婚活で成功する人は「お見合いの回数が少ない」ようなのですが、なかには300回近くお見合いして成婚した男性もいます(写真:Luce/PIXTA)

婚活において、一体何人と出会ったら結婚ができるのか。出会った人数が1桁で結婚できた人もいれば、200人、300人に出会っても、いまだに独身の人もいる。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、婚活に苦戦している人たち、スムーズに結婚した人たちの事例から、“婚活で結婚できる出会いの数”を考えてみたい。

望んでいるのは「普通の結婚」

たまえ(40歳、仮名)は、筆者の相談所で婚活を始めて1年になる。それ以前には婚活アプリでも婚活をしていて、婚活歴はトータルで3年。先日、付き合っていた男性、みきお(42歳、仮名)との交際を「終了したい」と連絡を入れてきた。

電話の声が涙声だった。

「もう疲れました。これまでに200人以上と会ったのに、結婚したいと思う相手がいなかった。婚活アプリで“いいな”と思う人は、結婚目的というよりも恋愛目的。恋愛の先に結婚を考えているから、なかなか話が進まなかった」

また、そう言う人に限って交際を何股もかけているので、自分よりもいい女性が現れれば振り落とされ、連絡が来なくなった。

「あと、初めて食事をした日に、体を触ってきたり、ホテルに誘ってきたり。ネットワークビジネスの勧誘や投資で儲ける副業話を持ちかけてくる人もいました。結婚を真剣に考えている人に早く出会いたかったから、アプリに見切りをつけて相談所を選んだのに、ここにも結婚相手はいなかった」

結婚相談所で出会ったのは、「異性として好きになれない人たち」が多かった。交際になっても、デートで食事をする店が決められず、「好きなところを決めてください」と丸投げしてくる。口を開けば、会社の愚痴、上司の愚痴、ネガティブな会話ばかり。

「どのくらい婚活しているんですか?」「何人に会いましたか?」と婚活歴をズケズケと聞いてくる。その日会ったことを日記のような長い文章で、毎晩LINEしてくる、などなど。

そんななかで、みきおは違っていた。行動力があって、連絡もマメだった。デートの日程も、こちらの予定を聞きながらどんどん決めてくれた。

「発言がすごく前向きだったんですね。“人生を切り開いていくのは、自分の力。思考によって、人生は大きく変わっていく”って。最初は、その前向きさがいいなと思っていたんですけど、あまりにもそうした発言が多いので、だんだんと“何かがおかしい”って、違和感を覚えるようになったんです」

3回目のデートを終えたときに、「今度、僕が行っている会に一緒に言ってみない?」と誘われたという。

自宅に帰って、誘われた会の名前をネットで検索してみた。それは、自己啓発を促すような団体のようだった。口コミを検索すると、悪いことばかりが書かれていた。

「前向きな彼の思考は、この団体に参加しているから、というのがわかったら、一気に気持ちが冷めてしまいました」

そして、続けた。「私は、普通の結婚がしたいのに、どうして普通の人がいないのでしょうか」。

4年間で280人以上と会った男性

ひろゆき(41歳、仮名)はバツイチの婚活者だった。筆者の相談所で4年半婚活をして、成婚していった。

男性に多いのが、婚活記録をつけている、というケースだ。ひろゆきの然りで、お見合いした日時、場所、女性の名前、お見合い結果、交際に至った場合はそれがいつ終了になったかをメモしていた。

4年半でお見合いした数は、280回を越えていた。

婚活苦戦者の傾向として多いのが、半年婚活して結果が出ないと、愚痴を言い始める、というもの。ところが、彼の場合は相手から断られても淡々と、次の見合いに向かっていた。

そして4年半の月日が過ぎたのだが、成婚が決まって退会のあいさつに来たときに、筆者はひろゆきに言った。

「この4年半、ひろゆきさんからは、婚活の愚痴を聞いたことがない。そこが素晴らしいと思いました」

すると、ひろゆきは笑顔でこう返してきた。

「結婚が決まらないのは、それが僕の実力なんだな、って。ただ、10人と結婚するわけではなくて、1人を見つければ良いと思っていたので、その人に出会えるまで頑張ろうと続けていました」

ひろゆきの場合は、4年半のうちに結婚を前提にした真剣交際に入った女性が2人いた。

1人はよしえ(36歳、仮名)で、真剣交際に入ったのと同時に彼女がコロナになり、会えない時期が続いた。とても神経質な女性で、コロナから回復しても1カ月はデートをしようとはせず、間が空いたことで彼女のテンションが下がり、交際が終了になった。

もう1人はゆうこ(34歳、仮名)で、真剣交際に入ったものの、彼女がなかなか結婚を決断しなかった。

相談所では、お付き合いに入ってから、3カ月で結果を出すのが望ましいという規約がある。しかし、お互いがもう少し付き合っていたいのならば、その限りではないので、ひろゆきは彼女の気持ちが固まるまで待っていたのだが、半年を過ぎたときに、彼から交際終了を出した。

