妊娠中に子宮筋腫が見つかったら治療は？出産への影響は？

2022年12月12日 22時10分

子宮の筋肉の壁に腫瘍ができる子宮筋腫。「妊娠中に見つかってしまった」もしくは「これから妊娠予定だけど、筋腫を取るかどうか迷っている」という人もいるでしょう。そこで子宮筋腫とはなんなのか、妊娠中の子宮筋腫は出産にどう影響するのか、治療はできるのかなどの疑問に、日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医である内出一郎先生が答えてくれました。

監修医師：
内出一郎（内出産婦人科院長）

東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院産婦人科にて、森田峰人教授の片腕として多数の腹腔鏡手術執刀に携わる。執刀経験数は2,000症例以上。その後、東邦大学佐倉病院産婦人科講師、東京腎泌尿器センター大和病院産婦人科部長などを歴任し、平成25年に先代院長より医院を継承する。第18回世界不妊学会（カナダ・モントリオール）にてBest Poster Award 受賞。子宮内膜症に対するアレルギー療法という、オリジナリティのある研究および臨床応用で良好な結果を残している。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会評議員・技術認定医など、多数の学会で専門医・認定医の資格をもつ。東邦大学大学院卒・医学博士。

そもそも、子宮筋腫とは？

編集部

子宮筋腫とはどのようなものですか？

内出先生

簡単にいえば、子宮壁にできるこぶ状の腫瘍のこと。腫瘍といっても悪性ではなく良性のもので、珍しい病気ではありません。小さな筋腫も含めれば、30歳以上の女性の20～30％にみられます。

編集部

どのような年代の女性に多く見られるのですか？

内出先生

若い方から閉経後の方までまんべんなく見られますが、もっとも多く発症するのは30代から40代といわれています。

編集部

腫瘍は子宮の、どのあたりにできるのですか？

内出先生

腫瘍ができる場所は、主に3つに分けられます。一つ目が子宮の内側にできるもの。これを粘膜下筋腫といいます。二つ目が、子宮の筋肉の中にできるもので、筋層内筋腫といいます。三つ目が子宮の外側にできるもので、漿膜下筋腫（しょうまくかきんしゅ）といいます。

編集部

なぜ、子宮筋腫ができるのですか？

内出先生

実は、子宮筋腫ができる原因は、まだはっきりと解明されていません。女性ホルモンのエストロゲンの作用によって増大し、女性ホルモンが分泌されなくなる閉経以降は縮小します。

編集部

放置しておくと、子宮筋腫はどんどん大きくなるのですか？

内出先生

閉経するまでは増大し、閉経すると縮小します。多くの場合、筋腫は一つではなく、複数個存在します。

編集部

子宮筋腫があると、どのような症状が見られますか？

内出先生

子宮筋腫の多くは無症状です。過多月経による貧血が最も医療介入を必要とする症状になりますが、月経痛、頻尿、便秘などでも治療対象になることがあります。不妊の一因にもなることがあります。

子宮筋腫が見つかったらどうする？

編集部

何も症状が出ない人もいるのですね。そうなると、どのタイミングで子宮筋腫が発見されることが多いのですか？

内出先生

月経痛がひどくて産婦人科を受診し、子宮筋腫が見つかったという人もいますし、検診を受けて、たまたま発見されたという人もいます。妊娠がわかると同時に子宮筋腫が見つかる人もいます。

編集部

子宮筋腫が見つかった場合は、すぐに治療が必要ですか？

内出先生

通常、子宮筋腫の治療については、筋腫が小さく無症状の場合は、経過観察するのが一般的です。筋腫は良性の病気であり、がんのように命のリスクになることがないからです。

編集部

子宮筋腫の治療が必要なのは、どんな時ですか？

内出先生

まずは、症状がひどいとき。大量出血で気分を悪くしてしまう、過多月経により重症貧血を起こすなど、重い症状があるときには治療を考えます。

編集部

ほかに、治療が必要なケースはありますか？

内出先生

サイズが大きいもの、また、数が増大しているものは、周囲にある膀胱や腸などを圧迫することもありますから、治療の対象となります。また、子宮筋腫として診断されていたものが急激に大きくなるときは、非常に稀ですが、子宮肉腫も疑われます。その場合は、命に関わることもあるので、早めの対応が必要になります。

編集部

子宮筋腫の治療は、どのように行われるのですか？

内出先生

薬物療法と手術が基本。薬物療法では、薬で子宮筋腫を小さくしたり、出血や月経痛などの症状を軽くしたりすることを目指します。しかし、これらはあくまで対症療法。根本的に治療するには、子宮を取る「子宮全摘術」と、筋腫だけを取る「筋腫核出術」を行う必要があります。ただし、筋腫核出術後に筋腫が再発する可能性は、ほぼ100%です。

編集部

では、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合は、どのように対処するのですか？

内出先生

施設によって対応が異なるので一概には言えません。ただし一般的に、治療を行わない施設が多いのではないでしょうか。妊娠中は胎児への影響を考え、服薬することはできませんし、手術を行うにしても、妊娠中の手術は出血コントロールが非常に難しく、リスクがあります。

妊娠中の子宮筋腫。出産への影響は？

編集部

子宮筋腫があるまま妊娠すると、どのようなリスクがあるのですか？

内出先生

お腹の痛みに加え、流産や早産、胎児発育不全の可能性が上昇することが報告されています。また、筋腫ができる場所によっては、赤ちゃんが横向きや逆向きになる胎位異常を起こしたり、分娩時の多量出血の原因になったりします。

編集部

これから妊娠を考えている人の場合は、子宮筋腫が見つかったら取っておいた方が良さそうですね。

内出先生

たとえば2～3cmの小さい筋腫で症状もなく、付いている場所も出産に影響しにくいという場合は、そのまま妊娠して問題ないこともあります。しかし、もっと大きい筋腫や症状が出ている場合などは、妊娠前に取ることを推奨します。ただし子宮筋腫を取ると、その後の出産は帝王切開になることが多くなります。子宮筋腫の手術を受ける場合は、その点も考慮しておいた方が良いでしょう。

編集部

最後にメッセージをお願いします。

内出先生

子宮筋腫への対応は、患者さん一人ひとりによって異なります。たとえば年齢が高めで、すでに出産も経験され、今後妊娠する予定がないという場合は、子宮の全摘をお勧めすることもあります。逆に「妊娠したいけれど、いつになるかわからない」という場合は、様子を見ることをご提案することもあります。そして「今すぐ妊娠したい」という場合は、早めに手術で筋腫を取り除くことをお勧めしています。このように子宮筋腫の管理は人それぞれなので、まずは信頼できる産婦人科医に、ご相談いただけたらと思います。