「高感度すぎる」のも課題? 東急の自動運転バスに乗った 高齢化する坂の街を変えられるか
東急バスと東急が横浜市郊外で自動運転モビリティの実証実験を行いました。クルマも歩行者も通る公道で周囲の安全を十二分に確保しながら、多くの機器を搭載した車両は走ります。
今後は信号機の情報もやり取りできるように
東急バスと東急が2022年9月13日(火)から3日間、横浜市郊外に位置する青葉区すすき野エリアで、自動運転モビリティの実証実験を行っています。14日(水)、その様子が報道陣に公開されました。
自動運転モビリティは8ドア8人乗り(運転手・助手を除く)のマイクロバスのような車両。タジマモーターコーポレーション製です。リチウムイオン電池で走行し、自動運転に必要なレーダーやカメラ、ドライブレコーダーを搭載しています。
自動運転モビリティ(2022年9月、大藤碩哉撮影)。
実験コースは一周1.4kmほどの公道で、起伏に富んだ地形であるほか小学校などもある住宅街です。歩道のある片側1車線道路で、途中には信号交差点が4か所あります。
最初の信号交差点に差し掛かると、モビリティは停止しました。今回の実験では、信号機の色の情報はやり取りしていないため、停止線に近づいたら信号機の表示に関わらず停止する設定です。運転席の補助員がボタンを押し、信号が青であることをモビリティに伝えると、徐行しながら左折しました。
ここからは上り坂です。モビリティはややスピード上げるものの、それでも最高速度は19km/h。安全のため、自動運転モードではこれ以上のスピードを出せないよう設定されています。車体の背後には「自動運転の実証実験中」である旨が掲出されているため、追いついた後続車が追い越していきます。
ほどなくして2か所目の信号交差点にたどり着きました。赤信号で停車していると、周囲のクルマのドライバーや歩行者が、物珍しそうに眺めていました。青信号に変わりボタンを押すと、徐行で左折します。
GPSは使っていない
左手に小学校が見えます。すると不意に、モビリティがグッとスピードを落としました。歩道の歩行者を察知し減速したのです。横断歩道はありませんが、自車に接近したことを察知したようでした。東急の担当者によると「舞ってきた落ち葉さえ察知する感度」だそう。「安全に越したことはありませんが、安定走行性や乗り心地なども考慮すると、どこまで感度を高めるかについては検証の余地がありそうです」と話しました。
3か所目の信号交差点を左折すると、長い直線区間に入ります。途中にバス停があり、モビリティはしっかりとバスベイへ入って停車しました。発進の際も周囲の状況、特に後続車の有無をしっかり確認したのち、本線へと戻りました。
4か所目の信号交差点を左折し、出発地点まで戻ってきたところで実験は終了。ちなみに途中、バス停での停車も含め6回ウィンカーを出す場面がありましたが、それも自動で行われました。
モビリティは、事前にインプットされたルートに沿って走行しましたが、走行中も0.1秒に1回、進行方向や速度から自車の走行ルートの位置合わせを行っています。これは搭載するレーダーで周囲の建物や障害物を認識し、生成された高精度三次元地図データを元に自己位置推定を行うというもの。GPSは利用していないそうです。
自動運転モビリティを通じて、東急バスと東急は「新たな課題を抱える地域を自動運転で解決したい」といいます。すすき野エリアが抱える2つの課題です。
先述の通り付近は坂道が多く、また住人が高齢化しています。自宅から300m離れたコンビニまで行くといった「ちょっとの移動」であれハードルが高くなる中において、その手助けをしたいといいます。「移動というものに関して、これまで以上のきめ細やかなサービスが求められていると感じる」と話します。