「外陰部掻痒症」の症状・原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!
外陰部搔痒症とは、外陰部から肛門の範囲にかゆみを生じさせる症状の総称です。年齢に関わらず全ての女性に発症の可能性があります。
外陰部搔痒症は発症の原因も治療方法も様々です。外陰部の激しいかゆみはカンジダ菌感染、慢性的なかゆみや不快感は閉経の影響などが考えられます。
発症する部位がデリケートなため、病院の受診に抵抗を感じる方もいるでしょう。
今回は外陰部搔痒症の症状・原因・治療方法・予防方法について詳しく解説します。
外陰部掻痒症の症状や原因
外陰部掻痒症の症状を教えてください。
外陰部搔痒症の症状には強いかゆみ・痛痒さ・慢性的なかゆみ・不快感といった症状があります。外陰部掻痒症とは外陰部から肛門にかけてかゆくなる症状の総称です。かゆみに伴い患部が赤くなる場合や、腫れ上がる場合もあります。
患部を強く搔いてしまうと、さらにかゆみが強くなったり化膿したりします。女性の外陰部はデリケートで慎重な扱いが必要です。
かゆくても触らないようにしましょう。外陰部にかゆみを感じたら早めに婦人科を受診してください。
外陰部掻痒症の原因はなんですか?
外陰部搔痒症の主な原因として、かぶれ・外陰部の乾燥・感染症などが挙げられます。かぶれは下着による締め付けや外陰部の蒸れ、生理用ナプキンやおりものシートとの接触などから生じます。
外陰部の乾燥は閉経後の女性に多い原因です。閉経すると外陰部周辺の粘膜が乾燥しやすくなります。この乾燥から慢性的なかゆみや不快感が生じます。
感染症はウイルス・細菌・真菌への感染で発症する疾患です。主な感染症には、性器カンジダ症・腟トリコモナス症・性器ヘルペスなどがあります。
外陰部掻痒症でかゆくなる部位はどこですか?
外陰部搔痒症では、外陰部の一部や全体・肛門がかゆくなります。外陰部だけでなく腟内にもかゆみがある場合は感染症が疑われます。感染症の放置はハイリスクな行為です。腟トリコモナス症は悪化すると、不妊症・早産・流産につながるリスクがあります。
こうしたリスクの回避には早めの婦人科受診が必要です。
外陰部掻痒症の検査や治療方法
外陰部掻痒症は何科を受診すればよいですか?
外陰部搔痒症は婦人科を受診してください。婦人科の受診では、2つの注意点があります。1つ目は問診票の記入です。できるだけ正確に記入してください。問診票には、出産・妊娠歴などのデリケートな項目があり、記入をためらう方も多いです。性交渉パートナーの有無といった項目もあります。これらは非常に個人的な事柄への問診ですが、適切な治療を行うための重要な問診です。
2つ目は服装です。外陰部搔痒症の診察では下半身の下着を脱ぐ必要があります。脱着しやすく、自分でも抵抗感が少ない服装で受診してください。初めて婦人科を受診する方には、裾が広いスカートの着用をおすすめします。
どのような検査が行われるか教えてください。
外陰部搔痒症の検査は医師による問診から始まります。問診は発症の部位・時期・期間・かゆみの程度などの詳しい情報を得るのが目的です。急に発症したかゆみは感染症が疑われ、慢性的なかゆみは皮膚炎やかぶれが疑われます。
次は診察台での患部の検査です。婦人科の診察台は患者が仰臥(ぎょうが)しながら開脚できる形状になっています。怖いと思う方も多いのですが、診察や検査に適した形状なので我慢が必要です。
検査では患部の触診や、おりもの・皮膚組織の採取を行います。その後、おりものや皮膚組織から原因菌やウイルスを特定します。
外陰部掻痒症の治療方法を教えてください。
外陰部搔痒症の治療方法は、かゆみの原因により異なります。かぶれが原因のかゆみは、外用薬での治療です。軽いかゆみでは非刺激性の皮膚保湿剤を、強いかゆみにはステロイド外用薬を患部に塗布します。
閉経による乾燥が原因のかゆみには、保湿剤や潤滑ゼリーや、女性ホルモンの腟内投与が行われます。
感染症が原因のかゆみは、原因菌に合わせた経口薬の服用と外用薬の患部への塗布で治療します。性器カンジダ症の場合は、通院しての腟内洗浄と腟錠の腟円蓋部への挿入も必要です。腟トリコモナス症では原則として性交渉のパートナーにも同様の治療を行います。
どのような薬が使用されますか?