こうした時間のロスもあり、結局は相談所に入会から退会まで4年半の時間が経ってしまったのだが、淡々と婚活を続けたことで最終的には、結婚することができた。

筆者の相談所に、初めて見合いした女性と結婚を決めた男性がいた。しかも、お見合いした日からプロポーズまでの日数は、たったの14日間。

4年前のことなのだが、今でも鮮明に覚えている。さとる(39歳、仮名)が3月半ばに入会してきた。初めてお見合いをしたのが、4月1日。相手は筆者の会員のさえ(36歳、仮名)だった。

お見合いしたときから、お互いにビビッと感じるものがあったようだ。交際に入ると10日間のうちに、四度デートをしたという。四度目のデートの後に、さとるが「さえさんに、プロポーズしたい」と筆者に言ってきた。

そのことをさえに伝えると、彼女も「受けます」と2つ返事だった。

さえは、すでに筆者の相談所で半年婚活をしていたのだが、「今まで出会ったなかで一番素敵な人です」と、さとると結婚する気持ちにブレがなかった。

そして、お見合いから14日後に某所でロマンチックなプロポーズ。さとるは、相談所にたった3週間在籍し、成婚退会していった。今では、2歳の子どもの親になっている。

この最短記録は、今のところ更新されていない。

成婚成功者のお見合い回数は?

いったい何人と出会ったら、婚活で結婚できるのか?

こんなデータがある。日本結婚相談所連盟が(IBJ)2022年に成婚している会員を年齢別、性別に分け、「成婚するまでに何回お見合いをしたか」を算出した。これはその平均回数だ。


これをみると、200回、300回とお見合いしても結婚できない人たちがいるなかで、結婚できた人たちの平均回数は、かなり少ない。

SNSが普及し、婚活アプリや結婚相談所が乱立し、スマホ1つあれば、お相手選びができるのが今の時代だ。相手が気に入らなければ即座にお断りを出し、どんどん新しい相手と出会ってしまう。そして、婚活に苦戦をする。それも、現状だろう。

その昔、親や親戚筋に勧められた人と有無を言わさず結婚させられたり、写真を交換することが即座に結婚につながったりした時代もあった。何百回お見合いしても結婚できない人がいるのは、SNS時代が産み出した弊害なのかもしれない。

では、結婚を決められる人、決められない人というのは、どこに違いがあるのか。

仲人の経験則で言うなら、決められる人は結婚という目的に執着している。女性の場合は出産年齢、男性の場合は仕事での立ち位置(転勤、昇格など)や父親になる年齢を考え、“いつまでに結婚したほうが良い”という具体的な時期を自ら設定している。そして、そこに向けて果敢に出会いを求めていく。

また、自分を相手によってうまく変化させていける人だ。それを、妥協ではなく順応だと捉えている人だろう。

結婚を決められない「本当の理由」

一方で決められない人というのは、結婚に対する考え方が漠然としている。ことに、親から勧められて結婚相談所に登録した人(男性に多い)は、「なんとなく入会」「ただ在籍」していて、婚活に本気で取り組んでいない。

こういうタイプは、お見合いから交際に入ったとしても、次のデートの日程をなかなか決めてこないし、連絡も滞りがちだ。結果、相手から“交際終了”を出される。

また、これは女性に多いのだが、結婚という目的より「自分が好きになれる人」「自分を理解してくれる人」と、自分の気持ちに注力して、婚活している。出産年齢のリミットが迫っていても、「誰とでもいいから、結婚したいわけではない」と言う。

もちろん、“結婚できれば誰でもいい”というわけではない。ただ、気持ちを優先して婚活をしている人というのは、自分が婚活の主人公なので、相手を見る目が厳しい。自分の中に相手を判断する物差しがあり、そこに合わない人は直ちに切り捨てていく。相手を受け入れる婚活ではなく、自分が選ぶ側の婚活をしている。

先日、200人以上の見合いをしてきた女性が、こんなことを言っていた。

「今振り返ってみれば、最初のほうでお断りした人に、いい人がいたなと思います。でも、婚活を始めたばかりで、婚活の厳しさもわかっていなかった。サイトには、たくさんの人が登録していたので、もっといい人がいるんじゃないかと思ってお断りしてしまったんですよね」


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結婚はゴールではなく、2人のスタート地点だ。自分の理想に叶う100点満点の人を選ぶよりも、50点でも60点でも、これから2人で関係を育てていける相手を選んでみたら良いのではないだろうか。

これから婚活を始める人は、先に記した“自分の年齢と成婚できた人のお見合い回数”を頭に入れて、お見合いをスタートしてほしい。

すでにもう何百人と会ってしまった人は、いったん気持ちをリセットして、“相手を選ぶ婚活”から、“相手に選ばれる婚活”に、考え方をシフトしみたらどうだろうか。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)