日産スカイラインGT-R 亡き父が30年所有 家族の思い出と共に奪われる 直前に怪しい外国人が買取希望
群馬県前橋市で3月末の雨の夜に盗難
2023年3月24日(金)深夜〜3月25日(土)の明け方にかけて、前橋市内の民家に隣接した駐車場で平成4年登録の日産スカイラインGT-Rが盗まれてしまった。
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いつ、クルマがないことに気づいたのか。被害者家族の長女Aさんに話を聞いた。
盗難にあった平成4年登録の日産スカイラインGT-R。
「26日は日曜日で昼過ぎに外出しようとして玄関から外に出たときにGT-Rがなくなっていることに気づきました。最後に見たのは金曜日の夜です。土曜日がずっと雨だったこともあって外出は下のですが傘をさしていたので駐車場のクルマが視界に入らず……」
クルマがない! 最初に気づいたのはAさんのお母様と妹さんだった。その時は普段乗っているフィットに乗って出かけようとしていたのだが、駐車場にあるはずのGT-Rがない……そして、駐車場にはバッテリーだけが残されていた。
「ああ、これは盗まれた! と思ってすぐに警察に連絡しました。警察官が来て事情聴取をしてくれたのですが……。言動が最初から残念でした。被害届を出したときも『無理だと思いますよ〜』『コンテナ載せられたら終わりですから』って」
「クルマを盗難されているのに、ちゃんと調べてももらえないんだ。一所懸命には探してもらえないんだってすごくがっかりしました」
「『黒いGT-Rを見かけても1台1台とめて話を聞くことなんてできませんから』とも言われました」(Aさん)
警察は頼れない。自分たちで探すしかない。と、お母様と姉妹は動き出した。まずはツイッターに盗難の事実を投稿した。凄まじい勢いで拡散されて行き驚いたという。
盗難されたことを知らせる最初のツイートは3月26日夜9時に投稿されてアッという間にインプレッションが100万を超えて、4日経った30日夜には292万。リツイートも3万に達した。
30年以上乗ってきた家族の思い出のクルマ
Aさんの母親のツイートには以下のことが書かれてあった。
「1年半前に他界した夫の愛車が昨晩盗まれました。娘達が生まれる前から乗っていて家族を運んでくれた大切な車です。拡散、よろしくお願いします」
盗難されたことを知らせるツイート。
筆者もそうだが、「1年半前に他界した夫の……」に始まるツイートに強い怒りと悔しさを感じた人は少なくないだろう。
Aさん一家にとって、GT-Rはどんな存在だったのか。ご家族にお話を伺った。
「父は若い頃、品川にある日産ディーラーで整備士をしていました。GT-Rは整備士をやめた後に買ったと思います」
「IT関係の仕事に転職したあとも、ずっと大切にしていて自分で整備していました。私と妹は父が洗車したりワックスを掛けて磨いたりするときに手伝っていましたね」
「生まれたときからGT-Rが家にあって、2ドアのスポーツカーがファミリーカーでした。お友達の家のクルマはドアが4枚あって乗り降りがしやすくていいなあ、思うこともありましたが、父と同じクルマを街中で見ることもあまりありませんし、エンジンの音が低音で響く感じが好きでした。家族で色々なところにGT-Rで出かけました」(長女Aさん)
「夫は自分でチューニングやパーツの交換をしていました。神奈川県内の坂道が多い地域に引っ越してから、クラッチが重くて坂道発進が怖いと言ったら元に戻してくれました」
「亡くなる前はあまり乗っていなかったです。理由はペイントが剥げてボロボロになっていてオールペンしないと恥ずかしくて乗れないな、って。早くきれいにしたいと言っていました」(Aさんのお母様)
所有者である父親が亡くなったあとは母親と姉妹の3人で、家族の思い出がいっぱいつまったGT-Rを維持していこうと、月に1〜2回はエンジンをかけ、少し近所を走ることもあった。
盗難される数日前に不審な外国人が訪問
話を伺っていると、驚くことがわかった。
盗まれる4日前に中東系とみられる外国人がAさん宅を訪れて「GT-Rを買い取りたい」と申し出ていたのである。
盗難されたGT-Rと家族の思い出。
対応したお母様と外国人とのやり取りは以下。
「ピンポンとドアのチャイムが鳴ってインターホンのカメラを見たら、外国人風の男性が立っていました。インターホン越しに片言の日本語で話してきました」
外国人:ここにおいてあるクルマ売りませんか?100万円で買います。
母親:乗っているクルマなので売りませんよ。
外国人:本当に乗ってますか?
