トンガ火山噴火後に観測されたプラズマバブルの発生メカニズム(画像: 名古屋大学の発表資料より (c) ERG science team)

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 2022年1月15日に発生した南太平洋トンガ沖海底火山大噴火は、噴煙の高さが57kmにも及んだ。当初日本への津波の影響はないと報じられていたが、予想が覆えり、日本各地で最大1mを超える高さの津波が観測された。この津波で当初予測が外れた理由は、地震による津波とは発生メカニズムが異なり、火山噴火に伴う気圧波が津波原因であったためだ。

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 名古屋大学は23日、この大噴火が宇宙空間にも影響を及ぼしていたことが分かったと発表した。全球測位衛星システム「GNSS」、気象衛星ひまわり、ジオスペース探査衛星「あらせ」、電離圏観測機器などの観測データを用いて、トンガ沖海底火山噴火に関する詳細な解析を実施。通常より1〜2桁程度電子密度が急減する電離圏の穴が、日本上空で多数確認され、これらの穴は2,000km上空の宇宙空間にまで拡散していたことが判明したという。

 電離圏とは、高度60〜1000kmの超高層大気中において、分子や原子が、紫外線やエックス線で電離した領域を指し、短波帯の伝播に影響を及ぼすとされる。今回の研究では、電離圏での穴の形成が、電離圏の高度上昇が原因で、火山噴火による気圧波到来よりも約1〜2時間前に起こっていたことも判明した。

 電離圏の穴は通常は赤道電離層で観察される現象で、赤道プラズマバブルとも呼ばれ、日本のような緯度の地域で観測されるのは非常に珍しい。今回の事象により、火山噴火では津波を引き起こす気圧波の影響だけでなく、衛星通信などに悪影響を及ぼすプラズマバブルの発生にも注意を払っていく必要があることが明らかとなった。

 気圧波の伝播速度よりもプラズマバブルの伝播速度は約480〜540m/sとはるかに速く、津波よりも短時間で地球のかなり広い領域に拡散し、ひいては高度2,000kmの宇宙空間にまで悪影響を及ぼすのだ。我々日本人としては、トンガの教訓が近い将来起こるとされる富士山大噴火等にも活かされ、被害が最小限に食い止められることを祈るばかりだ。