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全球団にお詫びシャウエッセンを送るべし!以上!

違法建築撤回ブームに乗り遅れた新築物件が、周回遅れでやってまいりました。北海道日本ハムファイターズが来季からのオープンを見据えて建築をつづけているエスコンフィールドHOKKAIDO(※以下、ダサイので漢字で書きます)が、何と公認野球規則の規定を満たさない違反球場だと言うのです。何でも、7日に行なわれた日本野球機構(NPB)と12球団による実行委員会にて、ホームベースからバックネットの距離が公認野球規則に定める60フィート(約18メートル)より短い50フィート(約15メートル)しかなく、違反であるとの指摘が上がったというのです。

↓わかった、一度全部ぶっ壊して建て替えよう!

マインクラフトなら当然全破壊からの再建築をするところ!

日ハムにも破壊の鉄槌を!作り直しだ!


……といった感じで、新国立競技場ザハ案、豊洲市場などで盛り上がった違法建築撤回運動を趣味とする勢力も俄然盛り上がってきたのではないかと思いますが、僕は「現状にて許容」を強く支持いたします。確かに公認野球規則の「2.00競技場」の項には「本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は、60フィート(18.288メートル)以上を必要とする」とあります。エスコンフィールド北海道はホームベースからバックネットまでの距離が約15メートルということですので、この規定は満たしていません。それはその通り。

↓公認野球規則に違反しているようですね!よし、やっぱり全破壊しよう!


その勢いで西武ドームも全部破壊しよう!

壊れたらさすがに新築するだろ!作り直しだ!



建築がほぼ終わった今の時期にこうした議論が起こること自体は、日ハム側の確認、NPB側の確認、すでに球場サイズが公表されてむしろ「アピールポイント」となっていたファウルグラウンドの狭さに対する野球ファン・野球関係者・世間のうかつさを示す出来事ではあります。「もうちょっと上手くやれた」とは思います。その意味で、発端である日ハムにはしっかりと反省していただき、各球団にお詫びシャウエッセン(※2袋ずつ)を配るべきだろうと僕も思います。

ただ、このルールは未来永劫守りつづける金科玉条なのかと言えば、そうは思いません。この手の話でよく「ルールなんだから守れ」「悪法もまた法なり」とソクラテスさまがお出でになるケースがありますが、ルールというのはその条文そのものが大事なのではなく、その条文を生み出した精神が大事なのです。何故そのルールが生まれたのか、逆に言えば、何故そういうルールを設けるのか、その「精神」を常に見つめ直し、その「精神」が変遷するのであれば条文のほうを変えていく必要があるだろうと思います。バカな独裁者がバカな法律を定めたとき、大人しく従う羊がいないのと同様。憲法に違反する法律が正されるのと同様。時代が変われば憲法すら変わるのと同様。条文があるからといって思考停止をするのは間違っています。

プロ野球において、何故ファウルグラウンドを設けるのか。何故ホームベースや塁線からの距離を設けるのか。その精神を問うたときに、60フィート以上を求めるのは今もなお必要かどうか、常に問い直されてよいと僕は思います。たとえば「選手の安全性」という意味では距離そのものよりも形状や障害物の材質で定めるべきです。たまにありますよね、フェンス際がゴチャついて危ないところとか、フェンス際だけ水はけのために少しくぼんでいて危ないところとかが。距離そのものが「選手の安全性を守ろう」という「精神」を守ったり損ねたりするものはではないと僕は思います。

「観衆の安全性」という観点も同様です。距離があれば安全などというワケはなく、バックネット裏のような強い打球、強い暴投が飛んでくる位置は全面をネットで覆うべきであり、距離そのものによって「精神」が守られるわけではありません。そして「競技性」「公平性」という観点でもファウルグラウンドが広いことを求める「精神」があるとは僕は思いません。勝つにせよ、負けるにせよ、ファウルフライなど別に見たくないのです。「私はファウルフライを打たせるのがめちゃ得意でね…」というピッチャーはあんまり楽しくないのです。結果的にそうなっちゃったらしょうがないですが、好んで見たいものではない。三振か、ホームランか、その決着が見たい。

率直に言って、ファウルグラウンドはできるだけ狭いほうがいいと僕は思います。フィールドビューシートのような座席は安全性との兼ね合いを検討しなければなりませんが、フェンスで覆われている限りにおいては、なるべく近くから見たいです。それが球場のサイズ規定におけるもうひとつ大事な「精神」ではないかと思うのです。日ハムの新球場は魅力的ですし、とても臨場感がある試合が見られる球場になるだろうと思います。建てる前なら「もっといい案」「もっといい根回し」を揉んだかもしれませんが、建ててしまったものを直さなければならないほどの「精神」はここには存在しないと僕は思います。そして、むしろコレをキッカケとして条文のほうを問い直してもいいだろうと思います。むしろ「精神」は日ハムのほうを支持している、そう思います。

↓こういう球場が増えたほうが嬉しくないですか!?


