「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」の初期症状・予防法はご存知ですか?医師が監修!
成長期に増える骨の量は20歳前後でピークを迎え、年齢を重ねるにつれて質は悪くなり量も減ります。その結果脆くなった骨が折れやすくなり、骨折によって生活の質も落ちてしまうパターンが大半です。
骨粗鬆症は高齢者がなりやすい病気として知られているので、まだ若い年齢だと普段の生活で意識することが難しいかも知れません。しかし将来の健康を守るためにも早めに意識しておくことが大切です。
ここでは骨粗鬆症はどのような病気なのか、症状の特徴や発生の原因、治療時におけるポイントについてお話させて頂きます。
骨粗鬆症(骨粗しょう症)の特徴
骨粗鬆症(骨粗しょう症)はどんな病気ですか?
骨粗鬆症は骨の量と質に問題が生じる病気です。骨粗鬆症になると骨の量が減ってしまい、中身もスカスカになってしまいます。骨の量は成長するに従って増加し続け、ピークを迎えるのは20代前半です。その後、老化現象や食生活などの影響で骨の量が減ったり質も悪くなったりすると、骨粗鬆症を発症しちょっとした刺激ですぐに骨折するようになってしまいます。大変危険な状態なので早急に治療が必要です。
骨粗鬆症(骨粗しょう症)の初期症状とはどんなものですか?
骨粗鬆症になっても、初期の段階では痛みなどの自覚症状はほとんどありません。しかし、軽く転んだだけでもすぐに骨が折れてしまうようになります。ただくしゃみをしただけで骨折した患者さんも少なくありません。骨折のときは折れたところに痛みが生じ、動かせなくなります。ところが痛みをあまり感じないこともあるのが、この病気の厄介なところです。
痛みを感じることができなかったせいで、骨折の発見が遅れることもあります。特に折れやすくなるのは手首の骨・背骨・骨盤・肩・太ももの付け根部分の骨です。背中や腰の骨に異常が生じると、2cm以上身長が低くなることもあります。身長が縮むのは椎体が潰れてしまうせいです。その他、背中が丸くなる症状が出ることもよくあります。
骨粗鬆症(骨粗しょう症)はなぜ起こりますか?
骨は成人になっても新陳代謝を繰り返しています。皮膚や髪は一定のサイクルで古い細胞から新しい細胞へ生まれ変わっていますが、骨も代謝力によって形成と破壊を繰り返すサイクルです。新しく骨を形成する細胞を骨芽細胞、骨吸収を担当する細胞を破骨細胞といいます。溶けた骨は吸収されますが、本来なら常に新しい骨が形成されているので、中身がスカスカになることはありません。ところが、何らかの理由でこの代謝サイクルが正常に回らなくなると、骨の形成スピードよりも早く破壊の方が進んでしまいます。その結果、骨全体の量が少なくなってしまい、ちょっとした衝撃で簡単に折れてしまうほど弱くなってしまうわけです。
骨の代謝バランスがおかしくなってしまう原因は色々ありますが、栄養不足も一因として考えられます。カルシウム・マグネシウム・ビタミンDなど骨を形作るのに欠かせない栄養が不足すると、骨の新陳代謝がうまくいきません。毎日の運動量があまりにも足りない場合も、骨に必要な負荷が不足して栄養をしっかり取り込めなくなります。
その他、エストロゲンなど女性ホルモンの減少やステロイドなど医薬品の副作用も、発症に関与する要因の1つです。
高齢者の方が発症しやすいと聞きました。
年齢が上になるほど発症リスクも上昇します。これまでの研究によって、老化現象として骨の量も減り状態も悪くなるため、高齢になるほど発症しやすくなることが判明しました。50代前半から発症しやすくなり、70代の2人に1人がこの病気を発症しています。ご家族の方も、高齢者の転倒などに注意して見守ってあげることが必要です。
性別により発症しやすさは違いますか?
女性患者さんは男性患者さんの3倍も多いことが分かっていますが、理由の1つに閉経によって女性ホルモンが著しく減ることが関係しています。女性ホルモンのエストロゲンの働きの1つは、骨の形成を担う骨芽細胞を活性化させることです。さらに老化の影響も受け、高齢女性の発症リスクが高くなっていることが考えられます。骨粗鬆症(骨粗しょう症)の診断と治療方法
診断は何科で受けるべきですか?
