ワンピース・オン・アイスで「サンジがサンジすぎる」話題の島田高志郎が作品への愛を語る
島田高志郎インタビュー『ワンピース・オン・アイス』
アニメ『ワンピース』がフィギュアスケートに! 史上初の試みであるアイスショー『ワンピース・オン・アイス〜エピソード・オブ・アラバスタ〜』横浜公演(8月11〜13日)は大きな反響を呼んだ。9月2〜3日の名古屋公演を前に、メインキャストのサンジ役を演じ、大の『ワンピース』ファンでもある島田高志郎にインタビューした。
『ワンピース・オン・アイス』でサンジ役を務める島田高志郎
ーー横浜公演では登場した瞬間に「サンジだ!」と思うくらいキャラクターそのものでした。「サンジがサンジすぎた」などというSNSの声もありましたが、周囲からの反響はいかがでしたか?
島田高志郎(以下同) すごくいい反応をいただいて、とにかくホッとしました(笑)。「見にきてよかった」というコメントも拝見しました。演出の金谷かほりさん、振り付けの宮本賢二さんのもとでみんながずっと頑張ってきた姿も見てきたので、いっそううれしいです。
ーーあらためて横浜公演が終わった今、本番前と終わったあとでは気持ちの変化はありましたか?
最初はもうみんな不安で不安で。がむしゃらに役づくりを頑張ってきたので、ゲネプロ(公開リハーサル)の時も本当にみんな緊張していて(笑)。「やばい! 始まる! やばい、やばい!」みたいな。本番前は、ふだんの競技ではしないような要素もこと細かに確認しながらやっていました。それくらい緊張していましたね。ささいなことでコケて雰囲気を壊したくないという思いを持って、かなり慎重に取り組んでいました。
初回の横浜公演が終わって、最後の記念撮影で麦わらの一味とビビ(本田真凜)やカルー(河野有香)が集まってポーズをとるんですけど、その時に浴びたことがないくらいの拍手をいただきました。作品に対する愛がやっとそこで認められたというか、肯定していただいた感じがして。その時の拍手がずっと脳裏によみがえっていましたし、また味わいたいなと思う大きな拍手でした。
ーー島田さんも相当の『ワンピース』ファンですが、お客さんの前でサンジ役を演じるのは緊張しましたか?
最初は怖かったです。でも、役づくりに対して妥協をしたら終わりだと思っていたので、リハーサル期間からずっとゾロ役の田中刑事くんやみんなと「細部までこだわりたいよね」と話していました。たとえば、自分以外のキャラクターが話している時に僕らはどういう反応をしたらいいんだろうとか、ゾロとサンジだったらここは反応をしないよね、とか話し合っていました。
ーーサンジになりきるために、どういう部分を一番意識していましたか?
最初は立ち姿ですね。そういったところからサンジじゃないとダメだと思って、腰を前に出す立ち方だったり、ちょっと姿勢を悪く立ったりということを鏡の前で確認したりしていました。なるべく解釈に誤差が生まれないように努めました。
ーーキャストのなかでも1、2を争う『ワンピース』好きだと伺っています。『ワンピース』のどんなところが好きですか?
いやぁ語り出したらちょっと時間が足りないんですけど(笑)。「前半の海」と「後半の海」で分けさせていただくと、前半ではただただルフィの冒険に連れて行ってもらっているような感覚。この島ではこういうことがあって、別の島ではこういうことがあって、とシリアスなストーリーから感動する話までたくさんあるなかで冒険の一部を見ている感覚でした。
後半では、麦わらの一味から広がる世界の動き方がすごく注目されていると思います。そこも目が離せないですし、毎週『(週刊少年)ジャンプ』を購読して追っています。『ジャンプ』と単行本は全部読んでいます!
「サンジすぎる」と好評を得ている photo by OPOI 2023
ーー好きなエピソードは?
