家づくりの際の窓選びは大事。断熱や遮熱といった暮らしの質の向上に大きく関わります。防犯、防火&防災の性能も見逃せません。リノベーション事業に携わるスタイル工房の鈴木ゆり子さんと編集部が、窓について解説。知ってから家を建てないと、住んでから後悔するかもしれませんよ!

窓に求められる代表的な役割や性能は9つある

1.断熱・遮熱

屋内外の熱の伝わりを抑える断熱性能は重要です。ガラスの性能や、ガラス同士にはさまれた中空層に封入するガスの種類、サッシの素材で窓の性能は異なります。

部屋に日差しを多く取り入れたい場合は、高断熱性能タイプを。断熱しつつ、日差しをほどよく室内に取り込みます。一方、西日が入りすぎる部屋は、遮熱性能に優れたタイプを選びましょう。断熱しつつ、強い日差しや日射熱をさえぎってくれます。

 

2.視認

窓の役割には、外の気配を室内に伝えることや、室内の様子を外に伝えないこと(視認性)があります。

視認性はガラスの種類で異なります。視認性があるのは透明ガラス。次に型ガラス(表面に型模様をつけたもの)。視認性がないのがすりガラス(表面に細かい凹凸をつけたもの)です。

光を適度に取り入れつつ、外から丸見えにしたくない場合はすりガラスがいいでしょう。高窓も効果的です。

 

3.採光・眺望

建築基準法の定めにより、居室には床面積の7分の1以上の採光が必要になります。

採光は眺望に結びつく要素なので、窓の大きさや位置は、採光と眺望をあわせて考えたいものです。

 

4.通風

自然の力で通風を促せば、快適さが高まります。

壁の2面を使って異なる高さに窓を取りつけると、自然の力で風が通ります。南北に風が吹くので基本的には、南側を大きく、北側を小さく確保しましょう。

 

5.出入り

出入りの頻度によって窓選びは変わります。たとえば、内窓を検討する場合は窓が二重になるため、出入りが多い箇所には採用しません。

まったく出入りしない窓は、開閉できないフィックス窓にすることも。

 

6.防犯

家族の暮らしを守るうえで、気をつけたいのが防犯です。

割られにくいよう加工された防犯ガラスや面格子などの採用を検討しましょう。高窓など、侵入者が入りにくい大きさや位置も効果的です。

 

7.防火・防災

防火地域では、建築基準法によって防火性能が必須です。地震や台風などの災害に対しては、強い衝撃や風でものがあたっても、ガラスの破片が飛散しないように配慮された防災ガラスなどがあります。

 

8.デザイン

窓の形や位置、大きさによっては、内観や外観の印象に影響を与えます。たとえば、左右に開閉する引き違い窓ではなく、フィックス窓と縦すべり出し窓を組み合わせると、スマートなデザインになります。

 

9.清掃

美しさを保つためには、窓掃除のしやすさもポイント。ロックを解除すれば、ガラスの両面がふきやすいすべり出し窓などがあります。ほかにも、汚れがたまりにくいように工夫されたものも。

 

窓ガラスの種類。断熱性能に大きな違いが

窓を構成するガラスは、時代とともに進化しています。最近は、ガラスが2枚か3枚で構成されていて、ガラスとガラスの間にある中空層には、アルゴンガスなどが封入されたものが多いです。

さらに室内側のガラスに特殊なLow-E膜をコーティングした、高断熱仕様のLow-E複層ガラスやLow-Eトリプルガラスなどがあります。どのガラスも中空層に乾燥空気やガスが封入されていて、その種類によって断熱性能が異なります。

空気よりも熱が伝わりにくいのがアルゴンガス。それ以上に熱が伝わりにくいのがクリプトンガスです。ほかにも中空層が真空状態のガラスもあります。

サッシの種類。質感や風合いにこだわって!

ガラスを支えるサッシには、アルミ樹脂複合サッシ、樹脂サッシ、木製サッシなどがあります。

アルミ樹脂複合サッシは、異なる素材の特徴を生かしてつくられたもの。屋外側は軽量で耐久性能に優れたアルミ、屋内側は断熱性能に優れた樹脂を用いています。樹脂サッシは、熱伝導率の低い塩化ビニール樹脂を、おもな材料にしてつくられています。

木製サッシは、木ならではの断熱性能を生かしたもの。性能もさることながら、木の質感や風合いが魅力です。

「木製サッシを使った事例がありましたが、熱貫流率が低く、性能的にもとても優秀でした」(鈴木さん)

 

代表的な窓の形状

ガラスやサッシで構成される窓は、開閉の有無や開き方によってさまざまな種類があります。

また、位置によって呼称がついている窓も。たとえば、壁の高い位置に配した窓は高窓、床に接した背の低い窓は地窓と呼ばれます。ほかにも、床から立ち上がり、人が出入りできる引き違い窓は掃き出し窓と呼ばれます。

 

引き違い窓は、左右にスライドさせて開閉。通風量が調整しやすいのが利点。折りたたみ窓は、左右に引き分けて折りたたみ、開口幅いっぱいにフルオープン可能。

 

(左から)片上げ下げ窓は、上の障子は固定された状態で、下の部分が上下にスライドするタイプ。縦すべり出し窓は、左右どちらかを軸に、外側に開くタイプ。角度によって通風量を調節できます。

横すべり出し窓は、上の枠に沿って、外側に向かってスライドさせて開くタイプ。フィックス窓は、開閉しない窓で、採光や眺望に使用。スクエアなど形状はさまざま。

天窓(トップライト)は、屋根に取りつける窓。開くタイプやフィックスタイプなどがあります。