基本的には整形外科を受診する必要がありますが、原因によっては他の科の医師が薬などを処方することもあります。患者さんの状態によって外科・脳外科・内科・神経内科・産科・婦人科・精神科など他の科とも連携しながら治療を進めることになるでしょう。骨粗鬆症(骨粗しょう症)の診断方法を教えてください。
色々な検査を受けて最終的に診断を下すことになりますが、骨の密度がどれぐらい低下しているのか測定する検査も行います。DXA法・QCT法・QUS法・MD法など骨密度を測定する画像検査には複数の方法がありますが、特に正確性が高い検査の1つが腰椎や大腿骨の付け根部分を測るDXA法です。専用マシンの上にうつ伏せで寝て測定する方法なので、患者さんにとっても負担が少ない方法で調べることができます。画像診断と併せ、血液や尿を調べる検体検査も必要です。骨折の経験など問診の結果も踏まえた上で骨粗鬆症かどうか判断するのが、一般的な流れになります。
治療にはどんな薬を使いますか?
患者さんの病状によって使う薬は異なります。栄養を補給する必要があるので、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKの内服剤を処方することもあります。骨吸収阻害剤も代表的な治療薬の1つです。飲み薬以外にも、注射を打つ治療法が選択されることもあります。いずれにしても、正常に機能しなくなった骨の新陳代謝のバランスを調整し、骨の量を増やすための薬剤が投与されます。
薬以外にどんな治療を行いますか?
薬物治療と並行して食事療法と運動療法も行います。骨粗鬆症の発症率を上げるカルシウム・ビタミンD・ビタミンK不足の問題を解消し、リンや食塩の過剰摂取を控えるよう指導します。運動不足も危険因子なので、患者さんの年齢や病状に合わせて無理のない運動を提案することになるでしょう。骨粗鬆症(骨粗しょう症)治療におけるポイント
骨粗鬆症(骨粗しょう症)は治りますか?
骨粗鬆症は加齢や遺伝の影響も強く受ける病気です。骨の量も年齢を重ねるにつれて減っていくため、進行する傾向があります。そのため、投薬治療や食事療法などで一旦症状が落ち着きを見せても、慎重に経過を見守る必要があるでしょう。特に高齢者は病気の有無に関わらず骨折によって生活の質が著しく低くなる可能性があります。調査によって、死亡率も上昇することも判明しました。そのため、治療後も定期検診を欠かさずに受けて、食事療法や運動療法を継続する必要があります。
予防に効果のあることは何ですか?
骨は成長期に増え、20歳前後でピークを迎えます。最大骨量に到達したあとは安定期を経て減っていくだけなので、成長期の頃からカルシウムなどの栄養をしっかり摂取し続けることが効果的です。遺伝要素や加齢の影響など自分では除去しきれない発症リスクもありますが、栄養や運動対策などはご自身の努力で取り除ける危険因子も少なくありません。喫煙や過度の飲酒など問題のある生活習慣を改め、大量のコーヒーなど刺激物を避けることも予防に効果的です。
高齢になると誰でも骨粗鬆症(骨粗しょう症)になるのは本当ですか?
高齢になっても骨粗鬆症を発症しない方もいらっしゃいます。この病気は女性の高齢者に多い特徴があり、男性は70代80代になっても急激に患者数が増加するわけではありません。また、発症していない高齢女性も一定の人数でいらっしゃいます。最後に、読者へメッセージをお願いします。
一旦骨が脆くなると、薬を飲んでも即座に代謝バランスを回復させられるわけではありません。高齢になって異常が生じてからではなく、年齢に関わらず家族1人1人が早めに骨粗鬆症のリスクを認識しておくことが必要です。もちろん、骨粗鬆症は遺伝要素なども絡んでくるので、予防すれば必ず防げる病気とはいえません。ただ、治療でも食事療法と運動療法は主軸になるぐらい、食生活と運動習慣は大切な要素です。
骨の健康を維持するために必要な栄養を摂取し、運動不足にならないよう若いうちから意識することは生涯に渡り生活の質を落とさないためにも大事なことです。運動もウォーキングなど簡単な方法で構わないので、できることから始めましょう。
編集部まとめ
骨粗鬆症はちょっとしたことでも骨折しやすくなってしまう病気です。骨折すると思うように身体を動かせなくなるので、行動範囲が一気に狭くなります。
お世話をするご家族にも負担がかかってしまうので、骨粗鬆症を予防することは家族全員の協力が必要といえるのではないでしょうか。
幸い、カルシウムが多い牛乳は身近な飲み物で、コンビニやスーパーで手軽に買えます。和食自体、小魚や豆腐など骨の健康を守るための食材を多く使うので、日本は食事の対策を実践しやすい環境です。
運動対策と併せ普段から骨の健康を守るためのヘルシーな食生活を心がけましょう
参考文献
骨粗鬆症(e-ヘルスネット)
骨粗鬆症の予防のための食生活(e-ヘルスネット)