全体の約5%を占める秋号の増額銘柄は、その約半数がその後に再増額する(写真:JYPIX / PIXTA)

日経平均株価は33年ぶりの高値水準にあり、3万円台で値固めを続けている。視野に入るのは1989年最高値3万8915円の更新だ。『週刊東洋経済』の9月25日(月)発売号(9月30日号)では、活況に沸く株式市場の中で、「3万円時代に買える株」を特集。新NISA始動も目前であり、ランキングととともに、今から株式投資を始める超初心者向け記事も充実させた。


9月15日発売の『会社四季報』秋号は、次の3月期決算に向けて4分の1周しか走っていないタイミングで発刊される。だからこそ四季報記者の分析・予想には目を見張るものがある。予想を夏号とはガラッと変えるなど、思い切って書く内容には一読の価値があり、そういった銘柄に注目したい。

会社側の予想も注目のポイントだ。例えば、第1四半期に通期予想を上方修正した会社は、よほど自信があると考えられる。ちなみに、東洋経済集計の過去15年間のデータでは、3月期決算の会社のうち、第1四半期決算直前・同時に増額するのは全体の約5%。その約半分が第2四半期でも増額している。

企業の増額予想にも注目

秋号で増額した会社は、その後も伸びが期待できるということだ。ただ、コロナ禍でマスクが売れた、コロナ後の交通需要の戻りで業績が急回復したなど、背景はさまざまで、また会社ごとに違う。内容を吟味する必要はあるが、自ら上方修正した会社は秋号でチェックの対象になる。

例えば、ブルドックソースは上方修正をしているが、これは償却費を見直したことが主因で、株価はほぼ無反応だった。一方、インターホン業界トップのアイホンは、海外での在庫不足が解消され製品が出回るようになったことに伴い上方修正をしている。このため株価も大きく伸びた。デンソーも増額を発表したが、これは為替が円安にシフトし、自助努力ではない側面があり、株価の伸びもそこそこ。業務用食品の卸を手がける尾家産業はインバウンド需要の増加やPB商品の拡充、ヘルスケア事業の好調が増額の理由で、株価は急伸した。評価するとしたら、ブルドックソースは×、アイホンと尾家産業は〇、デンソーは△といったところ。増額の内容を深掘りすると第2四半期の増額を予想しやすい。

株価はPERと1株利益の掛け算(=PER×1株利益)で、1株利益が上方修正されれば株価も上昇する。1株利益がなぜ増えているのかを吟味することが肝心だ。経費削減だと限界はあるが、売り上げ増なら継続的な株価の上昇を推測できる。割安修正された株価は、利益確定売りによりいったん下落するが、再び増額となれば再上昇を開始する。秋号で増額銘柄を選別しておくと、第2四半期の再増額の波に乗りやすい。

現状は決算プレーが終わり材料が出尽くし、利益確定もあるので夏枯れ相場が続いていて、日経平均株価自体も横ばいの状態だ。よく見ると中には、面白い増額なのに、全体相場がよくないので織り込み切れていない銘柄もある。

ところが、秋以降に上方修正が公表されてくると、一気に取り戻す可能性がある。今から、そういった銘柄を見つけてほしい。

一方、会社側は予想を据え置いたままだが、先に述べたように四季報記者が独自に増額を予想し、秋号の発売と同時に株価が動意づくこともある。いわゆる「四季報銘柄」であり、こうした銘柄を探すのも面白い。

四季報が事前に独自予想したことで、第1四半期ではあえて見送ったが、第2四半期決算時に、これでもかというほど大幅上方修正を発表する会社もある。秋号発売後は株価に動きが見られなくても、このタイミングに向けて事前に仕込んでおくのも手だ。


2つの増額銘柄は狙い目

秋号で会社・四季報記者がともに増額を示したパターンも要注目だ。第1四半期の結果を受けて会社側が上方修正し、記者がさらに上乗せをした超強気の銘柄だ。かなりパフォーマンスがよい。

3月期決算会社で「上矢印(↑)」「ニコちゃんマーク」の両方がついている銘柄がこれに当たる。例えば、会社が期初100億円の営業利益予想を出し、第1四半期の段階で120億円に修正、四季報は秋号で150億円と予想した場合など。年間を通じて上昇が期待できる。昨年はヤクルト本社旭有機材がそうだった。

こうした銘柄は、たくさん見つかるわけではない。ただ、多くの読者も100銘柄欲しいわけではなく、2〜3銘柄あれば十分だろう。数ではなく、そういった銘柄をいかに探せるか、だ。だからこそ、先に挙げた2つのマークにも注目してほしい。会社が上方修正を発表したのが7〜8月で、秋号の発売は9月。こうした会社は、この間は言うまでもなく、その後も株価が上昇しやすい。成功の確度を高めるため、四季報で増額の根拠を確認しておくことも必要だ。

ちなみに旭有機材の株価は調整を入れつつも、今年の夏まで上昇を継続した。秋号では、企業や記者の予想を基に、こういった銘柄を見つけられるのが醍醐味だ。時間がない人もトライできるだろう。すぐ見つけるためにも、第1四半期の上方修正について、今から整理しておくとよい。

24年から始まる新NISA(少額投資非課税制度)に向け、株価上昇というキャピタルゲインだけではなく配当などのインカムゲインで安定的に利益を得たい投資家も増えるだろう。これにより、連続増配や、減配したことのない銘柄は注目度を増している。


株式分割銘柄に注目

個人投資家が買いやすくなるよう株式分割を実施する会社も増える。実際、NTTJR東海など多くの企業が実施している。四季報には最低購入額が記載されているが、値ガサ株は株式分割をするかもしれない。“株の民主化”が加速する中、個人投資家の資金が集まりやすい銘柄も面白い。

「政策に売り無し」という点で新NISAはもちろん、PBR1倍割れ企業、クラウドや半導体の国産化、生成AIといった息の長い国策に関連する銘柄も見ておきたい。

セクターでは外食産業が面白いと思う。インバウンド需要に加え、海外で躍進する会社が増えてきた。「宇奈とと」を展開するG-FACTORYや「一風堂」が柱の力の源ホールディングス、「すき家」で知られるゼンショーホールディングスなど、挙げると切りがない。円安も追い風だ。

(構成 ライター 大正谷正晴)


(山本 隆行 : 『会社四季報』元編集長)