その不調は、高層階での勤務や出張が原因かもしれません(写真:アン・デオール/PIXTA)

低気圧の天気になると体調がどうも優れない……。そんな悩みを抱えている人は少なくありません。気圧の変化による自律神経の乱れがその原因ですが、天敵は天気だけではありません。ビジネスパーソンを襲う意外な2つの気圧変化とは? 自律神経の名医と気象予報士が天気を味方につける方法を探った『天気に負けないカラダ大全』から一部抜粋、再構成してお届けします。

「耳ツン現象」があるなら要注意

<通勤高山病>
●高層階のオフィスは毎日気圧がアップダウン

<特徴>
●高層階のオフィスへ毎日通勤。
●約10階の高さで4ヘクトパスカル低下する。
●エレベーターに乗るたびに”耳ツン”をともなう気圧変化に耐えている。
●エレベーター待ちのイライラで自律神経が乱されがち。

<対処法>
●エレベーターを2〜3階手前で降りて、階段を上る。
●時間に余裕を持って行動する。
●耳のマッサージをする。

現代で気圧の変化の激しいもののひとつが高層ビルです。

何階からが高層階なのか明確な定義はないようですが、エレベーターで高層階へ向かう途中で耳がツンとする「耳ツン現象」が起きていれば、それは気圧の変化にさらされているということがいえると思います。

20階や30階といった超高層階への移動では、計算上では一気に8〜12ヘクトパスカルも気圧が低下すると考えられます。

自律神経が高いレベルで安定している日は、体への変化を感じずに過ごせてしまうこともあるでしょう。しかし、寝坊して慌てて支度をして駅までダッシュするなど、朝から自律神経のバランスが乱れるような行動を取った日、あるいは、天気が崩れて低気圧が近づいてきているような日は要注意です。


(出所:『天気に負けないカラダ大全』)

自律神経の乱れや低気圧の接近という条件に高層階への移動による気圧変化という要素が重なり、片頭痛を引き起こしたり、交感神経の活性度が下がりすぎてしまうためだるさや眠気を感じる人も出てくるはずです。

気圧の低下によって自律神経のバランスが乱れているので、これを解消するためには、適度に交感神経を刺激することがポイントになります。

少し面倒だったとしても、自分が降りる階よりも2〜3階分手前でエレベーターを降り、階段を使うようにするのがおすすめです。リズミカルに階段を上ることで、交感神経の活性度が上がり、自律神経のバランスを整えることができます。

また、高層ビルや高層マンションでは、エレベーターの待ち時間の長さがストレスになっているケースが多くあります。なかなかこないエレベーターの前でイライラしたり、時間に間に合うかどうかを心配して焦ったりするのは、自律神経のバランスを乱すもと。時間にゆとりのある行動を心がけましょう。

飛行機や新幹線の移動が自律神経を疲れさせる

<出張低気圧>
●移動中の気圧変化で体はボロボロ

<特徴>
●飛行機や新幹線での移動をともなう出張が頻繁。
●移動中に“耳ツン”を何度も感じる。
●「だるい」「疲れが抜けない」が口ぐせ。

<対処法>
●移動中の機内・車内でも、可能な範囲で立つ、歩く。
●スペースを見つけて、かかとの上げ下げをして血行を促進。
●1:2の深呼吸で自律神経を整える。

飛行機や新幹線による気圧の変化は、自律神経を疲弊させます。飛行機の離陸や着陸時、新幹線がトンネルを出入りする瞬間に体全体に圧力を感じたり、耳がツンとしたり詰まったような感覚になることがあります。

移動中は「4秒吸って8秒吐く」呼吸法を


目的地に着くまでの間、これが何度も繰り返されることになり、そのたびに健気に対応している自律神経はどうしたって疲れてしまいます。

移動中は、自律神経のバランスが大きく乱れないように4秒吸って8秒吐く「1:2呼吸法」をたびたび行うように心がけましょう。

また、ずっと座ったままで同じ姿勢が続くと、脚がむくみ、血行不良の原因となります。

血行不良は自律神経の乱れを生じさせるので、用事がなくてもできるだけ立って歩く、その際、スペースを見つけてかかとの上げ下げをしてふくらはぎを刺激するなど、むくまない対策をとりましょう。

(小林 弘幸 : 順天堂大学医学部教授)
(小越 久美 : 気象予報士、健康気象アドバイザー)