「平壌冷麺」並みの名物に? 北朝鮮で「世界最大級」犬肉料理レストラン建設中
北朝鮮の首都・平壌で、世界最大級の犬肉料理専門レストランの建設が進んでいる模様だ。ロシアの政府系新聞「ロシースカヤ・ガゼータ」が2023年2月26日にウェブサイトで伝えたところによると、レストランは市内を流れる大同江(テドンガン)のほとりにお目見えする。平壌冷麺で有名なレストラン「玉流館」の近くで、基礎部分の工事が行われているという。
北朝鮮メディアではしばしば犬肉に関する記事が配信され、地方には犬肉専門レストランもある。平壌名物と言えば「平壌冷麺」。新たなレストランが平壌にできることで、北朝鮮側が冷麺並みに犬肉料理のアピールを強める可能性もありそうだ。
「犬肉」の婉曲表現は「甘い肉」(タンコギ)
「ロシースカヤ・ガゼータ」では、工事現場の看板の写真を掲載。看板には、完成予想イラストや、完成後は「甘い肉」(タンコギ)が提供されることなどが記されているという。イラストによると、川に面したオープンテラスを備えた高床式の建物になるようだ。
「甘い肉」は、犬肉の婉曲表現で、記事では
「近年、犬肉の消費量が急速に減少し、その食堂も急速に姿を消している韓国とは異なり、北朝鮮は犬肉を地元の伝統料理の不可欠な部分とみなしている」
などと紹介している。実際、北朝鮮の国営メディアではたびたび犬肉料理に関する記事が登場する。代表的なものが「タンコギ料理コンテスト」だ。それ以外にも22年11月、タンコギ料理が地方無形文化財に登録されたとして、
「地方無形文化財に登録された咸鏡北道の鏡城タンコギ汁は、地元の固有な料理方法と特性をよく生かしながら食生活に効率的に利用したわが人民の英知と才能をありのまま見せている」
などと報じている。食糧難が指摘される中で、効率的に栄養を取れる点も重宝されているようだ。
北朝鮮専門サイト「NKニュース」が3月1日に工事現場の衛星画像を分析した結果として報じたところによると、22年中頃から建設現場が壁で囲まれ、9月〜10月にかけて土台を作るために岸壁を拡張し始めた。ただ、23年2月26日撮影の画像によると、1月以降はほとんど進展していないという。
文在寅氏に冷麺ふるまった「玉流館」に準じた扱いに?
一方、NKニュースによると、完成後は「国家資源の活用」の一環として、金正恩総書記が訪問する可能性もある。正恩氏は15年には、遊覧船「虹号(ムジゲ)」を視察したほか、18年の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)の訪朝時には、「玉流館」で冷麺をふるまっている。これに準じた扱いになる、ということだ。
北朝鮮の指導部としても、犬肉を重要視していることがうかがえる。正確な時期ははっきりしないが、数年前に北部の港湾都市、清津(チョンジン)に「鏡城(キョンソン)タンコギ食堂」がお目見えし、国営メディアに複数回登場している。
22年1月の労働新聞の記事では、正恩氏は「人民の文化生活の条件を向上させなければならない」と語ったといい、正恩氏が「人民の食生活の向上にいつも深い関心を向けている」現れとしてレストランが開設されたことを説明。22年7月には、故・金正日総書記が
「タンコギ料理は私たち人民が好む伝統的な民族料理だ」
などと語っていたとして、
「タンコギ料理を発展させるのに力を入れなければならないと言われた偉大な将軍様の教え」
があってこそのレストランだとしている。
平壌でレストランが完成すれば、同様に重視されることになりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)