70か国語を瞬時に文字起こし! 「字幕透明ディスプレイ」相鉄の駅窓口で実証 “透明”がミソ
相模鉄道がさがみ野駅で「字幕透明ディスプレイ」の実証実験を行っています。発話内容を瞬時に文字起こしするほか、翻訳機能も搭載。外国人の案内に使用する従来ツールの課題を解決したのが、“透明”であることでした。
マスク越しの会話、「聞き取りにくい」あるある
相模鉄道(相鉄)がさがみ野駅(神奈川県海老名市)の駅窓口で、「字幕透明ディスプレイ」を用いた実証実験を行っています。ディスプレイは利用客と駅係員とのコミュニケーションツールで、お互いの発話内容が字幕に表示されるというもの。それなら、既存の文字起こしアプリや翻訳アプリで良さそうですが、「字幕透明ディスプレイ」を導入した意図は何でしょうか。
ピクシーダストテクノロジーズが、筑波大学の字幕表示に関する研究成果を応用して開発した「字幕透明ディスプレイ」(画像:相模鉄道)。
カギは「透明であること」にあります。そもそも駅窓口という場所柄、例えば駅係員が乗り場を案内するなどの場面において、身振り手振りは多用されます。文字起こしに加え、透明なディスプレイ越しに表情を含めてお互いを認識しやすくなることで、より円滑なコミュニケーションが図れます。
特にコロナ禍、マスクをして会話することが日常になりつつある中、お互いの声が聞き取りにくかったり、口の動きが見えなかったりしてスムーズな会話ができないことがあります。音に加え目の前に文字で表示されることで、発話内容を二次的に確認できます。相鉄およびディスプレイの開発を行うピクシーダストテクノロジーズの担当者は「特に高齢者や聴覚に障害を持つ人にはありがたい機能」と話します。
英語教育は難しいが…
ディスプレイは翻訳機能も持ちます。英語や中国語のほか70か国の言語に対応。コロナ禍で訪日外国人が減少しているとはいえ、駅窓口を訪れる日本語話者以外の人とも円滑に会話ができます。実証実験で行われた、英語を話す外国人と駅係員との会話の一例を紹介します。
外国人(発話)「How much is the train fare to Shinjuku?」
ディスプレイ表示(駅係員側)「新宿駅までいくらかかりますか?」
駅係員(発話)「ICカード利用で853円です。」
ディスプレイ表示(外国人側)「The IC fare is 853 yen.」
さがみ野駅の窓口(2022年9月2日、大藤碩哉撮影)。
このほか、新宿駅までの行き方やタクシー乗り場の場所など、駅窓口で想定される様々な会話を試しましたが、いずれでも瞬時に翻訳・表示され、スムーズなコミュニケーションが取れていました。
「字幕透明ディスプレイ」は現在開発中。製品化は翌2023年度が予定されています。相鉄は2022年7月末から9月11日(日)まで実証実験を行い、得られた課題などを克服したいとしています。
なお駅係員の英語教育について、相鉄は従来から研修を行ったり通訳ツール「ポケトーク」を導入したりしてきたものの実際の会話におけるハードルは高かったといいます。今後は「字幕透明ディスプレイ」を活用し、全ての人が快適に利用できる鉄道を目指していくと話しました。