安倍氏国葬で大砲は何発? 陸自の「弔砲」実施部隊に色々聞いた エリザベス女王とは格が違う
君主や首相ら要人が逝去した際に大砲が撃たれることがあります。エリザベス女王が崩御された際もイギリスなどで射撃が行われましたが、これについて明確な規定があるのでしょうか。安倍晋三氏の国葬で実施予定の陸自部隊に聞きました。
弔意を表すためのものだから「弔砲」
2022年9月8日、イギリスのエリザベス2世女王陛下が崩御されました。約70年もの長きに渡り、まさに生涯をイギリスのために尽くした女王陛下ですが、こうした偉人が亡くなられた際、テレビなどで大砲を撃つシーンが流れることも。あれにはどういう理由があるのでしょうか。
葬儀などで大砲を撃つ行為を「弔砲(ちょうほう)」と言います。「敬意」の意味を持つ「礼砲」や「祝意」を示す「祝砲」などと異なり、「弔砲」は「弔意」を表すために行われます。
練馬駐屯地の記念行事で105mm砲の空包射撃を行う陸自隊員。取り扱うのは第1師団第1特科隊だが、普段は関東補給処で保管されており、必要に応じて搬出するそう(武若雅哉撮影)。
この弔砲に関して、陸上自衛隊の礼砲部隊を指揮する上級部隊の第1師団広報室(練馬駐屯地)に聞いてみました。すると、「礼砲」だけでなく「弔砲」や、棺を警護し敬意を表す「儀仗(ぎじょう)」、棺を送迎し敬意を表する「堵列(とれつ)」といった行動は、時の政府が定める方法に従って行動しているとのこと。そのため、第1師団や直接砲を取り扱う第1特科隊に限らず、防衛省・自衛隊としても独自に何かを決めているというワケではないということでした。
ちなみに、弔砲を行う場合には礼砲の実施要領を準用するそうで、たとえば最も多い21発となるのは「国旗や元首」、最も少ないのは11発の「陸海空軍の准将」と規定されています。これは国際的な慣行などに準拠して日本政府が回数を定めています。
なお、2019年10月22日に行われた、第126代徳仁天皇陛下の即位礼正殿の儀においては、故安倍晋三内閣総理大臣(当時)の万歳三唱に合わせて21発の祝砲が撃たれましたが、これも防衛省・自衛隊が定めた回数ではなく、日本政府が定めている既定の回数が防衛大臣に伝えられ、それを受けた陸上幕僚長が部隊に祝砲として実施させたとのことでした。
迷彩服は着用せず 服装にも規定あり
隊員の服装に関しても政府が定めた服装を着用すると規定されていますが、通常は自衛官服装規則第5条に記載されている「甲武装」という服装が基準になります。この「甲武装」とは、儀式などに対応するための服装で、制服にヘルメットや白手袋などを着用するものであり、一般的には駐屯地記念行事などで見かけることがあります。
一方で、1995(平成7)年に逝去した福田赳夫氏の内閣・自民党合同葬の際には、1佐以上の指揮官は第1種礼装(乙)という服装で葬儀に参加したそうです。
甲武装の一例。写真のような耐弾性のないプラスチック製ヘルメットを被る場合もあれば、戦闘用の88式鉄帽を用いる場合もある(武若雅哉撮影)。
なお、2022年9月27日に行われる予定の故安倍晋三氏の国葬でも、防衛省・自衛隊は「儀仗」「堵列」「弔砲」を行う予定ですが、実施要領などの詳細は政府の発表次第という回答でした。
ちなみに、その安倍氏国葬で自衛隊が実施する「儀仗」や「堵列」などの儀礼について、9月13日に日本政府は実施について閣議決定しています。そのなかで「弔砲」は19発を撃つとのこと。これは、自衛隊の栄誉礼や礼砲について定めた実施要綱において、首相経験者への弔砲は19発と定められていることによるそうです。