外陰部搔痒症で使用される薬は、治療方法と同様に原因により異なります。原因ごとの主な使用薬は以下の通りです。かぶれ:皮膚保湿剤・非ステロイド抗炎症外用薬・ステロイド外用薬
閉経による乾燥:保湿剤・潤滑ゼリー・エストロゲン
性器カンジダ症(感染症):抗真菌薬
腟トリコモナス症(感染症):メトロニダゾール・チニダゾール
性器ヘルペス(感染症):アシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビル
かぶれでは、かゆみの程度で薬を使い分けます。軽度は皮膚保湿剤や非ステロイド抗炎症外用薬、中度以上はステロイド外用薬です。
外陰部掻痒症のセルフケアや予防方法
外陰部掻痒症は市販薬で治療できますか?
外陰部搔痒症は市販薬で症状が軽減する場合もありますが、あまりおすすめできません。かゆみの原因が感染症であれば、原因菌に合う薬の服用や塗布が必要です。市販のデリケートゾーンのかゆみ止めや抗菌薬では完治が難しく、一時的に症状が治まっても再発する可能性が高いです。塗布タイプの市販薬が肌に合わず、症状をさらに悪化させる場合もあります。
外陰部搔痒症の症状が出た場合は、まず婦人科を受診してください。やむを得ず市販薬を使用する場合は、必ず薬剤師に相談し十分に注意しながら使用してください。
普段の生活で注意するべきことはありますか?
日本人はきれい好きで、洗浄力の強い石鹸やボディソープで体を洗いすぎる傾向があります。入浴の際に外陰部を洗いすぎないよう注意してください。人の体に備わる常在菌には感染症を防ぐ役目があります。洗いすぎによる常在菌の減少は、外陰部搔痒症の原因菌に対する防御力の低下を意味します。
免疫力の低下も防御力の低下です。バランスのよい食事と十分な休養・睡眠で免疫力を上げましょう。
性交渉は「感染しない・させない」が原則です。挿入時にはコンドームの使用をおすすめします。
外陰部掻痒症を予防する方法はありますか?
外陰部搔痒症の予防で重要なポイントは、「洗いすぎない」「締め付けない」「蒸らさない」「定期的な婦人科健診」の4点です。1つ目の「洗いすぎない」は前の章で解説しました。2つ目の「締め付けない」は、下着による締め付けが外陰部のかぶれの原因になりやすいためです。サイズの合う下着を着用してください。敏感肌の方にはシームレスの下着がおすすめです。
3つ目の「蒸らさない」は、蒸れると摩擦によるかぶれを悪化させやすいためです。通気性と肌触りのよい下着を着用しましょう。
4つ目の「定期的な婦人科健診」は、外陰部搔痒症だけでなく、女性特有の病気の予防と早期発見につながります。ぜひ定期的な婦人科健診を受けてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
外陰部搔痒症は、思春期の少女から後期高齢者まで年齢に関わらず全ての女性に発症します。発症から1週間程度すぎても、かゆみが治まらない場合は婦人科を受診してください。また激しいかゆみの場合は、可及的速やかな受診が必要です。放置すると最悪の場合、不妊症・早産・流産を招く可能性があります。
婦人科の受診には抵抗がある方も多いでしょう。特に若い女性や少女にとって、婦人科の受診はハードルが高く勇気が必要です。
不安を感じる方は、信頼できる年上の女性に付き添いをお願いしましょう。不安が和らぎ勇気が出ます。
編集部まとめ
外陰部搔痒症は女性なら誰でも発症する可能性があります。原因は、かぶれ・外陰部の乾燥・感染症です。
治療方法と治療薬が原因によって異なるため、婦人科で検査と治療を受けるのが最善の対処です。
やむを得ず市販薬を使用する場合は、薬剤師と相談し十分に注意して使用してください。使用を始めて1週間経っても症状に改善がなければ、使用をやめて婦人科を受診しましょう。
どのような病気も早期発見・早期治療が大切です。婦人科健診は外陰部搔痒症の予防に役立つだけでなく、女性特有の病気を早期発見するチャンスと考えてください。
参考文献
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020
性器ヘルペスウイルス感染症とは(国立感染症研究所)