秋吉 健のArcaic Singularity:思い出はプライスレス、でも撮影した写真や動画の保存は有料で。スマホのバックアップ方法や注意点を解説【コラム】
スマホで撮影した写真の管理方法などについて考えてみた! |
先日、ふとしたことから愛用しているiPhone 14の空き容量を調べたところ、写真や画像だけで100GB以上も使っていることを知り、そんなに写真や動画を撮っていたのかと少なからず呆れていました。
もちろん写真や動画だけではなく、スクリーンショットやパソコン(PC)から取り込んだ画像などもあるためすべてではありませんが、筆者が最初に所有したiPhoneシリーズである「iPhone 3G」以来、ほぼ削除することなく14年以上も溜め込み続けた画像および動画の数は、実に3万点を超えていました。
感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホで撮影した写真や動画(主に写真)の管理方法や注意点などを解説します。
筆者のiPhoneに入っていた一番古い写真たち
■写真撮影≒スマホとなった現代
MMD研究所が2023年2月に公開した「2023年スマートフォンでの写真撮影、プリントに関するユーザー調査」(日本フォトイメージング協会との共同調査)によると、「写真撮影できる端末の所有」ではスマホがトップでAndroidスマホとiPhoneが50%前後でほぼ拮抗しており、次いでコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が34.7%、タブレットが28.0%といったかたちで続きます。
複数回答可能な調査項目なので「数値≒所有率」のような部分が強くありますが、未だにコンデジを所有している人が3人に1人以上いることは、むしろ驚きに近いものがあります。
フィルムカメラ所有者が8.4%もいることにも驚きだ
一方、「週に1回以上の写真撮影について」という項目になると若干違った傾向が見えます。
スマホでの写真撮影がトップであることは変わりがないものの、iPhoneユーザーに比べてAndroidスマホユーザーの撮影率が有意に低く、所有率では上位にあったコンデジが最下位まで落ちています。
所有率では10%を切っていたフィルムカメラやインスタントカメラよりもコンデジでの写真撮影が少ないというのは所有率以上に衝撃であるとともに、写真撮影の主役がスマホへと移った事実を改めて実感させてくれます。
筆者も手のひらサイズのコンデジを利用しなくなって10年近くなる(画像はソニー製「サイバーショットTX55 DSC-TX55」)
■データバックアップに無頓着な人々
それでは、写真撮影の主役となったスマホではどの程度写真撮影が利用されているのでしょうか。
スマホでの写真撮影では、スマホ本体に保存されている写真の平均枚数は1411.8枚で、スマホのみで保存・管理している人の割合は、実に88.8%にも上っています。
早い話が「撮影したそのまま」で保存しているだけであり、とくにバックアップや別途外部デバイスへのデータ退避などは行っていないということでもあります。
例えばAndroidスマホであれば、microSDカードに保存するというのが手軽で簡単な管理方法のようにも感じますが、それすらも29.9%とあまり利用されていない様子が見られます。
AndroidスマホでもmicroSDカードが使えない機種が増えてきたりAndroidスマホの利用率を考慮すれば十分高いほうかもしれませんが、一般の人々がデータ管理に対してかなり無頓着である点が伺えるところです。
CD-RやDVD-Rに保存している人が未だに1割以上もいることにも驚きを禁じ得ない
人々が写真の保存方法などに無頓着であるのは、データの破損や消失といった事故にあまりあっていないからなのか?という疑問も浮かぶところですが、写真データの消失(消滅)を経験している人の割合は35.7%にも上っており、3人に1人以上は写真が消えてしまった経験をしています。
また、写真データの消失を経験していない人でも6割以上は「データが消えるのは怖い」と答えており、データの消失は嫌だと感じつつも対策などは特にしていない人が多いという点が浮かび上がります。
スマホの買い替えや買い増しによるデータ移行が原因でデータを消してしまった人も多い
写真に限らず、スマホのデータが消えることに抵抗がない人は少ないだろう
■便利だが落とし穴もあるオンラインストレージサービス
スマホでの写真のバックアップや管理方法は意外と簡単ですが、扱い方を知らないと思わぬ失敗をすることもあります。
例えばiPhoneであれば、iCloud(iCloud 写真)を利用すれば自動的にデータがアップロードされてオンライン上で保存・管理されます。
ところが、これは一般的なコピー保存によるバックアップではなく、飽くまでも「写真データの同期」を目的とした保管であるため、iPhone本体から写真データを削除してしまうと、iCloud上の写真まで消えてしまいます。
「でもiCloudに写真をアップロードしたらiPhoneの容量が増えたよ?」と思う方もいるかも知れません。それはiPhone本体にデータ容量の小さな「写真のサムネイル画像」だけを残し、オリジナルの写真(写真本体)をiCloud上にアップロードしているからです。
