アーセナルの監督就任10周年を迎えたアーセン・ベンゲルは、そのキャリアをノースロンドンで終えることになりそうだ。Jリーグの名古屋グランパスエイトで指揮を執っていたベンゲルが、イングランドの名門に招聘されたのは1996年9月28日。以降、10年間でプレミアリーグ優勝3回、FAカップ優勝4回と、数多くの栄光をもたらした。そんな知将に対し、アーセナルのデイビッド・デイン副会長は、監督引退後の職も用意しているという。

「アーセンの監督就任は、我々にとって一種の賭けだった。しかし、当時の決断が正しかったことは、その後の栄光が証明している。彼の功績はタイトル獲得だけではない。同時に、美しいスタイルのサッカーをクラブに根付かせたのだ。さらに、新スタジアムを建設できたのも、彼の貢献が大きい。10年間の成功がなければ不可能だっただろうからね。彼にはアーセナルで監督のキャリアを終えてもらいたい。そして、引退後も、クラブ首脳としての席を用意するつもりだ。彼の才能や知識を失うわけにはいかないからね」

 さらにデインは、若手の発掘と育成に無類の才能を発揮するフランス人監督の手腕を賞賛する。

「無名の選手を発掘し、ワールドクラスに育てる能力には感服する。まず、ACミランの控え選手だったパトリック・ヴィエラを育てた。そして、なんと言っても、ティエリ・アンリだ。当時ウイングでプレーしていたアンリは、ユベントスで結果を残せず、ウディネーゼへレンタル移籍する予定だった。そんなアンリを獲得したアーセンは、彼にストライカーのポジションを与えて、クラブ史上最高の選手に育ててしまった。アーセナルに留まらず、サッカー界全体に多大な功績を残したといえるだろう」

 一方、当のベンゲルは「ウチには若い選手が揃っているし、私は彼らを育て続けたい」と、監督の座を離れるつもりはない。“サッカーの母国”で地位を確立した知将の偉業が振り返られるのは、まだ当分先の話になりそうだ。