日本シリーズ第7戦が神宮球場で行なわれ、オリックスが5対4で勝利。4連勝で通算4勝2敗1分けとし、26年ぶり5度目の日本一に輝いた。オリックスは初回に太田椋の先頭打者本塁打で1点を先制すると、5回には相手守備にミスが重なり4点を加えた。投げては先発の宮城大弥が5回無失点と好投すると、6回から登板した宇田川優希が2イニングをゼロでつなぐ。

 ところが、8回に山粼颯一郎を投入して逃げきりを図ったが、ヤクルトの4番・村上宗隆のタイムリーと、5番のホセ・オスナの3ランで1点差に詰め寄られる。それでも最後はジェイコブ・ワゲスパックが三者凡退に抑え、悲願の日本一を成し遂げた。勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。西武時代の1997、1998、2002年に日本シリーズに出場した大友進氏に聞いた。


26年ぶりの日本一を達成し、中嶋聡監督を胴上げするオリックスナイン

痛恨のミスによる4失点

 オリックスが1点差で逃げきったなか、勝敗を分けたのは5回表の攻防でした。先頭打者の伏見寅威選手がライト前ヒットで出塁した直後、ヤクルトはバント処理を2つ続けてミスします。

 1つ目はサードの村上選手が自分で捕りにいき、サイスニード投手とお見合いのような形になって1、2塁に(結果はショートへの内野安打)。次は村上選手にサードでフォースアウトをとりたいという気持ちがあったためか、3塁前のバントに対して1歩目が遅れてしまいました(結果はピッチャーへの内野安打)。守備陣の意思の疎通がうまくいかず、2つのバント処理で当たり前のプレーができなかったことが失点につながっていきます。

 とくに痛かったのは、無死満塁から2番・宗佑磨選手のファーストゴロでホームゲッツーをとって二死2、3塁としたあと、3番・中川圭太選手への四球です。絶体絶命の大ピンチがあわよくば0点で切り抜けられるという局面で、次に4番・吉田正尚選手が控えていることを考えると、バッテリーとしては厳しいボールで抑えにいかなければいけない状況でした。

 3ボール1ストライクとなり、高めのボール気味のカットボールをストライクにとってもらいます。それだけに絶対に仕留めなければいけない場面でしたが、ここで四球を出したのが痛かった。続く吉田選手に初球、押し出しの死球で1点を与えてしまいます。

 そして直後、5番・杉本裕太郎選手のセンターフライを塩見泰隆選手が落球しました。私も現役時代にセンターを守っていて、普通では起こらないようなミスと言えますが、少し気になったのはレフトのパトリック・キブレハン選手が打球方向に向かって走ってきたことです。外野守備はセンター中心で動くので、センターが捕りにいく場合、レフトはその斜め後ろに入ります。ところがキブレハン選手が打球方向に走ってきたので、塩見選手はその姿が目に入り、落球につながったのかもしれません。

 このプレーにも絡む"勝負の綾"となったのが、2番・レフトにキブレハン選手を起用したことです。今回の日本シリーズを振り返ると、ヤクルトはシリーズ序盤で大きかったのが、1番を打つ塩見選手の活躍です。

 一方、そのあとを打つ2番に誰を置くかというところで固定できずに苦労していました。そこでヤクルトの高津臣吾監督は第7戦で2番・レフトにキブレハン選手をスタメン起用しましたが、6回に丸山和郁選手を代打で送ったように、結果としては思うようにいきませんでした。

自らのスタイルを貫いた杉本裕太郎

 2年続けて同カードの対戦となった日本シリーズですが、両チームの力は本当に互角でした。ヤクルトの4番・村上選手とオリックスの4番・吉田選手に注目が集まったなか、バッテリーが内角を厳しく攻めて警戒し、村上選手は打率.192、吉田選手は打率.174に抑え込まれました。

 そんななか、ポイントになったのが彼らのあとを打つオスナ選手と杉本選手でした。シリーズ序盤はオスナ選手が絶好調で、チームを勢いづけました。

 一方、杉本選手は第4、6戦でオリックスに勝利を呼び込むタイムリーを放ち、今シリーズのMVPに輝きました。

 杉本選手はシリーズ序盤、ヤクルトバッテリーの執拗なインコース攻めに苦しみ、第3戦では打順を7番に下げましたが、それでも相手の厳しい攻めに怯むことなく踏み込んでいった。あれだけインコースを攻められ続けたら、普通は体を開いて打ちにいきたくなるものですが、我慢して自分のバッティングを貫いた杉本選手の勝ちだったということです。

 またオリックスの勝因としては、強力なリリーフ陣の奮闘が光りました。2、4、5戦で中嶋聡監督が先発投手を5回で代えたのは、それだけブルペンへの信頼度が高い証拠です。第5戦では宇田川投手、山粼颯一郎投手をブルペンから外しましたが、先を見据えた戦いがズバリ当たりました。

 先発ピッチャーも含め、投手力の高いオリックスに対し、ヤクルトはよく対応したと思います。戦い方自体は間違っていなかったですが、第6、7戦ではバント処理など、守備で当たり前のプレーができず失点につながりました。取れるアウトをしっかり取っていれば、勝敗も変わってきたはずです。

 オリックスとヤクルトとの間には、それくらいのわずかな差しかありませんでした。両チームの力が拮抗し、最後の最後までどちらが勝つかわかりませんでした。ハイレベルな攻防や駆け引きが続き、本当に面白い7試合でした。