フィールドビューシートだって外野のファウルゾーンの広さには規定がないことを逆手に取って「内野ギリギリ」のところまでせり出してる脱法座席なんじゃないですかね!

普通に危ないでしょアレ!今すぐ撤去だ!撤去だ!



僕はこうした「ルールを絶対視する」風潮はいかがかものかと思いますし、「ルール違反しているヤツがいるぞ!叩き放題だ!」と思って憂さ晴らしにくる連中もどうかと思います。そのルールは何を守っているのか、本当に必要なのか、ちゃんと機能しているのか、違反を見つけるのと同じくらいの熱心さで、常に「精神」も見つづけないといけないだろうと思います。このように「王様のルールは絶対!」な姿勢がはびこっているから、明治時代に作ったルールに人間のほうが合わせるおかしな状況も生まれるのだろうと思います。

日ハムは落ち度があった。

でも、いい球場だ。

作っちゃったんだからこれでいいじゃないか。

何なら今後はもう少し内野ファウルゾーンを狭くしてもいいことにしようか。

そのほうが盛り上がるよね。

暴投で二個進塁されるのはオカシイと思ってました。

……そういう議論の末にお詫びシャウエッセンで決着といきたいもの。

それでも杓子定規に「ルールを守れ」というなら、ちゃんと全球場守ってから話を始めようじゃないですか。公認野球規則には「各ベースライン(塁線)およびホームプレート(本塁)を同一水平面上に設け」「内野の中央付近に投手板をホームプレートより10インチ(25.4センチ)高い場所に設け(中略)その傾斜は各競技場とも同一でなければならない」という記載があります。球場は水平面上に作ら「なければならない」、マウンドの傾斜はどの球場も同一で「なければならない」のです。

しかるに、そうではない球場があるという噂、ありますよね。マウンドの傾斜がほかの球場と違うと選手が既定事実のように言う球場が。そして、ホームベース側が高く、緩やかに全体が外野方向に向かって下っており、ゴルフの打ち下ろしみたいにホームランが生まれると噂される球場が。日ハムさんがあまりに追求されるようなら、ほかの球場が水平になっているかどうか、マウンドの傾斜が同一かどうか、キッチリと測らないといけないでしょう。もしも水平でないものや傾斜が違うものが特例的に見逃されているようなことがあれば、そちらも直すか、日ハムも見逃すか、どちらかでないとスッキリしないですよね。「水平」を直すのは建て替えレベルかもしれませんが、ルールなんだから直すしかないですよね!

↓落合博満氏による「神宮球場っていうのは、どっちかっていうとフェンス側に傾斜しているんですよ」との証言!


↓建山義紀氏による「神宮のマウンドは傾斜がなく、平地で投げているように感じます」との証言!


↓山本昌氏による「神宮は投げていてホームベースが高い位置にあるように感じる。傾斜も少なく、マウンドのほうが低いと感じる」との証言!


↓宮本慎也氏による「神宮球場は打ち下ろしなので、(水が外野フェンス沿いに)たまってしまうんでしょうね」との証言!


高梨沙羅さんのスーツを測る係の人みたいな目をしながら、水平器を持って各球場をウロついてもいいのですが、それはあまり建設的ではないですよね(建設の話だけど)。むしろこういった出来事をキッカケに、各球場の個性というものを認識し、それを尊重していくほうが楽しさも生まれるでしょう。照明設備がなくて日没コールドになる球場はそういう個性をウリにし、エスコンフィールド北海道は素晴らしい臨場感があるメジャー風のスタジアムをウリにする、それでいいのです。

いっそ何か名前でもつけたらいいだろうと思います。アメリカのフェンウェイ・パークなる歪んだ球場につけた無茶な壁が「グリーンモンスター」などと名物になったように、日ハムがうっかり狭くしたファウルゾーンにも名前をつけましょう。「キツネだまし」とか「薄切りファウルゾーン」とか「ファウルテラス」とか。そして名物にしましょう。エコの観点でも、経済の観点でも、プロ野球というエンターテインメントの「精神」においても、この球場はこのままいくのが合理的。僕は「現状にて許容」を強く支持いたします。暴投がお客さんに突き刺さらないよう、ネットはしっかりつけておいてくださいね!

↓球場の大きさもマチマチなんだから、ファウルゾーンもマチマチでヨシ!



ルールはルールを守るためにあるのではなく、その「精神」を守るためにある!