難しいなぁ! やっぱりエニエス・ロビー編は心を動かされましたし、泣いたのはチョッパーとDr.ヒルルクの別れの冬島編やアラバスタ編。あと頂上戦争も。ガープがエースに「なぜわしの言うとおりに生きなんだ!!!」というシーンがめっちゃ好きで、泣いちゃいます。最近だと、コラソンさんとトラファルガー・ローの物語も大好き。
ーー今回のアイスショーでは本郷理華さんが演じるMr.2 ボン・クレーとのバトルシーンもありました。サンジの華麗な足技とスケートの融合を魅せるために気をつけていたことがあれば教えてください。
もちろん蹴り技に焦点をあてましたし、自分自身の技ではなくサンジだったらどう蹴るかなということを振り付けの宮本先生とたくさん話しました。ボン(・クレー)ちゃんが技を出している最中の動きは自分で「サンジだったらどういう反応をするかな」と考えながらやっていました。
全編とおしてシリアスな話ではあるんですけど、ボンちゃんとのシーンはちょっとおもしろいというか(笑)。ボンちゃんのキャラクターから生まれる戦いは原作の読者の方々もいいなと思っているところだと思うので、そこをおもしろく、カッコよく演じることをテーマにやっていました。
ーーサンジの「ここは見どころ」というシーンは?
スピードがあるなかでボンちゃんと足と足を合わせることは難しいんですけど、いざ交差するシーンを写真に撮ってもらった時、原作に近い動きを取り入れています。スケートでどうやってサンジ対ボン・クレーを表現しているか注目してほしいです。
サンジが「メロリン」状態になってクネクネするところも、コーザ役の友野一希くんと「腰から砕けたほうがよくない?」と言いながら追求したので、そこもぜひ注目していただければ(笑)。
ーー名古屋公演の見どころは?
ショー全体を見ていただきたいです。氷上で「砂」をどう表現するのかという演出もそうですし、陸では表現できない、スケートならではのよさを活かしてつくり上げられたもの。スケートだからこそ表現できる挑戦も詰め込まれているので、作品全体をとおしてアラバスタ編がどう仕上がっているのかをまずは見ていただきたいな、と。
氷上のバトルシーンは大迫力 photo by OPOI 2023
ルフィとクロコダイルのバトルシーンは細部までこだわってさまざまな要素が詰め込まれているなと、原作ファンとして毎回感動しています。
あと、最後の「仲間の印」シーン。僕らはうしろを向いているのでビビのスケートが見えないんですよね。感動したという声をよく聞くので、見ていただきたいですし、僕も見てみたいです(笑)。
また殺陣のシーンでは、国王軍と反乱軍の雄叫びは鳥肌がゾワッと立ってしまうくらいの迫力がありました。裏から出ていく時もめっちゃカッコいいんですよ。「うおお!」という感じで勢いよく出ていくし、全員ゼエハアと息を荒くして帰ってくるんです。殺気や勢いがあって。
コーザが反乱軍を引き連れて滑るシーンも「コーザってこんなカッコいいんや」と思うくらい迫力があるし、犯罪組織のバロックワークスの登場シーンも「大丈夫? 麦わらの一味勝てる?」って、嫉妬するくらいカッコいいです。
ーー今回のサンジ役を見て、フィギュアスケートに興味を持った『ワンピース』ファンの方もいらっしゃいます。最後に、『ワンピース』ファン、そしてスケートファンの皆さんにメッセージをお願いします。
本当ですか? そうだったらうれしいです。競技会では4回転ジャンプとか難しい技をやっているので失敗もありますし、表現の幅も制限されたり、されなかったり、いろんな面があります。
今回のアイスショーを見て、気になった選手がいればまずそこから、そしてちょっとずついろんな選手を見ていただいて、表現の仕方ってこんなに違うんだと思っていただけたらいいなと。この要素が好きだなとか、このポイントが好きだという自分の感情を大事にしていただいて、そこからどんどん沼にハマっていっていただければ(笑)。
これからシーズンが始まりいろんな大会も開催されるので、『ワンピース・オン・アイス』のあの役の選手が出るらしいよという感じでぜひチェックをしていただきたいです。
これだけショーに出ていると新シーズンの準備の時間がなくなっちゃうんじゃないかと心配される方もいると思いますが、出演している現役選手は誰ひとり練習をおろそかにしていないですし、試行錯誤しながら練習をしています!
9月2、3日には名古屋公演が開催される photo by OPOI 2023
【プロフィール】
島田高志郎 しまだ・こうしろう
2001年、愛媛県生まれ。早稲田大学在学中、木下グループ所属。2022−2023シーズンチャレンジャーシリーズ・ロンバルディア杯で2位、東京選手権で優勝。GPシリーズは、スケートアメリカ(9位)とイギリス大会(4位)に出場。全日本選手権でも2位の成績を残す。