夏の甲子園で輝いた2年生投手12人 来年ドラフトの目玉となるか?
慶應義塾(神奈川)の107年ぶりの優勝で幕を下ろした第105回全国高校野球選手権記念大会。今大会は「投低打高」と言われ、投手のドラフト候補は数えるほどだった。
だが、全国制覇の立役者になったエース・小宅雅己のように、2年生に好投手が目立った。そこで来年も甲子園を沸かせそうな有望な2年生投手を振り返ってみよう。
慶應を107年ぶりの優勝に導いた2年生エース・小宅雅己
今回紹介する2年生投手は「実戦型」と「ロマン型」の2タイプに大別できる。「実戦型」は現時点で投手としての形ができており、実戦での結果が見込めるタイプ。その代表格が優勝投手の小宅雅己だ。
身長178センチ、体重76キロと細身な体つきのスリークオーターで、最速145キロとずば抜けたスピードはない。変化球にしてもスライダー系の球種とチェンジアップのみで、多彩に操るわけでもない。
それでも、ストライクゾーンにボールをどんどん集めて、淡々とアウトを重ねていく。今夏の甲子園では28回を投げ、与えた四球はわずか2。土浦日大(茨城)との準決勝での完封勝利、仙台育英(宮城)との決勝戦での5イニングロングリリーフは鮮烈だった。防御率0.64と優勝に大きく貢献している。
慶應義塾は慶應義塾大に進学する部員がほとんどのため、小宅が来年のドラフト候補に挙がるとは考えにくい。それでも、大学で軒並みたくましさを増す投手が多いだけに、5年間をかけてどこまでスケールアップできるか楽しみだ。
小松龍一(花巻東/岩手)も実戦型右腕として印象深い。今春はリリーフとして最速147キロの快速球を押し出す投球スタイルだったが、先発登板が多かった今夏は一変。スライダー、カーブ、フォークなど精度の高い変化球を巧みに織り交ぜ、初戦の宇部鴻城(山口)戦では9回途中まで10奪三振の快投を見せた。
花巻東では「背番号17」は菊池雄星(ブルージェイズ)、大谷翔平(エンゼルス)、佐々木麟太郎も下級生時に背負った出世番号。その背番号17を背負った小松にかかる期待は大きい。球威がより一層アップできれば、来年のプロ入りは堅いだろう。
抜群の制球力を誇る広陵の高尾響
高尾響(広陵/広島)は2年生ながらすでに2回の甲子園を経験し、名門のエースにふさわしい貫禄を携えている。身長172センチ、体重73キロと上背こそないものの、最速147キロのストレートと変化球をコーナーに集めるコントロールがある。そして何より、勝負の際(きわ)でこそ研ぎ澄まされた集中力を発揮する勝負強さこそ、この投手の魅力だろう。
今夏の甲子園ではやや乗り切れず、3回戦の慶應義塾戦では10イニングを投げきったもののタイブレークの末に3対6で敗れた。この敗戦が高尾という投手をひと回り大きくさせる試練になるように思えてならない。
左腕では洗平比呂(八戸学院光星/青森)、田端竜也(九州国際大付/福岡)も来年の活躍が見込める実戦型だ。
洗平は最速147キロの触れ込みも、甲子園では終始130キロ台の球速に抑え、得意のスライダーを生かす投球を披露した。同じく最速148キロの2年生左腕・岡本琉奨との二枚看板で、今夏はベスト8に進出した。
田端は常時130キロ台と驚くようなスピードはないものの、クロスステップするフォームから急角度で食い込むスライダー系の球種が光る。今夏は初戦で土浦日大に0対3と敗れたものの、8回を投げ被安打4、奪三振8と実力を発揮した。
甲子園での登板機会は多くなかったものの、高木大希(履正社/大阪)、梅澤翔大(専大松戸/千葉)の両右腕もインパクトを残した。高木は自己最速を更新する147キロをマーク。低めに突き刺さるボールは、どの強打者もお手上げの好球質だった。梅澤はしっかりと胸を張る割れの形が印象的で、最速146キロの快速球を投げ込む本格派。ともに最上級生となる新チームでは、大黒柱として期待できる。
【スケール感あふれる5人の大型投手】一方、壮大なポテンシャルを秘める「ロマン型」の2年生投手も目立った。
十川奨己(立命館宇治/京都)は身長195センチ、体重87キロの超大型右腕。だが、投球フォームに大型投手特有のぎこちなさがなく、バランスよく大きな体を扱える。身長が止まった今後のトレーニング次第で、大化けする可能性は十分にある。
身長195センチの大型右腕、立命館宇治の十川奨己
今夏は初戦で神村学園(鹿児島)の強打線につかまり、7回途中、13安打6失点と苦い甲子園デビューになった。現時点での最速は139キロだが、あくまで通過点。フォークなど縦系の変化球を生かし、スケールの大きな投手へと期待がふくらむ。
同じく甲子園では力を発揮できなかった清水大暉(前橋商/群馬)も将来有望な大器だ。身長190センチ、体重82キロの大型右腕で、今夏の群馬大会では最速148キロをマークしている。佐々木朗希(ロッテ)を彷彿とさせるシルエットと豪快な足の上げ方で、ボールの角度と圧力は出色だ。
今夏の甲子園はクラーク記念国際(北北海道)との初戦でリリーフ登板したものの、守備の乱れもあって5失点。わずか2アウトしかとれずに降板した。今夏までリリーフだった役割も、新チームからエースとしての仕事が求められるはず。投手として総合力を身につけ、再び甲子園に戻ってくることができるか。
左腕では河野伸一朗(宮崎学園/宮崎)も希望がふくらむロマン型だった。身長189センチ、体重68キロの長身痩躯で、現時点での最速は140キロ止まり。リリース位置が高く、左腕を縦にスムーズに振れるフォームが特長で、右打者の内角低めに角度よく決まるストレートは惚れ惚れする。
甲子園では初戦で文星芸大付(栃木)に15安打を浴び、守備の乱れもあって7対9で逆転負け。それでも、顕在化されていない眠った能力を秘めながらもゲームメイクできる点は、高く評価されるべきだろう。
甲子園で3勝を挙げ、ベスト8に進出したおかやま山陽(岡山)には、三宅一誠、三浦尊神という大型右腕コンビがいる。三宅は身長183センチ、体重85キロと厚みのある体つきで、捕手の一塁側へと食い込む球筋が大きな武器。今夏の甲子園は全4試合に登板し、先発に中継ぎにフル回転した。
三浦は身長185センチ、体重77キロの投手らしい体格で、ボールの角度は一際目を惹く。今夏は三宅の好調ぶりもあって登板機会が限られたものの、今秋以降はプロスカウトの垂涎の的になっていくだろう。