ジョシュ・ホーキンソン(C/PF サンロッカーズ渋谷)インタビュー

2023年2月に帰化が認められ、晴れて男子日本代表のメンバー入りを果たしたジョシュ・ホーキンソン。208cmの高さで走れてシュートレンジが広く、加えてパスも巧み。何でもこなせる機転の利いたプレーこそがホーキンソンの強みで、日本代表加入後すぐに大黒柱となった。


帰化選手としての役割を踏まえW杯に向けての意気込みを語ったジョシュ・ホーキンソン

日本名の「鷹大」(タカヒロ)は、本人が名づけたもの。故郷のアメリカでは「Big Hawk(大きな鷹)」という愛称で呼ばれていたことから、「Big Hawk」を漢字(「Hawk=鷹:タカ」「Big=大:ヒロ)にして「鷹大」になったという。また、名字の「Hawkinson」からも取っており、すでにファンからは「タカちゃん」と呼ばれている。

このインタビューには通訳が入ったが、日本語の聞き取りはほぼOKで、短い受け答えならば日本語でやり取りができる。ただ、「自分の気持ちを詳しく表現したいので、英語で答えています」と話す。来日6年でかなり日本語は上達しており、通訳なしでインタビューに答える日も近いだろう。

7月の韓国遠征を前に股関節を痛めたが、8月15日からの強化試合で完全復帰。25日から始まるワールドカップ本番を前に、日本にとって欠かすことのできない大黒柱に意気込みを聞いた。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

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――今年2月のワールドカップ予選Window6から日本代表に加わりました。はじめて日本代表の試合に出た時は、どのような気持ちでしたか?

「2月に帰化申請が下りて日本のパスポートをもらい、無事にワールドカップ予選に出ることができました。それまでは、(2月の予選までに)手続きが間に合うかどうかギリギリまでわからなかったのですが、試合に間に合ってよかったです。最初に日本の国歌を聞いた時は、これまで自分が歩んできたことを思い出して込み上げてくるものがありました。これまで支えてくれた皆さんに感謝して、常に日本代表としての誇りを見せてベストを尽くします」

――ホーキンソン選手は日本代表に合流してすぐにトム・ホーバスHCのバスケにマッチしていました。ホーバスHCのバスケとは、どのようなスタイルだと表現しますか?

「ハイペースなトランジションのスタイルで、ボールをプッシュするバスケです。僕はそのトランジションについてけるスピードを持っているので、最初から最後まで走りきることができます。日本代表に合流して僕がすぐにチームにマッチできたのは、トムHCは選手それぞれの強みを生かしてくれるし、僕はトランジションで走るのが得意だからだと思います」

――帰化選手としてホーキンソン選手の役割は?

「帰化選手というのはチームにひとりしかない存在なので、その責任は大きいと感じています。日本の弱点はサイズとフィジカルの部分。そこが世界の強豪と比べて弱いところなので、自分がインサイドの相手を抑えなくてはならない。トムHCには、インサイドもアウトサイドもやってほしいと言われています。僕は3ポイントシュートもペイントアタックもドライブも得意としているし、速いペースで走れるので、そこの役割は求められているところです」

――ホーキンソン選手はパスがうまいので、インサイドで起点となってチームメイトを生かすことができるのも強みだと感じます。

「そうですね。僕は仲間にパスをすることも好きなので、それも強みになっています。ボールをもらったらガツガツと点を取りにいって個人で勝負するというよりは、どちらかというと、仲間にチャンスを作ってあげたい。ボールをプッシュして空いている人がいればキックアウトのパスをします。ボールのないところでの献身的な動きも僕の得意とするところです」

――3ポイントシュートを重要視するバスケは自身にマッチしていますか?

