ソフトバンクが多額の投資をしたコワーキングスペースのWeWorkが破産の可能性について警告、「継続能力に重大な疑問」があると認める
by Phillip Pessar
ソフトバンクグループが膨大な出資を行ってきたコワーキングスペース大手のWeWorkが、2023年8月8日にアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で、「企業として事業を継続する能力」に疑問があると報告しました。
WeWork warns of remaining 'going concern' and says bankruptcy possible
Once worth $47 billion, WeWork shares near zero after bankruptcy warning | Reuters
https://jp.reuters.com/article/wework-going-concern-idCAKBN2ZJ1OB
2010年に創業されたWeWorkは、世界各国で物理的なコワーキングスペースを提供する企業であり、ソフトバンクなどから多額の出資を受けて大きな成長を遂げました。2019年には企業価値が470億ドル(当時のレートで約5兆3000億円)に達し、同年に鳴り物入りで新規株式公開(IPO)を行う予定でした。
ところが、IPOに関するSECへの提出書類から事業内容の稚拙さが発覚し、創業者であるアダム・ニューマン氏の言動が問題視されたこともあり、最終的にニューマン氏はCEOを退いて2019年のIPOも断念されることとなりました。
資金調達に失敗して大炎上の末CEOが辞任したWeWorkが正式に上場申請を撤回 - GIGAZINE
その後も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるリモートワークの増加や世界的な景気減退も相まって、WeWorkの事業は低迷を続けています。2021年には念願の上場を果たしたものの、評価額は以前より大幅に低い90億ドル(当時のレートで約1兆円)にとどまりました。
上場時の株価は1株9.82ドル(当時のレートで約1100円)でしたが、30億ドル(約4300億円)超の債務編成を巡って投資家と協議していると報じられた2023年3月以降は1株が1ドル(約144円)を下回るようになり、記事作成時点の株価はなんと0.13セント(約19円)となっています。
ソフトバンクグループはWeWorkに総額数兆円に上る出資を行っており、記事作成時点では筆頭株主となっています。代表取締役を務める孫正義氏は6月の株主総会でWeWorkへの投資について質問され、「僕の責任」「私の人生の汚点」と語っています。
孫正義氏、「私の人生の汚点」とWeWork投資失敗を認める | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15451/
そんな中、WeWorkは8月8日にSECへ提出した書類の中で、「営業活動による損失とマイナスのキャッシュフローは、継続企業としての能力に疑問を投げかけています」「流動性ポジションおよび事業の収益性改善に成功しなかった場合、当社は債務の再編または借り換え、追加の負債または株式資本の調達、事業活動および戦略的イニシアチブの縮小または延期、資産の売却、その他の戦略的取引、またはアメリカ破産法に基づく救済を含むその他の措置など、あらゆる戦略的選択肢を検討する必要に迫られる可能性があります」と述べ、会社が破産する可能性があると警告しました。
近年のWeWorkは経営の改善に努めており、2023年度第2四半期の純損失は前年同期の5億5700万ドル(約800億円)から3億4900万ドル(約500億円)に減りましたが、それでも2023年度上半期だけで6億4600万ドル(約930億円)の現金を失ったとのこと。
また、ソフトバンクグループからの出資が減っていることやメンバーの退職も問題となっており、5月にはCEOを務めていたサンディープ・マスラニ氏が辞任したほか、8月には3人の取締役員が「取締役会のガバナンスと会社の戦略的および戦術的方向性に関する重大な意見の不一致」を理由に辞任したと報じられています。