そのため、iPhone本体に残されたサムネイル画像まで削除してしまうと、iCloudからも写真が削除されてしまうために注意が必要です。
iCloudは「母艦」であり、iPhoneやMacといった「周辺機器」からその中のデータを利用するという発想だ
また、iPhone本体からオリジナル写真が消えてしまうことから、PCなどで別途写真のバックアップなどを管理しておこうとした場合に非常に厄介なことになります。
サードパーティ製のアプリなどを利用する以外に手軽なバックアップ方法がなくなってしまうため、筆者のようにPCでデータのバックアップと管理を行っている人は、敢えてiCloudとの同期を行わないほうが良い場合もあります。
iCloudは概ね便利だが、汎用性では非常に不便な面があり筆者は利用していない
Androidスマホの場合、microSDカードが利用できる機種であればmicroSDカードへ保存、あるいはコピーデータとしてバックアップして管理するのが最も手軽です。
AndroidスマホでもGoogleフォトなどを利用するという方法がありますが、こちらも注意点があります(GoogleフォトはiOSデバイスでも利用可能)。
Googleフォトには保存画質の設定などがあり、「元の画質」を選択した場合は撮影されたオリジナル画像のまま保存されますが、「保存容量の節約画質」を選択してしまうと、一定のサイズを超える写真や動画は圧縮されて保存されることになります。
幸い、Googleフォトの場合はスマホ本体側で写真を削除してしまってもGoogleフォト内から写真が自動的に削除されることはありませんが、圧縮された写真しか残らなくなる点は覚えておかなければいけません(これを避けたいなら「元の画質」設定にしておくこと)。
また、上記の通りスマホ本体側で写真を削除してもGoogleフォト内の写真は自動削除されませんが、逆にGoogleフォト内の写真を削除してしまうとスマホ本体側からも自動で削除されてしまいます(一応ブラウザ版からの操作でGoogleフォト内の写真のみ削除しスマホ内の写真を残す裏技があるがリスクが高いため推奨しない)。
この非対称な操作のクセを覚えておかないと、思わぬ事故や取り返しのつかないミスをしてしまう可能性があります。
比較的扱いやすい印象のあるGoogleフォトだが、設定を間違えないように気をつけたい
iCloudやGoogleフォトといったオンラインストレージサービスを利用する方法には、さらに月額料金がかかるというデメリットもあります。
もちろん利用できるストレージ容量を考えればコストパフォーマンスは非常に高いため、「月額料金が高すぎるから使うな」ということではありませんが、それでもiCloudの場合は無料の場合は5GBまで、50GBまでは月額130円、200GBまでは月額400円、2TBまでは月額1300円となっています。
Googleフォト(Google Oneとして契約することになる)の場合は、無料で15GBまで、100GBまでは月額250円、200GBまでは月額380円、2TBまでは月額1300円となっています。
筆者のように、14年以上iPhoneを使い続けて画像や動画を3万点以上も保存している場合でもデータ容量は100GB少々であることを考慮すると、一般的な利用状況であれば50〜100GB程度で十分だと考えられます。
有料プランを検討する際は、必要以上の料金プランを契約しないよう、事前に自分の使い方や使用容量を調べておくことも大切です。
キャンペーン価格なども設定されているが、超長期的に利用することになるサービスなのであまり釣られないようにしたい
いずれのサービスでも言えることですが、無料で利用できる分のみではバックアップ目的やオンラインストレージ機能としては十分に有効活用できるほどの容量ではありません。
十分なサービス品質と安全を考慮するなら、月額数百円程度の出費は心得ておいたほうが良いでしょう。
無料でできる範囲に収めるのも1つの方法だが、常に冗長性は確保しておきたい
■バックアップ方法は複数利用がオススメ
長年PCやケータイ、スマホを使い倒してきた筆者は、さまざまな理由で数多くのデータ消失も経験してきました。
絶対的な信頼を置いていたオンラインストレージサービスですら、サービス運営会社のミスによりデータが消失してしまったこともあり、それ以来「1つのバックアップ方法だけを信じるな」というのが信条になっていたりもします。
しかしながら、GoogleやAppleといったプラットフォーマーが提供するサービスであれば、十分な信頼性と冗長性は担保されているとも感じます。
例えばiPhoneユーザーであればiCloudとともにGoogleフォトも活用したり、AndroidスマホユーザーであればGoogleフォトとともにmicroSDカードも併用するなど、複数のバックアップ方法を利用することを強くオススメします。
写真に限らず、スマホデータのバックアップ方法は常に進化しています。自分が利用しているスマホに合ったバックアップ方法を選択し、思い出や貴重なデータを失わないように適切に管理する習慣を付けていきましょう。
大切な思い出がいつまでも残りますように
記事執筆:秋吉 健
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