マムシ〇口子 インタビュー後編(全2回)

 カーリング女子日本代表の藤澤五月選手が7月下旬に開かれたボディメイクコンテスト「MOLA CUP」(FWJ<Fitness World Japan>主催)でバキバキの筋肉美を披露し、世間を大きくにぎわせた。

 その肉体改造をサポートしたのが"謎のトレーナー"、マムシ〇口子(まむしまる・くちこ)さんだ。マムシ〇さんにインタビューを行ない、彼女の正体に迫った。


藤澤五月選手のトレーナーを務めたマムシ〇口子さん

【藤澤五月が"ファン"だった?】

ーー藤澤五月選手からインスタグラムで突然DM(ダイレクト・メッセージ)がありトレーナーになったということですが、その経緯について詳しく教えてください。

マムシ〇口子(以下同) ある日、インスタでさっちゃん(藤澤選手)本人らしきアカウントからフォローされて。でも、「まさかな。ファンアカウントだろう」くらいに思っていたんです。

 そうしたら、今年2月にそのアカウントから私に「北海道なんですがご指導いただけますか?」というDMがきたんですよ。

「さっちゃんと呼んでください」と言われたけど、DM上のやりとりだったからまだ本人だと思ってなかったんです。そして、2月末にオンラインで初顔合わせをしたら「あ、ホンモノだ!」と(笑)。

ーービックリですね。しかし、パーソナルトレーナーはたくさんいるなかで、なぜ面識のないマムシ〇さんに依頼があったんでしょうか?

 もともとさっちゃんはいろいろな筋トレ系のユーチューバーやインスタグラマーを見るのが好きだったらしく、私のユーチューブやインスタもずっと見ていてくれたみたいなんです。

 私も本格的にトレーニングを始めたのが2020年の頭くらいからで、その成長記録や2022年のコンテスト(「FWJ Beef Sasaki Japan Classic」161センチ未満の部)で優勝する様子なんかも追っかけてくれていたそうで。


7月に開かれたボディメイクコンテスト「MOLA CUP」に出場した藤澤五月選手をサポート

【劇団員から筋肉の道へ】

ーーマムシ〇さんは、競技用のトレーニング歴は約3年。それまでは何を?

 専門学校卒業後の21歳で「YORO's(よろず)」という演劇の事務所に入って活動していたんですが、私やまわりの女性劇団員が28歳くらいになった時に結婚やら就職やらでみんな劇団を離れ、私と社長だけが残るというなかば解散状態になったんです。

 それをきっかけに絵本の読み聞かせをするストリートパフォーマンスを始めたものの、すぐにコロナ禍となってしまい......。その流れで「YORO's」の看板でパーソナルトレーニング事業をスタートさせました。


本格的にトレーニングを始めた頃のマムシ〇さん 写真提供/マムシ〇口子

ーー本格的にトレーニングを開始する2020年以前から運動自体にはなじみがあったのですか?

 学生時代は全然です。ただ事務所に入ったら、社長は「人前に立って表現する以上、何かを達成したことがある人間でないとダメだ」という謎の精神論者で(笑)。

 舞台の稽古として2キロのタイムトライアルを6〜7本走ったり、6時間マラソンに劇団のみんなで出場したり......。そんな日々を送っていたので、運動自体は習慣化していました。

ーーそこからなぜフィットネスに目覚めた?

 インスタでボディメイクのコンテストがあることを知って興味をもったんです。バキバキの体ってパッと見て、一般の人にもスゴさが伝わりやすいじゃないですか。

 何かで一流になってみたかったという思いと、やめていった劇団員を見返したい気持ちもあって、本格的にトレーニングすることを決意したんです。

ーーそれと同じ時期にボディチェンジサポートの仕事も始めていますね。

 はい。でも当たり前ですけど最初はお客さんなんて全然来なかった。「サマー・スタイル・アワード」やFWJが主催する大会に出場して結果を出せるようになると、徐々に「どうしたらそんな体になれるんですか?」とか「成長記録を追いかけてきたので実際に会ってみたい」という方からの問い合わせがくるようになりました。


FWJの大会で優勝した経験があるマムシ〇さん

ーーそのひとりが藤澤選手だったと。現在、何人くらい指導しているんですか?

 オンラインでの食事サポートのみや月1回のトレーニングだけの方もいらっしゃいますが、すべて合わせると月20〜30人くらいですね。

【さっちゃんの逆三角形を見習いたい】

ーーマムシ〇さんの指導の強みは?

 継続してもらうことを重視してます。最初からコンテスト出場を目指している人は私が熱量を出してもそれに応えてくれるけど、初めてでどうなるかわからないとか、家庭があるけど自分を変えてみたいなどいろいろな方がいますので、一概に「ボディメイクとはこうだ!」と押しつけても無理が生じて3日坊主になってしまう。だから、どのくらい変わりたいのかというヒアリングはすごく大事にしています。

 それに私自身、スパルタ指導は向かないので、ふだんの生活の愚痴とか世間話を聞きながら、友達感覚でトレーニーに寄り添うことを心がけてます。


インタビュー後はいつものトレーニングに励んだ

ーーマムシ〇さんは指導者であると同時に、現役の競技者でもあります。自身の体の仕上がりはどうですか?

 昨年の「FWJ Beef Sasaki Japan Classic」で優勝した時は筋肉、肌の質感のカットや皮膚の薄さなどハードに仕上げることができたんですが、今年5月のFWJのプロクオリファイ(プロ資格を取得できる大会)ではコンディションが非常に悪かったのもあって、ファーストコールに呼ばれず(ビキニオープンクラスB・8位)......。

 次戦は今年か来年になると思います。今度はしっかりとコンディションを整えてのぞみたいです!

ーーどのあたりを意識して鍛えますか?

 私の場合は劇団員時代から習慣になっている有酸素トレーニングですね。有酸素運動は筋肉を減らすと思われがちですが、それは男性の場合で、女性はランニングや登山、ヒートトレーニングなどの有酸素トレーニングをすると筋肉の仕上がりがよくなると考えています。これが前回は少なかったと思うので、今回は大事にしたい。

 それと肩、背中、お尻の重厚感。さっちゃんもビシッとした逆三角形をつくっていたので、私も彼女を見習ってもっともっと筋肉を大きくしたいと思ってます!

ーーところで、「マムシ〇口子」とは変わった名前はどういう意図でつけられたんですか?

 社長が私の本名の松丸咲子をもじってつけてくれたんです。「マムシはなかなか噛んだら離さないから、しつこいお前にピッタリだ」って(笑)。

ーーボディメイクに対して、しつこく追求する姿勢はまぎれもなくマムシ級!

終わり

前編<藤澤五月のトレーナー・マムシ〇口子が明かすバキバキボディ化 カーリングが広背筋にいい影響>を読む

【プロフィール】
マムシ〇口子 まむしまる・くちこ 
フィットネストレーナー。専門学校卒業後、芸能プロダクション「YORO's(よろず)」に所属。劇団員、絵本読み聞かせのストリートパフォーマーとして活動したのち、2020年から本格的にトレーニングをスタート。「FWJ Beef Sasaki Japan Classic」161センチ未満の部で優勝。「MOLA CUP」で筋肉美を披露したカーリング日本代表の藤澤五月選手の筋力トレーニングをサポート。