「マッチしています。(昨シーズンまで所属していた)信州ブレイブウォリアーズもBリーグのなかでは、3ポイントシュートを多く打つチームでした。ただ、信州はハイペースではなくて、しっかりと形を作って最後に3ポイントを打つチームでした。でも日本代表はハイペースで、トランジションのなかで3ポイントを多投していきます。打てるチャンスがあるのに打たなかったら、トムHCに指摘されます。日本代表と信州は3ポイントを打つところは似ているけど、バスケスタイルは違いますね。僕は『シュートを打って走る』というこの2つが好きなので、日本代表のハイペースなスタイルは楽しいです」

――八村塁選手が参戦しない状態では、ホーキンソン選手のインサイドの攻防が重要になります。インサイドではどのようにプレーしますか?

「八村塁選手はフィジカルが強くて他の国のインサイドと対等にプレーでき、なおかつアウトサイドでもプレーできます。日本にとっては唯一無二の存在なので、日本代表に参加しないのは残念だけど、その分は他の選手たちがステップアップできるチャンスだし、個々がステップアップすれば彼の穴は埋められると思うので、ネガティブには捉えていません。また、センターの渡邉飛勇選手をケガで失ってしまったことも、インサイドとしては非常に痛手ですが、インサイドのローテーションを見つけ出していきます。そんななかでは、自分がよりインサイドでプレーすることになるので、オフェンスでは相手のビッグマンをアウトサイドに引きずり出し、ディフェンスではオフェンスリバウンドを取られないように身体を張ってボックスアウトをしていきます」

――ホーキンソン選手は7月の韓国遠征直前から股関節を痛めていました。8月15日から始まった強化試合(アンゴラ、フランス、スロベニア戦)から復帰しましたが、コンディションはどうですか?

「コンディションはよくなっています。しばらくプレーしていなかったので、強化試合では自信を取り戻すことと、チームとのケミストリーを取り戻すことに重点を置きました」

――渡邊雄太選手とのインサイドのコンビプレーには手応えがありますか?

「彼が(8月15日)アンゴラ戦でケガをしてしまったので、一緒にプレーする時間はそれほど多くはなかったのが残念だけど、少しずつお互いのプレーを理解し始めています。今は彼が好きなことと、僕の好きなことを、どうチームプレーに融合させるかを試しているところで、どうやればうまくいくのかをつかみ始めているところです。2人で"ホットライン"を構築できれば、彼と僕の4番・5番コンビは相手にとって危険な存在になると思います」

――ワールドカップで日本が属するグループEは「死の組」とも呼ばれています。ドイツ、フィンランド、オーストラリアの印象は?

「どの国も世界のトップレベルであるNBA選手がいるので簡単な試合ではありません。でも僕たちがやるべきことは、相手をしっかりとスカウティングをして、彼らの弱みは何なのか、その弱みに対して自分たちの強みをどうぶつけていくかの研究をしていけば、チャンスは生まれてくると思っています。また僕自身はレベルの高いBリーグの外国籍選手とマッチアップをしているので、それがワールドカップで戦うための準備になっています」

――「ワールドカップ」にかける思いを聞かせてください。

「日本で開催するワールドカップで成功したい思いがあるので、チームみんなでひとつになっています。僕がBリーグでプレーするようになって6年が経ちますが、そこから日本のレベルも人気もどんどん上がっています。特に今回のワールドカップは日本でも開催するので、沖縄には多くのファンが応援にきてくれると思うし、世界の人たちに、日本のバスケが戦えるところを見せたいです。日本のファンの方には、僕らがひとつになった姿を見てほしい。僕らの戦う姿勢を見て、皆さんが感じ取ることがあったら幸せです」

――最後にワールドカップでの目標は?

「アジアでナンバーワンのチームになること。日本がアジアでナンバーワンになって、パリ・オリンピックに出ることが目標です。ワールドカップで戦うのがとても楽しみです」

Profile
ジョシュ・ホーキンソン
1995年6月23日生まれ、アメリカ合衆国出身。
ワシントン州立大学卒業後に来日し、ファイティングイーグルス名古屋に入団。2020年に信州ブレイブウォリアーズに移籍をしたが、今年6月には渋谷サンロッカーズへの移籍が発表された。日本代表としては、今年の2月に帰化し、23日のイラン戦で男子日本代表デビューを果たした。ポジション=センター、パワーフォワード。身長208cm、体重106kg