母親:乗っていますよ。
外国人:車検切れてるでしょう?
母親:切れていませんよ?
外国人:そうですか。
話を聞くとさらなる衝撃の事実がわかった。
「4〜5年前から、年に1〜2回は外国人が家に来て『GT-Rを売りませんか?』って、その日と同じ片言の日本語でたずねてきていました」
「最初のころは『50万円で買います』と言っていたのが、そのうち値上がりして『100万円で買います』と言われていました」
「でも、主人が大切にしていたクルマですし、家族で大事に乗り続けようと決めていたので売る気はありませんでした」
「いつだったか、チラシや名刺を置いていった外国人もいましたね。『売る気になったら連絡ください』といって。名前がアラビア語(?)のような文字で書かれていて読めなかったんですが。今回は何も置いていきませんでした」(Aさんのお母様)
その数日後、30年もの家族の大切な思い出をのせたGT-Rは、忽然と姿を消してしまった。
なぜバッテリーが外されていたのか?
盗まれる4日前に来た外国人はおそらく、クルマの下見というか、最終確認に来たと思われる。お母様の話では、「白い小さなクルマで1人で来ていました」とのこと。
Aさんによると、最後にGT-Rに乗ったのが2月末のことでほぼ1か月経過している。
ツイッターを介して届いた目撃情報。
バッテリーが外されて駐車場に残されていたということは、下見の時にバッテリーが上がっていることを確認し、盗みに来た時にはGT-Rに合うバッテリーに乗せ換えて移動したのだろう。
25日未明から26日にかけて前橋市はずっと雨が降っていた。それほど強い雨ではなかったようだが、音が聞こえにくくなるし、視界も悪くなるので目撃者からの確認もしづらくなる。
外して放置されていたバッテリーに関しても、確実に犯人が触れているわけだが、指紋は雨で消えてしまうため採取は不可能。実際に警察も「雨だから指紋は取れませんね」と言って取ろうともしなかったそうだ。
雨で指紋がとれないことは重々、犯人側はわかっていたのだろう。だからこそ無防備にまるで挑発するかのようにバッテリーを置いていったと推測される。
クルマを盗むのに何かと好都合な雨の日をわざわざ選んだ可能性もある。
ツイッターに投稿してから、Aさんのところには様々な情報が寄せられている。確実に盗まれたGT-Rとわかる目撃情報もあった。
ツイッターを見たという人からの連絡で群馬県桐生市内にある「桐生中央パーキング」に止まっていたことがわかっている。
すぐに前橋警察署に連絡をしたが、「見に行けたら見に行きます」という返事だったので、姉妹がすぐに見に行ったところ、すでにGT-Rはなかったという。
最後に改めてGT-Rの特徴を記しておきたい。
・初度登録は平成4年(1992年)
・ボディカラーは黒だがボンネット部分は塗装が荒れており、艶が消えたマットな状態になっている。
・ホイールはデズモンドワイズスポーツ製
・ホイールのセンターキャップにはジャガーの図柄あり
・サンバイザーが一部折れている
・シートに擦り切れている部分があり縫製のあとがある。
・ステアリングにテニスのグリップテープが巻いてある
最近では盗まれた旧車が解体されて各パーツとして国内外のオークションやフリマサイトに出品される例が相次いでいる。
盗まれたGT-Rに関わる情報があれば、前橋東警察署027-225-0110または、Aさん家族のツイッター@mamora04x、メールアドレスchoco1532@gmail.comにもご連絡を。