身の丈に合わないDIYは、家族をがっかりさせるだけでなく、余計な出費につながります。ここで紹介する、DIYでウッドデッキをつくろうとした例は、まさに典型的な失敗例。計画を途中で断念、タイルをただ地面に並べるという結果に。しかも、その仕上がりすらも最悪で、置いたテーブルはグラグラ…。結局、業者がつくり直すことになりました。どうすればよかったかという、一級建築士によるアドバイスも参考に。

息子の期待を背負い、夫がウッドデッキづくりにチャレンジ!

「家をつくるなら、バーベキューができるようにウッドデッキを1階のLDKにつなげたい」と、話していたAさん夫妻。当初の計画では、家と一緒にウッドデッキもつくってもらう予定だったそう。

ところが家づくりを機に、DIYに興味を持った夫が「自分でつくる」と一念発起。目指したのは、LDKと段差なくつながる6畳サイズ。やる気のみなぎる夫の横で、幼い息子は目を輝かせていたそうです。

 

DIYが進まず中途半端な仕上がりに。結局、業者に依頼することに

家が竣工して、夫はDIYの工具や材料を購入。早速、地面に束石(つかいし)を並べ、基礎づくりを始めました。

丸1日かけて約半分を終えたそうですが、その後夫の仕事が忙しくなり、数か月たっても進展せず。やがて、地面には草が生え、妻や息子は草取りに汗を流すハメになりました。

そこで夫は計画を変更。「ウッドデッキよりも簡単そうだったので、束石を外して大判タイルをじかに敷きました。窓の下には市販の踏み台を置いて、LDKとの移動もラクに」。

 

予定とは異なりましたが、これで夫のDIYはひと段落。家族で念願のバーベキューを楽しんだそう。しかし…。

「夫には申し訳ないけれど、水平器を使ってタイルを並べたわりには、テーブルがグラグラ。踏み台も不便…。結局、業者がウッドデッキをつくることに。夫のがんばりやムダになった材料費を思うと残念です」(妻)

「本格的なDIYは初めてなのに、なんとも無謀な計画でした」と、夫は平身低頭するばかり。

DIYは自己満足ではなく、家族のためにできる範囲で

DIY自体が初めての経験だったというAさんには、ウッドデッキをDIYでつくるというのは無謀だったよう。

では、わが家でDIYを楽しみたい、思い出をつくりたいと思っているのなら、どういう方法があったのでしょうか。一級建築士・大島健二さんが詳しく解説してくれました。

 

●一級建築士・大島さんのアドバイス

住宅が商品のように扱われるようになった今、自分でできることは自分でやる、というDIYの考え方自体は、大いに尊重されるべきです。

ひとり暮らしでDIY自体を自己満足で楽しみたいというのなら、いくら時間がかかっても構いません。しかし、一緒に住む家族が満足できないレベルの腕前なら、コストがかかっても専門業者さんに頼むべきでしょう。

 

今回の場合では、「住み始めたらすぐに庭でバーベキュー」したかったのだと思います、それが家族の願いですから。自己満足でなく家族を巻き込んでDIYしたければ、ウッドデッキの完成までは業者に依頼。

たとえば、仕上げの部分でペンキ1缶で塗れる範囲内の塗装をするという程度でもよかったのでは。もしくは、子どもたちでもできる容易なDIYで思い出づくり、といったあたりにとどめておくべきだったでしょう。

それでも自身のDIY欲を満たしたい場合は、家族に迷惑をかけない範囲内でこっそりとする必要があります。

●教えてくれた人:大島健二さん
一級建築士。OCM一級建築士事務所主宰。住宅から商業施設まで、和・洋・中の概念を超えたデザイン性の高い空間を提案している。『家づくり解剖図鑑』『建てずに死ねるか!建築家住宅』『下町の名建築さんぽ』など著書も多い