本命なき戦いの皐月賞は「前で立ち回れる馬」「重馬場も苦にしない馬」が高配当を演出する
牡馬クラシック第1弾のGI皐月賞(中山・芝2000m)が4月16日に行なわれる。
過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は3勝、2着1回、3着2回。比較的波乱の多い一戦と言える。しかも、荒れる時はとことん荒れる。2017年には3連単で100万円超えの高額配当が飛び出して、翌2018年にも3連単で30万円超えの高配当が生まれている。
そして今年も、3歳牡馬戦線は大混戦。2歳GIを制した2頭が不在で、重賞2勝馬もおらず、波乱ムードが充満している。
確たる中心馬がいないなか、ソールオリエンス(牡3歳)やフリームファクシ(牡3歳)、ファントムシーフ(牡3歳)らが押し出されるような形で上位人気になりそうな状況。人気の盲点となる実力馬が勝ち負けを演じれば、高配当が飛び出してもおかしくないが、デイリー馬三郎の木村拓人記者はどう見ているのだろうか。
「自分は、今年の皐月賞は"混戦"ではなく、ファントムシーフの"1強"だと思っているんですけどね。
それはいいとして、今週末は雨が降る予報ですので、馬場は悪化して力が要る感じになるのではないかと。そうなると、跳びがきれいで弾むように走るソールオリエンスは、正直いいとは思えません。また、ダノンタッチダウン(牡3歳)はまだ緩さの残る体つきだけに、タフな馬場になるとどうか? と感じます。
一方、フリームファクシはGIを勝ちきるための"キレ"といったものが足りないと思うので、むしろ時計がかかる馬場は歓迎のような気がします。それでもし、実際にここで好走するようなら、ダービーでも人気すると思うので、そこで思いきって嫌ってみてもいいかもしれません」
いずれにせよ、ファントムシーフを「中心視している」という木村記者。馬券的な妙味から、その相手として面白いと思っている存在はいるのだろうか。
「人気を落としそうなところでは、トップナイフ(牡3歳)ですね。前走のGII弥生賞(3月5日/中山・芝2000m)も直線で狭くなるところがありながら、2着を確保しました。
また、勝ったタスティエーラ(牡3歳)はGIII共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)を1回使ってきた分、状態が上がっていましたが、対してトップナイフは年末のGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)以来の競馬。仕上がりも、そこまでビッシリではありませんでした。
そういう意味では、弥生賞を使ったことで、今回はさらに状態が上がっていると思います。馬場も、雨馬場のほうがいいタイプです。
GIホープフルSでもハナ差の2着と奮闘したトップナイフ(写真左、青帽)
あと、ホープフルS(の2着好走)はうまくペースを作ったから、というのは間違いないのですが、逆に言えば、そういう立ち回りができるのも強み。今回もおそらくグラニット(牡3歳)が積極的に行って、そのあとを単騎逃げのような形で行けるのもいいと思います」
続いて木村記者は、新種牡馬マインドユアビスケッツの産駒に注目する。
「ホウオウビスケッツ(牡3歳)です。6月生まれの(2歳)12月デビューで、一回一回レースを重ねるごとに、すごくよくなっている印象があります。
前走のGIIスプリングS(3月19日/中山・芝1800m)は、好位につけていい形で競馬ができたこともありますが、重賞で2着になるのは力があってこそ。課題だった気性面もクリアできていました。
2000mという距離は、1勝クラスのフリージア賞(2月18日/東京・芝2000m)で勝っているとはいえ、ギリギリかなと。マインドユアビスケッツ産駒は、前向きな子どもが多くて、若干折り合いに苦労する馬が多いですから、距離が延びてプラスになるというタイプではありません。
それでも、スプリングSも後半のラップが優秀で、身体能力はすごく高い。遅生まれというディスアドバンテージを感じさせないほど、ここまで順調にきています。パワー型の父、そして母父ルーラーシップも渋った馬場は大歓迎でしたから、そこは苦にせず上位争いに加わってくるのではないでしょうか」
木村記者はもう1頭、気になる馬がいるという。
「グリューネグリーン(牡3歳)です。ここまで人気薄なら、もし状態が上昇してきていれば、面白い存在になるのでは? と考えています。
GIII京都2歳S(11月26日/阪神・芝2000m)を勝った時のように、積極的に行ったほうがこの馬の持ち味は生きるはずなんですけど、ホープフルS(11着)ではスタート後に不利を受けたこともあって、後方からの競馬に。前走の弥生賞(8着)も大外枠発走もあってか、前に行けず、もうひとつ積極性に欠けていました。
そこから馬の状態がよくなって、しっかりとグラニットのあと、トップナイフらと同じ位置で運べるような形になれば、侮れないと思います。この馬も時計がかかったほうがいいので、馬場が重くなればなるほど、一発があっても不思議ではありません」
先週の桜花賞では「1強」のリバティアイランドが圧巻の競馬を披露したが、皐月賞ではそういった存在はいない。だからこそ、ここに挙げた馬たちが下剋上を果たす可能性は十分にある。