へ出てしまい排気ガスと共に外気へ排出されやすくもある。
つまりまだ新しいから大丈夫、という保証はないのが、乗用車などと違ってレース用エンジンとほぼ変わらない高性能なスポーツバイクの宿命でもある。
とはいえ、高価なスポーツバイクほど、定期的なオイル交換など購入したショップにメンテナンスをまかせているはず。
それでも知ってきたいのは、エンジンオイルの種類や、なぜ黒く汚れるのか、また潤滑を保つためにオイルを濾過するオイルフィルターがあって、これも一定時間を過ぎると交換が必要など、基本的なことは知っておきたい。
たとえばエンジンオイルには鉱物油と化学合成油と、精製の方法で2種類がある。
鉱物油はわかりやすく簡略化して説明すると、原油から揮発系の燃料などを精製して残ったベースオイルに色々添加して、温度対応や清浄性を与えるなど改良されてきた従来からの歴史ある製品。
対して化学合成油は、原油から揮発系と同じ精製を介するため、鉱物油のベースオイルに残る化石燃料ならではの炭化しやすい成分がなく、高温でも黒く汚れにくく長時間高負荷に耐える。
最近では原油ではなく天然ガスからも精製できるようになり、高コストが課題だった面が緩和されたこともあり、一般でも多く使われるようになっている。
そのため交換指定の距離や時間も、従来の数倍も長かったりするが、早めに交換したからといって害があるわけではない。そこは趣味の世界、愛車を大事にしたいという気持ちの赴くままで良いだろう。
ドレンプラグを回すレンチと廃油の棄て方を守ればDIYも可能
もちろんオイル交換を自分でやるのも趣味の世界だからこそ。
ただオイル交換には、汚れて劣化したオイルを抜くのに、ドレンボルトを緩めるレンチなり工具が必要だ。
さらにこうしたボルト類は締めつけトルクを守る必要があり、経験がないとネジ山を潰して取り返しのつかない状態に陥る可能性もある。
抜いたオイルも新しいオイルを購入したショップで引き取ってもらうか、ガソリンスタンドでも廃油処理を請け負う場合があるのと、地方自治体などでは処理BOXを使い吸い取って固めて指定した方法で廃棄できるケースもあるが、棄てるのも簡単ではないことをお忘れなく。
ということで、オイルは入っているはず、まだ交換してから1ヶ月だから大丈夫などラフにならず、走る前に必ずレベルの点検窓を見て規定量があるか確認したり、汚れ具合も気にするよう習慣づけたい。